第十二話
「それで結局私に如何しろと?」
先手を打って、というか既に場の空気は掌握しているがにこやかMAXで言った。
おお、将軍の睨みがピークを迎えてきたな。そろそろ爆発するんだろうか・・・・?
べ、別に興味なんかないんだからね!―――俺のHPがそろそろレッドゾーンだぜ。・・・えっ、自業自得と言うか自爆だよねって?まあ、そんな冷たい事言うなよ。
さて、そろそろ貴公子と将軍で遊ぶのも飽きたし本当に本題をさっさと話してくれないかな~。
「コホン。すいません、本題から随分離れてしまいました。」
やっと貴公子が戻ったようだ。て言うか何回目のフリーズだよ(笑)・・・えっ、俺の所為だって?そんな馬鹿な。
―――そう言えば将軍って本当に一言も喋らないつもりか?
俺が将軍の無口について考えているうちに貴公子が本題の話を話し始めた。
「改めて私達は≪tide of the times≫の運営を代表しまして、貴方に依頼をしに来ました。ああ、初めに言っておきますが依頼という形ですが拒否権は無いものと御考え下さい。」
はっ!やっと本性を現し始めたか。いい加減にバレバレなのに気付けよ。
弁解と言う訳ではないが、最初から俺の対応が悪かったのはこの所為だ。当たり前だが、誠実な奴には誠実で返すのが俺のやり方だ。・・・今、嘘だと思っただろ。
まあ今迄に様々な交渉ごとをやらされて来たけど、俺が誠実な対応をした奴は全体の三割にも満たないような。―――もしかして俺は普通で誠実な奴に一生会えないのか!?
「そこまで深刻そうな貴方を見るのは初めてですよ、”皇帝”?」
俺が少しズレた事を悶々と考えていたら、貴公子が勘違いして笑いながら言って来た。
「だから『すめらぎ みかど』だと言っているだろう!―――って?!」
思わず貴公子の顔を凝視してしまった。えっ、何その悪戯が成功した子供のような笑顔は!てか将軍もかよ・・・・。うん、将軍はずっとその笑顔の方が良いよ。
あーぁ勿体無い、顔が戻っちゃった。でも大丈夫、思考操作でバッチリ撮ったから!・・・えっ、何時そんなものを習得したかって?まあそんな事はどうでもいいんだよ。
「お前等・・・・。何故俺の嫌いな呼び方を知っている?て言うかその名で呼ぶな!」
少し将軍の笑顔に暴走してしまったがちゃんと聞くことは聞いたぜ! キラッ
コホン、・・・深呼吸深呼吸。良し、落ち着いた!
「分からなかったのも無理はありません。私達のアバター外装は完全に変わってしまいましたから。」
おいおい貴公子君よ、ほいほい話を進めんなよ。てかしたり顔するのやめろ。完璧なイケメンだけど女性に強引に言い寄る雑魚兼駄目な男に見えるぞ。
「まあ俺のようにあの時のアバターの外装特徴をそのままにしている奴の方があれだしよ。・・・少数派だ。」
ここだけの真面目な話になるんだが・・・・。あのデスゲームは1年で終了した。
それはデスゲームを作り出したハッカーからしたら、有り得ない位の攻略スピードだったらしい。
しかしその事がイコール被害者が少なかったと言う事にはならなかった。
一番多かった被害はハッカーによるデスゲーム化通達の時だった。それで7万人の内約3千人が一瞬で死んでしまった。その殆どがフィールドでモンスターを狩っている人達だった。
他にも質悪い冗談だと引き攣った笑みを浮かべながら、それなら俺が試しに死んでやると言いながら建物の屋上から飛び降りた人達もいた。
結果は言わずもがな、全員死亡であった。
俺達も色々と手配して鎮静化させようとしたが予想以上の混乱で失敗した。止めようとしたら逆上されたりしてな、余りの気迫にこっちからもビビる奴が出て来た位だ。
てなことでギルドの新入り君達は現場からギルドホールへ即座に撤退させた。それに後悔はないが人手が元々足りていないところでの撤退だったから余計に大変になった。
いやあ、集団って改めて怖いと思っちゃったよ。わざわざ止めたげてるのにキレるんだもん。…だもんは止めろって?うん、自分でも思ったわ。
結局俺は他人よりギルドの仲間を取ったって事だ。考えたらすぐに分かる。
人手不足の時にギルドで一番人数が多い層の新人達を撤退させたら、効率以前の問題で出来る事は少なく狭くなっていくのは当たり前だ。
別に非難してくれて良いぜ。その通りだし綺麗事を言うのは仲間に対する裏切りになっちゃうしね。
まあ俺はまだ精神面強いから仲間を守る余裕があったし、それがギルマスの責任ってもんだと思ったから。
逆に仲間に心配&説教されちゃったけど、やっぱり今でも後悔は一片もしてない。あいつに酷い男だって言われるだけはあった訳だ。
「あいつ」の性別は読者のご想像にお任せします。…ん?読者って何のことだ。
8/20に更新させていただきました。長らく休憩を頂いて完璧ではありませんが回復しました。これからもどうぞ宜しくお願いします。
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