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セリーナ・ルミエール

朝日が差し込む星屑の鍛冶屋。

ケントとメイがカウンター越しに向かい合いながら、ギルドについて話し始めていた。


「メイ、そもそもなんだけど。ギルドってどういったものなんだ?」


ケントが少し身を乗り出して尋ねると、メイは「そんなことも知らないの?」と軽くため息をつきながら答えた。


「ギルドっていうのは、同じ職業や目的を持った人たちが集まる組織のことよ。冒険者ギルドもその一つね。」


「なるほど、職業団体みたいなものか。」


ケントが頷くと、メイはさらに説明を続けた。


「この世界にはいくつかの主要なギルドがあるの。たとえば、冒険者ギルド以外にも――」


メイは指を一本ずつ折りながら挙げていった。


「鍛冶屋ギルド、商人ギルド、魔法ギルド、職工ギルド……それぞれの分野をサポートしたり、ルールを決めたりしてるの。」


「魔法?!この世界には魔法があるのか?!」


ケントが身を乗り出して驚きの声を上げると、メイは一瞬固まり、その後眉間にしわを寄せた。


「……え、えぇ……そりゃあるでしょ?この世界に……とかケント、たまに怖いわよ。それともボケたの??」


――や、やばい。この世界にとっては当たり前のことだもんな。俺も前の世界でいい歳したおっさんに「この世界にはスマホがあるのか?!」って言われたら怖いよな。


「あれだよ……ちょっとしたジョークだよ。そりゃ魔法はあるよな。それで……話し戻すけどさ、ギルドって結構種類があるんだな。鍛冶屋ギルドってのは、この店も入ってるのか?」


――魔法についてめちゃめちゃ聞きたいけど、聞くのは今度にしよ。


「もちろんよ。でも正直、うちは目立たないからあんまりギルド内では注目されてないけど……。」


メイは少しだけ自嘲気味に笑った。


「いやいや、これから目立たせてやろうぜ。鍛冶屋ギルドだって星屑の鍛冶屋の名前だけじゃなくて、メイの名前をも覚えることになるさ。」


ケントが笑顔で励ますと、メイも少し顔をほころばせた。


「それで、これから行く冒険者ギルドはどんな役割なんだ?」


ケントが続けて尋ねると、メイは少し得意げな顔で答えた。


「冒険者ギルドは、この国で一番大きなギルドの一つよ。モンスター討伐や素材収集、護衛依頼なんかを仲介してるの。冒険者たちの活動を支えるハブみたいな場所ね。」


「なるほど。じゃあ、俺たちが短剣を広めたい冒険者たちもそこに集まってるんだな。」


「そうよ。それに、鍛冶屋ギルドと冒険者ギルドは連携してるの。鍛冶屋は冒険者に武器や防具を提供してるからね。たまにだけど、冒険者ギルドにも顔を出したりするわ。」


「ふむ。連携してるなら、メイがいれば冒険者ギルドにも問題なく入れるってことか。」


メイは頷きながら言った。


「そういうこと。だから案内は任せてね!」


「それは助かるな。なんだかギルドに行くのが楽しみになってきた。」


ケントは少しワクワクしながら笑ったが、メイはすかさず念を押した。


「でもね、くれぐれも大人しくしててよ?冒険者の人たちは気さくな人がほとんどだけど、中には短気な人もいるんだから。」


「わかってるさ。俺だって大人だからな。……たぶん。」


――討伐したモンスターとか見たら、魔法があると知ったときよりもはしゃいじゃうかもな。



―――――――――――――――――――――――――


一方その頃、冒険者ギルドでは活気に満ちた喧騒が響いていた。

木製の大きな扉の向こうには、依頼掲示板を眺める冒険者や、受付に並ぶ人々がひしめき合っている。


「それにしても、セリーナが武器探しだなんて珍しいな。」


ギルドの隅で話している二人の冒険者が耳打ちし合う。


「聞いたか?今使ってる短剣がガタついてきたらしい。依頼中に相当ハードな戦いがあったとか。」


「そりゃ、セリーナだからな。あの子は無茶しかしないから。」


もう一人が苦笑する。


ギルド内の目立つ席には、銀髪の少女、セリーナ・ルミエールが座っていた。

柔らかく光を反射する銀髪と、鮮やかな水色の瞳が印象的。可愛らしい顔立ちは人懐こい笑顔によってさらに際立ち、小柄ながらも機敏な動きが目を引く。

白と青を基調とした軽装は、冒険者としての機能性とおしゃれさを兼ね備えている。


腰には簡素な短剣が収められているが、刃先には長年の酷使の跡が残されている。


一人の受付嬢が彼女に声をかけた。


「元気にしてる?セリーナ。新しい武器を探してるってみんなが噂をしていたわよ。まだ決まっていないの?」


「そうなのよね。いくつか見たんだけど、どれもいまいちピンとこないのよね。最近話題のグランス鍛冶店にも行ったんだけど、デザイン性は良くても耐久性が微妙なのよね。」


受付嬢とセリーナが会話をしていると、周囲の冒険者たちも何気なく彼女たちの様子を伺っている。


「まあ、適当な武器を選んでまた後悔するくらいなら、じっくり探すわ。どんな武器でも一定使いこなす自信はあるしね。」


セリーナは人懐こい笑顔でそう言って、軽やかに腰を浮かせた。


二人のやり取りを見ていた冒険者の一人が言う。


「……あのセリーナのお眼鏡にかなう武器が見つかったら、とんでもないことだよな。」


別の冒険者が続ける。


「だな。いままでどんな武器も100%のフィットはしていないって話だからな。もし見つかれば、その鍛冶屋の状況は一変するだろうよ。」


冒険者ギルド中で同様の会話が繰り広げられている。

その会話の中で、一つの名前が小さく囁かれた。


――【星屑の鍛冶屋】ならもしかしたら。


星屑の鍛冶屋の運命を大きく動かす出会いが、あと少しのところまで差し迫っていた。



【読者の皆様へ】

数ある作品の中から、本作を読んでいただき、ありがとうございます!


皆様からの応援や評価が、執筆を続けるエネルギーとなっています!

これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!


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