天からの繭
「ふふぁ〜、何だか眠れないぜ...寒すぎるのも考えもんだな」
森の中の小さな家に棲む少女は眠れないでいた。
真夜中でも月に照らされて光を散光させる金の髪と青い瞳を持った、
誰にでも愛される人形の様な顔立ち、体躯。
まるで"現実ではない様"な...
その少女は寒さから、机から香炉の様な形の物を手に取ると慣れた手付きで火をつけ...
ようとした瞬間。
ズズーン.....バキバキバキッ...
ある音が耳に入った。
「んっ....!?な、なんなんだ?今の音は...」
と、帽子を手に取りドアを開ける。
室内に雪の風が吹き込み、室温を急激に低下させた。
「ひぃ〜〜〜〜〜っ!!!!こりゃ無理だぜ...!!」
ドアを反射的に叩き閉める。
確かに音には気が付いたものの、雪の吹雪く真夜中の世界に出ようとは思わない。
「雪が落ちただけ....?うーん...はぁ、明日霊夢を誘ってさがしてみるか」
少女は香炉の火を付け直し、バーナーの様な炎で暖を取り始めた。
雪が窓に殺到し、静けさの欠片は微塵も無い。
....................................うるさい。
自分の名を呼ぶ声がする。私はまだ眠りたいのだ。
しかし、もうとっくにこのやり取りは慣れている。
何せ一日中寝ることだって厭わない自分の周りは活発な者ばかりだからだ。
今自分の名前を呼んでいるのもその一人だ。
こういう時は、粘らずにさっさと起きてしまった方がいい。
と、自分に言い聞かせながら脳に酸素を叩き込む。
「おーぃ、霊夢!!!いい加減起きようぜ!!」
手早く布団から身を起こし、障子を開ける。
雲一つない空の光を反射する雪の上に、自分の名前を呼ぶ人物が立っていた。
霊夢「なによ魔理沙...こんな朝っぱらからなんて珍しいわね...」
魔理沙「もう9時は回るぜ...それはそうと、昨日にちょいと物音がしてな...
どうせ暇なんだろうし、霊夢も行ってみないか?」
霊夢「"ちょいと物音"って...なんか漠然とし過ぎてるわね...」
霊夢は内心、頑張って起きたことを後悔していた。
後ろ頭を掻きながらため息に近い深呼吸をする。
「そこは私が説明いたしましょう!」
魔理沙・霊夢「うわっ、出た」
突然介入する人物が一人。
神出鬼没というか、常に何処かに潜んでいる鴉天狗、射命丸 文。
もう何度も見たやり取りだが、これだけは慣れない。
文「お二人ともそんな言い方はないですヨー」
魔理沙「いつからいたんだぜ...」
文「さっきまでは屋根の上にいたんですよ!そしたらその話題が出て来たので、
第一発見者である私が説明に」
魔理沙「ん?文は見たのか?」
文「ええ!私は記者ですから!!」
霊夢「じゃあ新聞はいいから、手短に説明して頂戴」
文「あう...も〜、霊夢さんってば購読拒否ですかぁ...。ま、今回は特別にお教えしましょう...」
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〈9時間前〉
日本時間午後11時43分:樺太南部上空
アダム『AWACS、こちらシャドウ3-5。目的地へと到達した。詳細な指示を乞う。』
指令《『了解した。シャドウ3-5、所定の偵察飛行を開始しろ。』》
アダム『シャドウ3-5、了解。偵察飛行に移る』
観測手《『低解像度カメラ起動、撮影開始。』》
アダム『増槽を投棄する。』
観測手《『...それ落としてアメリカ君の!なんてバレねぇよなぁ?キューバみてぇによ』》
文「はぁ~最近はネタが無いし、暇だぁ...」
【文々。新聞】
この表札が掲げられている小さな家では、営業不振に陥ったこの記者が一人いた。
いや、「陥っている」という表現が適切かもしれない。
そのような自虐をぼんやり考えながら酒を呑みつつカメラの
レンズを覗いて遊んでいると、一人の少女が駆け込んできた。
?「文さん!文さんちょっと来てください!!」
少女の名は犬走椛。この記者の助手らしい。
文「あ~椛ですか、一体何の騒ぎですか」
言い終わる間もなく椛は、射命丸の腕を引っ掴んで外へ連れ出した。
文「あややや、危ないですよ椛、お酒が溢れ...」
椛「いいからあれ!あれを見てください!」
椛が空に指を差すも、自分には見えない。
どこ?と聞いてみると肩を引き寄せられ、あれですと分かるように示す。
文「んーーーーー... ...!」
見えた。月に照らされ遥か上空に確かに見えたが、
「あれ」を指す言葉が浮かばない。
文「椛...なんですか?あれは」
椛「何とは分かりませんが...見たことはないですね」
見たことはない。その言葉から、射命丸は大きな新聞のネタになるという確証を得た。
射命丸は手早くカメラのフィルムを確認する。
文「椛、ここで待っていてください!」
椛「えっえ、でも相手は何をするか分からないんですよ!?」
文「大丈夫ですだって特ダネなんですから!」
急いで出た言葉は根拠のない自信と理由。
それだけ言い終わると、物凄い加速で「あれ」に向かう。
この寒空の雪さえも気にせず。
観測手《『ん...!?レーダーに機影を捕捉したぞ』》
アダム『あー、IFFに反応無し。民間機でもないな。距離、速度と迎え角を求む。』
観測手《『 距離1.8マイル、速度約530ノット、迎え角35度だ!
