1月8日
◆今日の花……アザレア
◆花言葉………愛されることを知った喜び
「ふざけんなよ」
「死ね」
「や、やめて……」
タバコを腕に押し付けられる瞬間、目が覚めた。
嫌な汗でじっとりと濡れたTシャツをさわり、愛はほっとする。
………夢。
ここ数日、愛は変な夢を見るようになった。
誰かに暴行を受ける夢。
タバコを押し付けられたり、棒で殴られたり、水路に突き落とされたり。
抵抗しようと思っても、なぜかできない。
あまりの怖さに愛は目を覚ますのだ。
「なんなんだろ、毎日毎日……」
布団から起き上がり、汗ばんだ体をシャワーできれいにし、制服に着替える。
準備をし、家を出る。
愛は自転車にまたがり、学校へと向う。
学校へは自転車で20分ほど。
「あ、工事中」
いつも通っている道が工事中の看板でふさがれていた。
仕方なく、遠回りをすることになった愛は、少しだけ自転車をこぐスピードを速めた。
「待てや、こらっ!」
人通りの少ない路地を走っていると、いきなり怒号が聞こえた。
何事かと思い、自転車を止め辺りを見回すと細い路地から人が飛び出してきた。
「うわっ!?」
「ぁ………、ごめんなさい………」
驚いて声をあげた愛だったが、飛び出してきた少年の姿に息をのむ。
少年は、顔が腫れ足を引きずっている。
明らかに、普通ではない光景。
「あ………」
怯えながら、後ろを振り向く少年。
誰かに追われているのだろうと愛は悟った。
だとしたら先ほど聞こえてきた怒号も納得がいく。
「乗って!」
とっさに少年に促す。
少年はどうすればいいのか分からないのか、キョロキョロしている。
「もうっ! 早く!」
苛立った愛の声にビクリと震えたが、少年は愛の自転車の後ろの荷台にまたがった。
捕まってて、と愛が言うよりも早く、愛の制服の裾をしっかり掴む少年。
「行くよ!」
学校とは正反対、今来た道を自分の家に向って疾走する。
なぜこの少年を匿ったのか、わからない。
だけど、あのままあそこにいると大変なことになるような気がした。
「はい、おりて。あたしんち着いたから」
自宅へ戻り、自転車を庭先に止める。
少年をおろし、玄関へと向う。
玄関に入り、来客用のスリッパを出し自分の部屋へ連れて行く。
「ねえ君、名前は? あたしは仲嶋愛」
「…………藍」
「え?」
「僕も、藍」
詳しく聞けば、字は違うようだが同じ名前らしい。
藍によると、家がなく色んな人のところを転々としていたらしいが、あるきっかけで追われる身になったらしい。
「僕、何も悪いことしてないのに。みんな僕のこと殴ったりするから……。だから……」
「ん」
「逃げ出したんだ。あのままあの場所にいたら殺されるような気がして……」
当時の暴行を思い出したのか、ぶるぶると震えだす。
そんな藍の背中を、愛はそっと撫でた。
しばらく無言でそうしていると、藍が口を開いた。
「……僕、もう行きます」
「ここにいれば? どうせあたしの親いないし。あたしは藍のこと殴ったりしないよ」
出会ったばかりの見知らぬ人間に何を言っているのか。
でも、なぜか他人に思えなかった。
ここ数日見ていた夢の中の自分と、藍がダブるから。
「遠慮しなくていいんだよ? あたしが藍を守ってあげる」
「愛さん……」
それが押しの一言になったのか、俯いていた藍はパっと顔を上げ愛を見つめる。
そして
「僕、ここにいていいんですか?」
「うん」
「ぁ、ありがとうございます………」
「もう、男の癖にメソメソしないの! お風呂はいっておいで、服も汚れてるし」
藍が風呂に入っている間、愛は考えた。
一緒に住むと言っても、簡単にはいかないかもしれない。
もしかしたら、藍を追っていた人がここに辿り着くかもしれない。
でも、でも―――――。
「お風呂ありがとうございました」
こんなにもやせ細って、怯えている藍を放っておくことはできない。
毒を食らわば皿まで。
拾ったからには責任を取らないと。
学校はもうすぐ卒業だし、なんとかなるだろう。
ぴっとりと自分に寄り添うこの子猫を守ってあげなくちゃ。
愛に飢えた子猫にあたしが愛をあげる。
終
なんか、微妙ですね。
久々に文章書いたからか、おかしい