第十話
<<俺は全て思い出したよ>>
○○○は静かに言ノ葉を紡いだ。―――今にも泣き出しそうな二人を前にして。
「・・・・おいおい。俺を迎えに来たんだろう?」
言葉の裏に隠された意味は覚悟を問うモノ。
「「・・・・。」」
それを沈黙でしか返す事が出来ない、***と****。
○○○は意思を紡ぐことによる返答を望んだ為に無言を。
***と****はその事実を認めたくはない事を望んだ為に無言を。
その場にいる全ての者が《無言》を望む、即ちその場は沈黙が支配するのであった。
誰も音を発さない。”沈黙の使者”が遣わされたその場は、目を瞑れば誰もが世界には己が一人しかいないと錯覚させる程のものだった。
そしてその世界に音を取り戻すのも又、世界に”沈黙の使者”を遣わした者であった。
「最後までごめんな。・・・・俺は【父】として、お前等に悲しみしか与えてないのかもしれないな。」
ただの人間が神の使いに対して父と名乗り、あまつさえ何かを与えるという不敬極まりない発言をした。しかしその声色は純然たる後悔の念しかなかった。そしてその異常が、この場では正常である事を神に近しき者である二人が反応で示しているのである。
○○○は言ノ葉を紡ぐ事を、***と****は沈黙を続ける事を選択した世界に突如場違いな明るい”声”が響いた。―――三人に別れの時間がきたことを無常に告げる為に。
『おーい、もう時間だぞ。***と****は引き続き、その【世界】の監視の任に就いてくれよ。』
「うわ、マジだ。この感じだったら、もって三分程度だな。」
さっきまでのシリアスな空気を空元気とかではなく本当に消して○○○が呟いた瞬間、***と****の表情が般若の形相になった。
簡潔に理由を言うと、「「切り替え速いねん!」」である。
これには思わずいつもスローペースな○○○も脅威の速さで起き上がって、***と****の側から緊急退避をした。その結果、今まで○○○が寝ていた大理石の床には光・闇属性の《魔弓》が刺さっていた。―――●ひげ危機一髪である。
「「「・・・・。」」」
そんな攻防を視ていた埜楼都は笑いを抑えて三人につっこんだ。
『えっ?何しちゃってんのあんた等(笑)』
つっこまれた三人は埜楼都にツッコミ返した。
「「「(笑)がうぜぇ。殴りたいから顕現しろ!」」」
~○○○死亡まで、あと二分十七秒~