一直線にこっちに来てる!!』》
指令《『了解した。アルファに登録せよ。交戦を許可する。』》
アダム『目標アルファ、迎え角35度にてなお接近中。旋回し、迎え角±3度に修正し接敵する。』
指令《『了解。脱出角に注意せよ。』》
観測手《『コリアンのお出ましか...』》
レーダーの中心に反応が近付いてゆき、相手の応射が来る。
アダム『目標アルファ、...通過!通過!脱出角適正!』
観測手《『ハ?どっか居たか?』》
と、思っていたのだが、敵影が見えない。レーダーの中心はとうに過ぎた。
あり得ない状況に、アダムは思考を回転させる。
観測手《『目標アルファ、未確認!』》
アダム『おいおい、どうなってる?右に旋回!』
観測手《『UAVか?AWACS、こちらシャドウ3-5、
目標アルファレーダー上に存在するが実体未確認!』》
アダム『音速に近いUAVなんて聞いたことねぇぞ!よく頭使え!
敵機、現在レーダー上にて後方接近!回避行動中!!』
文「あややや、ばれちゃいましたか?目には入ってないと思ったんですが、、、」
と、文は少し不満げに独り言を漏らしながら大きな鳥の後を追い写真を撮り続けていた。
撮影対象はめまぐるしく旋回を繰り返し、自分を振り切ろうとしている。
アダム《『画像誘導の可能性もある。一応フレアを使ってみてくれ』》
観測手『了解した、IRフレア射出!』
ピコッ、という電子音と共に放たれたフレアの激しい閃光が降り舞う雪に反射し、
周りを明るく照らす。
文「光弾...!?眩し...!!」
鳥目の彼女には明暗の差が激しすぎた。
眩いばかりの光を浴び、目がくらんで何も見えなくなる。
咄嗟に減速し、目を押さえて空中に静止する。
アダム《『振り切ったか?ヘンな条件で反応してるな』》
観測手『ああ異常だぜ!AWACS!こちらからの画像で照合を求む!
