第六話
『ではでは初めまして。私は総ての世界を管理・監視する者、埜楼都と皆からは呼ばれています。どうぞ宜しく。』
前回とは全く人格、というか別人のよう言動である。
ま、まさかっ。偉い人には必ずいると言われる影武者と言うやつか!
ふむ、それなら納得の余地があるな。
という感じで司の意味不明な妄想につっこむ人が居らず、司の脳内では段々とボケがエスカレートしているのであった。南無
おっと、流石の司も空気を読んで口を開くようだ。
「こちらこそ宜しく。俺の名前はジェニム・・・。」
――って、おいおい!なに堂々と偽名言ってんだよ。
ツッコミ満載な嘘という名のボケを繰り出した司は、今自分で言った名前に不満を感じたようでブツブツ言いながら思案状態に入っていくのであった。
対して埜楼都はと言うと―――
『で、挨拶もそこそこで悪いんだけど君を異世界に転生させまーす!』ドンドンパフパフ~
と、流れとか完全無視で他人の事情を一顧だにしない超自己中を養殖天然で行使してきた。
「ほう、あなた良い人ですね。」
”異世界転生”と言う単語が発せられた途端に、脳内ワールドから帰還した司ははっきり言って気持ち悪い顔で埜楼都に言った。
そこは文句を言うところであって「良い人」発言をするところではない!
あとまじでその顔をどうにかしろ。締まりがなさすぎる。ゆるゆるではないか!
もうここまで来るとどちらの方が変とか変とか変とかではない。
この事態を収拾できる人がいるとしたならば、その人は冷静と言う要素で形作られてるに違いないと断言できてしまう位にヤバい。
そして埜楼都について来た神々はとても優秀ではあるが、いつも埜楼都の奇行に振り回されてしまっている。
つまりこの場を止められる者はいないのだ。
『ふむふむ、司とは相性が良いようだ。』
「俺もそう思うな。ここまで話が合った奴は久しぶりだ。」
結局誰も止められずズレまくった会話を続けた結果、なにかお互いに感じるところがあったようで力強く握手を交わしている。
ある意味最悪な二人が分かり合ってしまった。もうどこにも平穏はないのかもしれない。
因みに埜楼都について来た神々は二人の周りで輪になって”仕事”中である。
初めの頃はじっと待っていたのだが百年位経つと少しずつ仕事が溜まりだしたので、仕方なく二人の会話が終わるまで周りで輪になり仕事を始めたのだ。
天使達も初めは”蒼庭”創造神代行管理者『埜楼都』と人間が話している事に戸惑っていたが、周りの神々が無視しているので百五十年頃には神々と同じスルースキルで黙々と書類を持って来るようになった。
てな訳で只今、司が死んでから二百五十年位経っています。
これもまた非常識で、普通な魂であったならばこの神々の住処とも言える空間に一秒でも留まる事は出来ないのだ。
そしてそんな空間に二百五十年以上留まり続け、異常が一つもない司は規格外をも裸足で逃げ出してしまう程の怪物なのだ。
司には失礼かもしれないが、神々をも戦慄させる正真正銘の化け物なのである。