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⑤入部!?

朝早く、まだ6時前だが私は洗面台の前にいる。なぜならばヘアーアイロンを使って髪を真っ直ぐにしようと努力しているからだ。

高校生活の2日目、なんとか周りと打ち解けたい。そのためには髪型にも気をくばらなければと私は妙に張り切っていた。

たかが髪、されど髪、女子にとっては重要だ。

以前私のクラスに天然パーマが強い女の子がいた。彼女のあだ名はボンバーマンだった。私は間違ってもそんなあだ名を付けられたくない!

そのためには毎日2、30分の早起きは欠かせない。





学校に着いて私は自分のクラスに入り、席に座った。

周りの子達は同じ中学とかでグループを作っていたが、私はなかなか自分から話をかける事ができない。

ぽつんとクラスにいるのは結構きつい、私は隣のクラスの茜に会いに行った。


3組のクラスを覗くと茜は既にグループの輪に入っていた。周りの女の子達と楽しそうに笑っている。

私は余計に淋しくなった。しかしクラスが別れればこうなる事は分かっていた。

茜には人から好かれる雰囲気がある、のほほんとしながら、気がつくと周りに人が集まる。


邪魔しちゃっ悪いと思った私はそのまま離れようとした、が茜は私に気がついた。

「あっ未来ちゃん!ちょっとまって!」

そう言って私を追いかけてきてくれた。



「未来ちゃん来てるなら声かけてよ~」

「いや・・・茜楽しそうだったし、特に用があった訳でもないから」

茜は私がクラスに馴染んでいない事を察した。

「ねぇ私さぁ~今日の放課後、バスケ部の見学にいくつもりなんだけど・・・一緒に行かない?」

と誘ってくれた。私に気を使ってくれているのだろう。

「あ~でも私はバスケには興味ないし・・・」

申し訳ないが遠回しに断ろうと思った。なにせ私は体育の時間でさえ、自分にボールがくると3秒以内に誰かにすぐパスをしてしまう程自信がない。わざわざ部活に入ってまでやるなど問題外、論外、ありえない!

とは思っているがせっかく私に気を遣っているとゆうのにあまりハッキリと断るのは悪い気がしたので、それとなく言葉を濁した。

「運動部だと、ほら上下関係がきつそうだし、ちょっとねぇー」

まぁ確かに部活を入れば自然と周りに打ち解けるだろうし、クラス内でも仲良くなれる子ができるだろう。だがやはり運動部は無理だ、この体では元々の自分より身長は低い、力も弱い、持久力もないのだから。

「上下関係?それなら全然問題ないよ!大丈夫!

だってここ正しくは部活じゃなくて同好会なんだよ!

芦岡女子バスケ同好会!!」

え~!私の友達の何人かは芦岡女子に入っていたけどバスケ部あったよ!

実際に入っていた子もいたし。

と声に出さずに突っ込みをいれた。


驚く私を見て茜は話を続ける。

「私もさ普通にあると思ってたよ!だってバスケ部ってメジャーだしね。

でも昨日の放課後に先生に聞いたの、バスケ部は今日練習してますか?

って、そしたらさ、今は部じゃなくて同好会になっちゃったってゆうから。」


「え~バスケ部のない学校なんてあるんだ・・・」

私は呟いた。「ねー!私もびっくり!なんか先生が言うにはここ何年間かで、アイスホッケー部、サッカー部、バトミントン部を新しく作ったんだって。

そしたらいつの間にかバスケ部に入る生徒が減っちゃって、もう部とは言えなくなっちゃったんだって!」


「・・・そっかぁ。残念だったよね?」

私は茜に問い掛ける。

「え・・・何が!?」


「何がって、茜張り切ってたじゃん!

高校では試合に勝ちたいって。」

私の言葉に茜は平然として言う。

「あぁね~、でもさ、未来ちゃんがゆうように確かに先輩とかいない方が気兼ねなくできるし、勝つも何も、まず自分が出てないとつまらなくって!!そう考えればむしろ好都合かなと。」

まったく茜はポジティブに物事を考えられてで羨ましい。

私だったら一気にテンションが下がってしまうだろ。



「って訳だから初心者の未来ちゃんでもオッケーオッケー!

