1月7日
今日の花……チューリップ(白)
花言葉………失恋、長く待ちました
『生徒と教師ですし、君のことはそういう風に見れません』
「せんせー……」
自分の声で目が覚める。
また、夢。
高3の冬、自由登校の2月に先生に告白をした。
返事はわかりきっていたけど、先生のことが好きで好きで仕方なかった。
案の定、フラれてしまったわけだけど……。
もしかして、と心のどこかで期待していたのも事実。
最後に先生に会ったのは、卒業式の日。
このまま会えなくなるのがイヤで、気まずいながらも挨拶に行った。
先生は思いのほか普通に接してくれて、複雑な気持ちになったのを覚えている。
あれから、2年。
「あ、ミオリからメールだ」
ケータイのお知らせランプが点滅していた。
差出人は、ミオリ。
高校の同級生のなかでいちばん仲のよかった子。
メールを開くと『合コン行こうぜ!』とだけ書いてある短いメール。
「また……?」
高校を卒業してから、定期的に合コンのお誘いメールが来るようになった。
ミオリなりに、心配しているのかもしれない。
なにせ、あれ以来あたしは誰とも付き合っていない。
どんなにいい男の子がいても好きになれないのだった。
気付けば先生と比べてみてる。
我ながら、引きずりすぎだと思う。
ミオリに断りのメールを送ろうとしていると、今度は着信があった。
「もしもし?」
『あ、サナ? メール見た?』
「見たけど、」
『今回も来ないの?』
「うーん、パス」
『まだ、先生のこと好きなの? もう2年だよ?』
ミオリの言うことはもっともだと思う。
でも、好きなものは好き。
「だって……」
『もうっ、1回ぐらい来たら? 今回の合コン相手はなんとうちらの母校の生徒なんだよ!』
「ストップ。……母校って、もしかして高校生?」
さすがに高校生と合コンはマズいような……。
『大丈夫! 酒とか飲むわけじゃないし、場所はファミレスだし。出会い目的じゃなくて、先生の近況とか聞いてみればいいんじゃん?』
「う………」
確かに、それはいい考えかもしれない。
でも、このまま想いが薄れていくのを待つほうが賢明な気もするけど……。
でも、先生のこと聞けるなら………
「わかった、行く。出会い目的じゃなくて、先生目的で」
『よし! じゃ、場所と時間はメールしとくからねー』
「はーい。ばいばい」
電話を切り、急いでクロゼットに向う。
別に先生に会えるわけじゃないのに、おしゃれして行かなくてはいけない気がする。
着ていく服を選んでいると、ミオリから『夜9時に駅の近くのファミレス集合』とメールが来た。
夜9時って、高校生には遅い時間なんじゃないだろうか?
いまどきの高校生はそんなもんなのかな……。
たった2つか3つ下なのに、高校生ってだけで年齢差を感じてしまう。
メールに返信をして、夜まで時間があるから部屋の掃除をすることにした。
**********
「ちわー!」
「初めましてー!」
ミオリとファミレス前で待ち合わせ、相手のいる席に行く。
元気に挨拶をしてくるのは、前髪がナナメの男の子と角刈りの男の子。
席に着き、簡単に自己紹介をする。
「俺、レンって言います。こうみえて卓球部でーす!」
「俺はセイジです。見てのとおり野球部ですっ」
前髪がナナメの男の子が、レンくん。
角刈りの男の子が、セイジくん。
なんだか対照的な二人。
ドリンクバーとピザと注文して、世間話から始まった。
部活のこと、学校のこと、懐かしい先生達のこと。
時折ドリンクを注ぎに行ったり、時間はあっという間に過ぎた。
「そいえばさー、玖珠せんせーってまだいる?」
ミオリのいきなりの質問に、思わずメロンソーダを吹きそうになる。
「ちょっと、ミオリっ!」
「いいじゃん、聞くだけ聞くだけ~」
レン君たちに聞こえないよう、小声でやり取りをする。
「玖珠? あー……、相変わらずっていえばわかる?」
「そっかー、まあ2年しか経ってないモンねぇ」
「やっぱりミオリさんのときもああだったの?」
「そうそう。カタブツって有名だったなぁ」
そう、先生はカタブツで有名だった。
カタブツって言う言葉があっているのかわからないけど、少し難しい印象だった。
なんとなく、マンガとかに出てくる数学の先生みたいな感じ。
でも、気難しそうな中に時々見える優しさにあたしは惚れた。
厳しくもあり、優しくもある。
神経質そうな声で注意されていたのが懐かしい……。
「こんな時間に何をしているんですか」
そう、こんな感じに常に敬語で注意されてた。
あまりの懐かしさに幻聴が聞こえてきたのかな。
「ちょ! サナ!」
ミオリの声で現実に引き戻される。
横にいるミオリを見るとそこには
「聞いているんですか? もう22時過ぎているんですけど。補導されたいんですかね、あなたたちは……」
「…………せんせい?」
先生がいた。
ずっと会いたくて会いたくてたまらなかった先生が。
今、目の前にいる。
「………星川さん?」
終
教師と生徒モノ!
大好きなんです…。
失恋からの……続きます。