第三話
「すいません、答えを頂けると嬉しいのですが。」
ブラック会社に一時期務めていたから敬語全般は朝飯前なのだ。―――――敬語で話さなかったら血祭だったし。
「失礼しました。ところで此方が答える前に一つ、御質問してもいいですか?」
と、私の黒歴史を暴露していたところで将軍の方が答えてくれるようです。・・・遅過ぎですがねぇ。おっと睨まれました。クスクス
にしてもこの方々は営業というかそちら系の方ではありませんね。交渉のノウハウを分かっていらっしゃらない様だ。ここで此方側が断ったらどうするつもりでしょう?
もしかしたら開発系の方ですかね。それなら・・・使えるかも知れません。この容姿に合う武器・防具・アクセサリー類を入手する為に――――――ね。
「ええ勿論。どんな事でもお答えしますよ。――――一つだけ。」
あ~、いいですねぇ!その後悔に染まった顔は、その武人顔にとてもお似合いです。・・・まあでも、これで完璧にこの方々が営業系の方ではないのは分かりましたよ。営業系統の方はおいそれと言質を取らせてくれませんから――――。本当にあの時は疲れました。
おっと、話が逸れてしまいました。・・・はっ、私に無礼を働く事の恐ろしさを知りなさい。―――――コホン
「――――有難う御座います。」
うんうん、その顔だよ!その武人顔で屈辱に満ちた表情、これこそ私の追い求めた芸術だよっ。勿論タイトルは『無礼者の末路』です。・・・別にさっきの態度が気に障ったからじゃないんだからね!ぷんっ
――――やっぱり新ジャンルを開拓するのはやめましょう。何か大事なモノを失いそうです。
私が自分の中で考え事をしている間にあちらの葛藤にも決着も付いたようです。おっ・・・、貴公子が復活したてで将軍にマジ睨みされてる。まあ一人で私の相手をしなければいけなかったですし―――――。
本来なら貴公子の方が交渉する係だったようですし。・・・しかしそろそろ睨むのを止めないと貴公子の顔面が蒼白です。
ふ~。やっと自分の人相が齎す影響に気付いたようですね。
何と言うか見てるこっちの方がハラハラするコンビですね。・・・もしかしてこれも作戦の内なのでしょうか?――――いや、考え過ぎですね。
・・・普通演技で相手を睨んだ人がその相手に謝るなんてありえませんからね。――――もうちょっと隠そうとは思わないのでしょうか?
あっ、その意思はあるようですね。此方を見てハッとする時点で意味がありませんが。
ハッ・・・脱線していたのに気づきませんでした。早くこの煩わしい会談を終わらせたい筈なんですが――――。何て恐ろしい子っ。・・・そうだ!ご質問はと言わなければっ。
「ご質問は?」
唯々単純な一言なのに心、いや力を込め過ぎた所為で貴公子はまたもや心をとばす事になるのだが―――。
まあそれは、これから起こる事に比べれば詮無きことだろう。
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これから始まるは神であり人であり奇妙に歪んだ道化師である、とある一人の主人公の物語である。
この者は悔やむであろう、神の時を。この者は希うであろう、人の時を。そして思うであろう、始まったばかりの道化の時を。
そんな奇妙に歪んだ主人公の物語は、はてさてどこにいくのか・・・。それは神さえも知らない物語―――――
――――その物語を私は語ろう――――