1月1日
今日の花……まつ
花言葉……勇敢、不老長寿
1月1日 まつ 勇敢
「お姉さん、ひま?」
「よかったら俺達とメシ行かね?」
街を歩いていると、二人組みの男に声をかけられている少女。
白いワンピースを着た少女は、二人の男に見向きもせず、無表情ですたすたと歩き続ける。
「ちょ、お姉さんってばー」
素通りされた男達は、半笑いで少女の腕を掴む。
掴まれた少女は、一瞬顔をしかめたがすぐに無表情に戻る。
少女が抵抗しないのをいいことに、男達は女の手を引っ張り歩み始めた。
どこへ行くのだろう、少女は不思議に思いつつ掴まれた手ごと男の腕を捻りあげる。
「いっ、いてててて!」
「おいテメー、何すんだよ」
捻りあげられ、涙目になった男の連れが少女に掴みかかる。
その連れをひょいと避け。
避け際に肘でエルボーを繰り出した。
「うっ………!」
「おい、翔太!?」
道端の真ん中で繰り広げられる光景に、平日の昼下がりの商店街は騒然とした。
絡まれた少女を助けようと、一歩足を踏み出していた若者は思わず足を引く。
まさかの快進撃に、立ち止まった主婦からは「おお」という声。
「あ………、やばっ」
ふと周りを見渡せば、ちょっとしたギャラリーまでいる。
「お姉ちゃん強いね!」
「おばちゃんスカッとしちゃったぁ」
「何か格闘技でもやってるのかい?」
目を爛々と輝かせ、マダム達が少女に近づく。
と、そのとき
「陽依さま!」
ギャラリーの向こうに、主婦達からひとつ分飛び出した頭が見える。
その頭はどんどん近づいてきて、マダムの間を縫って少女の前に出てくる。
その男を見た瞬間、少女は「げっ」と漏らした。
「陽依さま! なんで勝手に離れるんですか!? しかも何ですか、このギャラリー……」
「ええっと、その……」
少女、陽依が言いよどんでいると、マダムの一人が
「あんた、この子の保護者かなんかかい? あんたがほったらかしにするからこの子ナンパされてたんだよー」
「まあ、コテンパンにしっちゃったけどね」
マダムの言葉に付け足す陽依。
ソレを聞き、男はめまいを覚えた。
「ちょ……っとまってください。 陽依さま、何してるんですか」
「だってあいつらしこいんだもん」
「あなたね、厄介な相手だったらどうするんですか。あなたの身に何かあったら私が殺されるんですよ?」
「そんなの私に関係ないわよ。殺されるなら勝手に死ねばいい」
「はあ?」
先ほどとは違う意味でギャラリーが集まる。
長身のイケメンと、少女が言い争っている。
ギャラリーの中には携帯電話を手に写真を撮ろうとしている主婦まで……。
カシャッ
シャッター音に気付き、男が陽依の手を掴み歩き出す。
「あ、ちょっとあんたたち!」
マダムが声をかけるが、二人には聞こえていないのか。
歩きながら口論を続ける二人はあっという間に人ごみにかき消された。
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「離しなさいよ、慧」
「車に行くまで我慢してください」
「ちっ」
「舌打ちやめてください」
慧、と呼ばれた男は黒塗りのベンツに陽依を押し込め、反対側のドアから自らも乗り込む。
そして運転手に「屋敷へ」と告げると、陽依に向う。
「あのな、陽依さま?」
「なに」
「勇敢と無謀は違うのですよ? ご存知でしたか?」
「知らない」
「はあ……、急にいなくなったかと思えばナンパ退治ってあなた」
「はいはい、どーもすみませんでしたぁ」
あまりにもやる気のない陽依の謝罪に、慧の口からまたため息がこぼれる。
「まったく、このお嬢様は……」
聞こえているのかいないのか、当の本人は窓の外を眺めるばかりだ。
終
主従!
しゅ、じゅう……?
お題難しいですね^^