じゃ放課後にね」

そう言い残して茜はクラスに戻っていった。

結局私は今回も断りきれなかった。


そろそろチャイムが鳴るからクラスに戻ろう、そんな時私の目に昨日見た長身で色黒、つり目の私の苦手なタイプのあの子が見えた。

絡まれでもしたら大変だ、私はそそくさと足早に歩いた。

すると彼女は1組のクラスの前で足を止め、誰かに話しをかけ始めた。


あっ!風間さんだ!昨日新入生代表の挨拶をした風間さん。

これは・・・絡まれてるのかっ!?

お前調子こいてんじゃねーよ!!と。

あの顔で頭も良ければ嫉妬されても無理はない。

どうしよう・・・止めるべき?

あぁでもなんか威圧感あるよ~・・・

えーい私は彼女より3つ年上だ!

年下にびびってどーする私!

いけっ!ケンカ売ってやれ!!


私は彼女達に近づく。

すると二人の会話が聞こえてきた。

「みもり、今日遅刻したでしょー!?」


「昨日DVD全巻みちって寝たの朝方で~」


・・・なんだ、二人は友達か~。

タイプ全然違うのに。

ともかく高校生活しゅっぱなから争い事にならず良かった。




私は昔から争いは好まない。下手に目立って目を付けられたくないし、クラスの中心人物になりたいなど一度も思った事はない。ただ無難、普通でいい。

私は今までの人生の中で身に染みている、女の世界は汚い。

必ず派閥は生まれ、何人か集まれば悪口が始まる、ついさっきまで仲良く話をしていた子のだ。

仲良しグループといったって自分が休んだ日には何を言われているかわかったもんじゃない。

つまり大勢でつるんでいたっていい事はないってもう十分に知っている。

大体トイレにだってあんな大人数で行ってどうするとゆうのだ・・・。


とにかくクラスでは波風立てない程度に周りと上手くやり、仲良しの女の子は2、3人いればよし。

それが今までの私の考え。


だが一限目で係決めをしている最中思ったのだ、そうして今までの自分を貫いては何も変わらない、三年前と何も変わらない高校生活を送るのではないかと。

新たな自分になりたいとつい先日まで思っていたのが、結局は人間そう簡単には変わらない、変われないのかもしれない。


「学級代表~誰かやらないか~?」

担任の橋本先生の声が聞こえる。

あんな面倒な係、当然誰だって避けたい。全係の中で一番決めるまでに時間がかかる。

まぁ稀に率先して手を挙げる人もいるけど少ないともこのクラスにはいないようだ。「誰もいないか~?くじ引きかー!?」

どうやらお馴染みのくじになりそうだ。


「あたしやってもいいですよ?」


窓際の方から声がした。

声の主は風間さんの友達にして私の苦手 なタイプの少女、えっと・・・みもりって呼ばれてたっけ?

「おっと森川か・・・やってくれるのかぁ・・・?」

心なしか先生の声に元気がない。

おそらくはこの外見、先生からしたら仮にもクラスの代表にするには不安なのだろう。

「じゃあ森川がやってくれるなら、あと一人だな!学級代表は二人だからな!」


きっと今先生、心の中でもう一人の子は真面目そうな子にやって欲しいと思っているだろうなぁ~。

そう思うと少し可笑しかった。


と同時に自分の心にも声なき声がかすめた。

“やってみたら私?今まで一度もなった事ないし、今までの自分とは違う事をしたいんでしょ?”

いやいや私はそんなタイプじゃないし!

直ぐさまその声を掻き消す。

それに皆の前で手を挙げるだけでも恥ずかしい・・・。


私は首から下げている羊のネックレスを触った。

妹の優香がこんな人の体になってまでウジウジする私をみたら呆れるだろうか・・・?

あぁもう!今日の心の声うざっ!!

やればいんでしょやればっ!!


「あの~私やります・・・」

私は小さく手を挙げか細い声を出した。

「おー音羽!よかった、やってくれるか!?