飛翔体は空中で静止している!』
AWACS《『シャドウ3-5、よく聞こえな...ぞ、もう一度繰り....せ』》
観測手《『おい...こりゃまさかUFOか?北の新兵器でも有るまいし、何だか妙な感じだぜ。』》
AWACS《『電波環境が良好では...ため、地形画像を撮え...帰投せよ』》
観測手《『クソ、雪の影響か?よく聴こえねぇぞ!』》
アダム『よし、IRカメラを黒強調に切り換えろ。空にいる航空機を撮影するんだ』
観測手《『IRカメラ、白強調から黒強調に変更、異常なーし!』》
アダム『左に旋回、左に旋回...』
文「うぐぅぁ.............!」
文は視力が戻ってきたものの、脳のほうが混乱しているらしく、
化け物のような呻き声を発していた。
そして、あの怪鳥の異常なまでの轟音が近付いてくる。
観測手《『目標捕捉、撮影開始!』》
アダム《『見えるか?どんな飛行機だ?』》
観測手《『ああー...なんだこりゃ...鳥...まさか人かぁ!?』》
文「あやや...怒らせちゃいましたか...でも私は喰えませんよ...!」
と、彼女は微かに見えた大きな鳥の鼻先めがけて光の弾を放った。
弾道は少し逸れ、頭の横を通り過ぎる。
アダム『うお!!ロケット、ロケット!右にブレイク!!』
観測手《『うおああクソ!なんだってんだよ!!』》
反応を遅らせながらも、すぐさま機首を右側へと上げ、旋回する。
アダム『HUDバイザー起動!パッシブ誘導に移れ!』
観測手《『パッシブレーダー起動!FCS、正常に動作!!』》
アダムらが乗った戦闘機は近接交戦態勢に入った。
そして、視力を戻しきった彼女もまた、完全に息の根を止めようとしていた。
新聞の記事にするでもなく、酒の肴にする為でもなく。
ただ殺されまいと、生存本能が働いたのだ。
約700ヤードの距離の中、鳥には自分の姿が見えている。
彼女はそう思わざるを得なかった。この真夜中でも、明らかに音が自分目掛けて近付いているからだ。
勝負は一回限り。何を仕掛けて来るか分からない相手を一撃で仕留めなければならない。
でなければ、死あるのみ。
観測手《『X-2度...低く、低く...いいぞ、通過まで6秒!』》
アダム『20mm発射!!』
ブゥーーーンという低い音と共にキャノピーグラスにM61機関砲のマズルフラッシュが反射し、
20mmの焼夷榴弾が目標に吸い込まれるように向かって行く。
文「...来た......!!!」
彼女には思いもよらない事だった。
大きな鳥...もとい低級妖怪には弾幕は射てないものだと思っていた。
ましてやそれが、霊夢などといった腕の立つ者より圧倒的に弾速が速く、
そしてとてつもない命中率、弾数。
美しさの欠片もない、ただ殺す為だけの弾幕。
文「うあぁ.......!!」
咄嗟に身を翻し、回避する。
当たったもの全てを引き裂かんとばかりの衝撃音に、血の気が引いて行く。
観測手《『避けやがった!?レーダーロック!』》
アダム『ダメだ、距離が足りん!フレアを出せ、通過するぞ!』
またもやあの閃光が放たれ、視界が白黒し、世界がぐるぐる回る。
そしてあの音が目の前までやって来る。
死にたくない。
死にたくない。
文「うああぁぁぁあぁぁああ!!!!!!」
無意識に叫びながら、身体を捻って上か下か分からない方向に向かって弾幕を張る。
鳥の左の翼が千切れ飛び、回転した。
アダム『うごっ!?』
アダムは思考が追い付かず、1秒ほど遅れてエマージェンシーレバーを力強く引いて脱出した。
回転していた戦闘機から放り出され、地面の方向がわからなくなる。
一方、彼女は通過時のジェット音で聴覚まで麻痺し、外部からの情報を得られなくなっていた。
今分かるのは、落ちている感覚と寒さだけだ。
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文「いやぁ、あのときは本当に鷄つくねにされるかと思いましたよ」
霊夢「......ふぅ~ん...それで、後がどうなったかは判らないのね?」
文「ええ、目が見えた時には居なくなってたんですよねぇ...
あとで椛が迎えに来て、どこかに落ちたらしいんですが」
魔理沙「なんだかすごいスケールの話だぜ...そんな妖怪なんて居たかな?」
文「あ、あれ?魔理沙さん、もしかしてこれとは違いました?」
魔理沙「そん...いや、聞かれても分からないぜ...
あーじゃあ霊夢、今回は文にも来て貰おうぜ?」
霊夢「私はいいからもう二人で........」
ここで霊夢はどうやり取りしようと結局は着いていかなければならないことに気が付いたらしく、
二人の顔の様子を交互に見る。
霊夢「はぁ、分かった、行くわ」
...