決まって良かった。

くじは面倒だからな」

クラスのみんなも私が引き受けてくれてホッとした様子だ。



放課後、私はとっとと家に帰ろうとした。慣れない生活で過ごす時間は疲れたし、今日は早起きで髪をセットしていたので余り寝ていない。

しかし廊下で茜が私を待っていた。

「あれ茜・・・、待ってたんだ!?」

「そうだよ~、一緒に見学行く約束だったでしょ?」

できればこのまま帰りたい。茜は凄く感じのいい子だし、気さくで優しい、ただ唯一つ欠点があるとしたら自分の好きな事を人に強要させるけがある事かもしれない。

まるで全く興味の湧かない映画に無理矢理連れていかれるかのようだ。

正直気がすすまない。でもここ数週間、茜は私にいつも優しくしてくれた。数十分くらいは付き合ってあげるべきだ。



「でさ、何処で活動してるの?

体育館?」

私は尋ねた。

「いや体育館じゃなくて外だってさ。

中はバレー部がほぼ独占してるから」

ここ芦岡女子のバレー部は県内屈指の強豪だし、加えてここの体育館は狭いから同好会では使えないのも仕方ない。



そこはグラウンドの隅っこ、テニスコートの隣にある狭いスペース、小学生用並に低いリングが二つ並ぶ。しかも二つの間の幅は僅か10㍍程しかない。

これは余りにひど過ぎる!

まともな練習など出来るわけない。

私は茜の様子をちらっと伺った。

彼女もさすがにここまで酷い場所だとは思っていなかっただろう。

「誰もいないね・・・・?」

さすがに茜も不安そうに呟いた。

私達は顔を見合わせ立ち往生してしまった。


「なになに入部きぼう~!!?」

テニスコートの方から声が聞こえる。

私達がそちらに目をやると女の人がこっちに向かってくる。

ポニーテールの恰幅の良い女性だ。

背は高く横幅もあり私はつい先生かと思った。

しかし女性が近づくにつれ彼女が若い事に気がついた。危なかった、危うく先生と呼んでしまうところだった。


「二人はバスケ同好会に興味あるの~?」

女性が息切れをしながら尋ねる。

「はい・・・でも部員が見当たらなくて・・・」

茜が困ったように答える。

すると女性は

「マジで~?うけるんだけど~、ってかさ、あたし一応入ってるから~!」

と言いながら手をパンパン叩いて笑っている。

「えっ!?でも今テニスしてませんでしたか!?」

私は驚いてつい口を出した。

「ああね~。まぁうちら基本テキトーで~、今日とかテニス部練習休みとかだとー、コート借りて遊んでるってわけ~!

超やる気なくね?みたいな!」

ずいぶんとテンションの高いその女性に私達は呆気にとられてしまった。

「ちょっと二人共引かないで~!

あたしこれでも三年で部長の渋沢玲奈ってゆうのね~。

つか部じゃなくて同好会だから会長ってゆうのかな?

ふふっ、むしろ地位上がってね?みたいな。うけるわ~」

・・・一人で盛り上がっているご様子だ・・・。

「あっ私は東野茜っていいますっ、渋沢先輩っ、練習はいつしてるんですか?」


「・・・練習ねー、う~んうちら顧問とかいないし~三年が3人だけだし~まぁ受験生だし~大会とか出る予定ないし~まぁたまに、気が向いたらたまに、週一くらいボール触るかな~?ってそんなやってないか~」

適当過ぎるその言葉に私達は愕然とした。

言葉を失う私達をよそに渋沢先輩は続ける。

「とりあえず部じゃないから入部届けとか大丈夫だから~!ここら辺適当に使ってオッケーだし。

うちらごくたまに姿見せるかもしれないけど、まぁ基本現れないから~。

友達誘って頑張って!」

先輩は言いたい事だけしゃべり、再び巨体を揺らしテニスコートへと戻って行ってしまった。




残された私達は再度顔を見合わせた。

茜が口を開く。

「とっとにかく入部したって事かな?」 「うっうん・・・、あっ・・・いや、私は入ってないけど。」

ごにょごにょ独り言のようにしゃべる私。

とは言えこの状況では入部も何もあったもんじゃないが。



こんなへんぴな隅っこにぽつんととり残された私達、まったくもって

先が思いやられる。




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