魔法の森の外れ
魔理沙「あっれぇ~?確かこの辺のはずなんだぜ~?」
文「や、やっぱ私のとは別なんですね...!!!」
魔理沙「ん?そうなのか?」
射命丸は自分の死闘を自慢気に話した上、それが
関係の無い出来事だったということに羞恥さえ感じていた。
が。
霊夢「...もしかすると、別って訳じゃないかもしれないわね」
文「うぅ... えっ!!?そ、そうですよね霊夢さん!!」
霊夢は地面に横たわる白い円筒形の物をまじまじと眺めながらそう告げた。
魔理沙「おっ?霊夢、もしかしてそれなのか?」
森の中では不自然過ぎる、1間(180cm)はゆうに越えるような白く長い繭のような物。
材質がどう見ても自然には出来そうにない。
霊夢「なぁによこれ...」
文「確かに落ちてきた感じですけど...これじゃ無いですね、全然」
魔理沙「...じゃ、にとりの所とかに持っていった方が良さそうだぜ?」
魔理沙以外の二人が沈黙する。
霊夢「魔理沙...これを持って運ぶの?...山まで?」
魔理沙「ああ、当たり前だぜ?」
文「は、はぁ... 山までは1里(4km)はありますよ?」
魔理沙「ここでうんうん唸ってるよりはよっぽど良いと思うぜ」
文「あっはは、えー、私ちょっと用事を思い出したのでお先に失礼しますね!」
魔理沙「おいおい文、今さら抜けるなんてそりゃないぜ」
文「ええっ」
霊夢「.....そうね、、、考えるより行動したほうが良いわね」
文「えええっ!!!?」
驚嘆の声を上げる中、霊夢と魔理沙は大きなそれを持ち上げようと取りかかり始めた。
霊夢「魔理沙、そっち持って」
魔理沙「ふぎっ!...お?意外と軽いぜ」
霊夢「まあ、確かに思ったよりは軽いけど、、、」
魔理沙「いや、持ち運ぶのはそりゃきついけど...ってか文!ちょっとは手伝ってくれなきゃ困るぜ!?」
文「...はぁ、わかりました。持ちますよ。ええ。」
射命丸が間に入るようにして抱え、少女達は"フワッと宙に浮かんで"運んで行く。
......................................
魔理沙「うへーっ、ようやくあと少しだぜ」
文「も、も"~~限界ですよォ!!」
霊夢「もうすぐ着くわよ、辛抱して!」
文「こんな距離をここまでノロノロと飛ぶのは生まれて初めてですよ!
あ"ーーーー、むず痒い!」
霊夢「これだからトリ科は...ってそれよりさっきの話!あの後本当に何も無かったの!?」
文「鳥目に夜中の景色を何度も聞かないで下さい!嫌味ですかぁ?」
魔理沙「文、遅くてイライラするのも分かるけど少し落ち着こうぜ?な?」
霊夢「もういいわ魔理沙、着いたわよ」
すこぶる険悪な空気の中、
荷物を抱えた一行は雪崩れ込むように山中の小さな工場へ降り立った。
【河城工務店】
とだけ書かれた看板の先の敷地には、
昔懐かしい焼玉エンジンや物々しい大型重機などが混在しており、
それはまさに異次元の工房といった風情であった。
魔理沙「じゃ...よ、呼んでくるぜ...」
魔理沙は息の荒いまま、事務所らしき小屋まで店主を呼びにいった。
が、玄関に辿り着くよりも早く、隣の倉庫からその人物は出てきた。
「あれ?皆どうしたのさ、そんなに息を荒げて」
魔理沙「あぁ...にとり...ちょっと用事があってだな...」
にとり「へぇ~...」
と、にとりは目の端に見えた白い繭に気付き、手元にあった工具箱を持って向かう。
にとり「あ、もしかして、これの事だねぇ~?どれどれ」
と、手早く工具箱を開け、よく分からない工具で調べ始める。
霊夢「...やっぱりあんたならわかるのかしら?」
にとり「さぁねぇ。ってかこんなの、何処から持ってきた?」
文「森の外れに置いてましたよね?」
にとり「ほうほう」
魔理沙「もっと言うと、空から落ちてきたみたいだぜ」
にとり「へぇ~ぇ...」
作業に集中しているのか、返答が曖昧になる。
にとり「うんうんうん...よし、よしと」
工具を畳んで箱に放り込み、すっくと立ち上がる。
そして再び眺め、向き直る。
にとり「スポット溶接痕の間隔、部品の噛み合わせ...」
霊夢「...。」
にとり「よく出来ましたで賞、ってとこかな。ウチらからみれば。」
ウチら、とは広義での河童達のことであろう。
魔理沙「じゃあ、大したことは無いのか?」
にとり「作りはねぇ。ただ、素材に問題がある感じ。」
ゴンゴン、と、にとりは手の甲で筒を軽く叩く。
にとり「これ、私らの間では炭素繊維っていう素材なんだけど、
ここらでも作るのが未だに面倒で量が作れない訳。
品質や各部強度も調整が極めて難しい。
でも、これはどこも全く同じ均一な強度に整えられてる。
大規模な工場じゃないと絶対作れないような代物だよ。」
文「じゃあ、これの中身はなんです?」
にとり「あーうん、今から調べるとこ。切ってもいいよね?これ」
そう言いにとりは工具箱からガスマスクと、刀の様な形の
溶融カッターを取り出し、解体を始めた。
村田英雄の「王将」を小声で唄いながら。
にとり「生まァ~れ浪花ぁの八百ぅ八橋~♪
月ぃも知ってるゥ、俺らぁの意気地ぃ~っとぉ...」
ちょうど歌い終わったところで筒を切り終え、
断面が真っ赤になり二つに別れた殻の転がった衝撃で火花を散らす。
中身は全く何も無いがらんどうだった。
にとりは眉をひそめ、まじまじと見つめる。
にとりが発するよりも早く、
霊夢「何よ、これはぁ~? にとり、何も無いじゃない」
魔理沙「空?だぜ...?」
にとり「あーこれは、、ちょっと来て、説明する」
文「お、技術講習ですか!これは新聞で号外が組めますかねぇ!」
射命丸は嬉々としてカメラを取り出し、フィルムをカリカリと巻き上げる。
にとりは切り取った殻を跨ぎ工具箱からモンキーレンチを取り出して、
指示棒代わりに説明を始める。
にとり「あ~、どこから説明すればいいのやら...教える相手がトリと人間じゃ、理解できないかねぇ…」
至極小声で嘲けるような言葉を発する。
本人はただ、どう教えれば良いのか純粋に困っているだけの様だが。
魔理沙「え?えっ??」
文「河童は本当に...」
にとり「ほいほーい、じゃあ、身体に例えて説明するぞー。
簡単な所から教えるから、しっかり聞いててねー」
教授色の入った話し方でじゃあまずはこれ、と外側の機械を囲む枠をレンチで叩いて鳴らす。
にとり「これは炭素繊維でできた外枠!皮膚の部分だね」
霊夢「見れば分かるわよ。もしかして馬鹿にしてる?」
霊夢はぴくぴくと顔を痙攣させ、怒りを露にする。相当疲れが出てきた様でもある。
にとり「ひゅい!?いや、そんなつもりは微塵もないよ!!
えっと、じゃあ次はこれ!これは見た感じではしーぴーゆー、
思考の脳に当たる部分!」
と、端にある瓦の積み重なったような小さな機械をレンチで差す。
文「んーーーーちょーっとまってくださいよぉ~?」
と言いながら、胸ポケットの手帳とペンを取り出し、手早くメモを取る。
魔理沙「えぇ~と、私はもうわかんないぜ...」
霊夢「もしかして、これが外から幻想入りした...?」
文「おお!これは外の人間が作り上げたと!?」
にとり「ぶはっはは!ない!人間がここまでの物を作るなんて、絶対有り得んね!!!」
にとりは大笑いしながら腕を横に振り、全否定する。
周りで見物していた他の河童達の笑いも聞こえる。
文「じゃあ外の世界になんかあったんですかねぇ?」
にとり「たぶんねー。んじゃこれ、これは圧力計かな?つまり血圧測定器だね。
その横の機械は...ゴムホース?これは分かんないな」
魔理沙「分かんないのか?」
にとり「いや、そりゃもちろん仕組みはわかるよ?
ただ、何の為に付いてるのかが分からないんだ。」
文「謎が深いですねぇ!にとりさん自身は誰が作ったと思います?」
にとり「宇宙人...月の類いかなぁ?」
霊夢「月ねぇ...ちょっと魔理沙、霖之助さんの所までこれを持って行くことは出来るかしら?」
魔理沙「香霖か...よし、そうだな!使い方も教えて貰えば、何か分かるかもしれないぜ」
にとり「あ、じゃあこの殻の一部は貰っていいかい?」
霊夢「ええ。軽くなって丁度良いわ。...文!逃げないでよ!?」
文「ううぅ...もー勘弁してくださいよぉ...」