表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/27

罠の終着点

夜の帳が降りる頃、マルクス城下町の裏通りには静かな緊張が漂っていた。

人々が寝静まる頃合いを見計らい、闇取引の準備が進められていた。


ガイル・ロッセンの指示を受けた運び屋たちが、慎重に木箱を積み込み、密かに市場へと運び出していく。

それは「星屑の鍛冶屋の新刻印」を施した、グランス鍛冶店製の粗悪な偽造品だった。


「よし、準備完了ですね。くれぐれも慎重にです。何人かの仲買人を挟んで、決してグランス鍛冶店からだとバレないように、市場に流れ込ませましょう。」

ガイルが低い声で念を押すと、部下の男たちは一様に頷いた。


「ええ、いつものルートで流します。途中で誰かに気づかれる心配はありません。」


ガイルは満足げに頷く。

そして、彼は薄く笑いながら言い放った。

「これで、星屑の鍛冶屋は終わる。」



―――――――――――――――――――――――――


すっかりと寝静まった夜の市場の中。

そこに、一人の武器商人の姿があった。


フードを深く被ったその男が、運び屋に向かって低い声で言う。


「よし、品を見せろ。」


運び屋は箱を開け、中に入っている剣を取り出した。

闇夜でもはっきりと見える「新たな星屑の鍛冶屋の刻印」が、刃に刻まれている。


「いい刻印だな。」

武器商人は満足げに頷き、銀貨を手渡そうとした――その瞬間。


「そこまでだ。」


低く響く声が、夜の静寂を打ち破った。


周囲の暗がりから、複数の人影が現れる。


「……っ!? 誰だ!!」


ガイルの部下たちが慌てて辺りを見渡すと、

既にすべての出口が封じられていた。


先頭に立つのは、冒険者ギルドのギルドマスター、ガレオン。

その背後には、複数のギルドメンバーが剣を抜いて立ちはだかる。

そこには、セリーナの姿もあった。


「――武器の違法取引、ならびに星屑の鍛冶屋の名を騙った偽造品の流通。

そして、その武器のせいで俺たちの仲間が傷ついた。

これは、冒険者ギルドとして看過できる問題ではない。」


「ぐっ……!!」


部下の一人が抵抗しようと動いたが、ガレオンが一喝する。


「お前たちの逃げ道はないぞ。」


そして、ガレオンはゆっくりと歩み寄りながら、目の前の武器を手に取った。

夜闇でもはっきりと見える「新たな星屑の鍛冶屋の刻印」が、刃に刻まれている。


「さて、この武器をどこから仕入れたものか、話してもらおうか。」


「……知るかよ!! 俺たちはただの運び屋だ!!

それに、この刻印を見てみろ!! これは星屑の鍛冶屋の刻印だろ?!」


「さて、それはどうだろうな。」


ガレオンは冷たく微笑む。

彼らはまだ、自分たちが完全に罠に嵌っていることに気づいていない。



―――――――――――――――――――――――――


翌日の早朝、ギルド執行部が、グランス鍛冶店の扉を堂々と開け放った。


「――ガイル・ロッセン。」


ガレオンが低く響く声で名を呼ぶ。


ガイルは、意外にも余裕の表情で振り向いた。

「おやおや。冒険者ギルドマスター自ら、何の御用でしょうか?」


彼の机の上に、昨夜押収された武器が並べられた。


「貴様が行った偽造武器の製造と流通、すべて明るみに出た。」


ガイルはまだ表情を変えない。


「さて、何のことでしょう?証拠もなしに、いきなりこんな――」


「まあ待て。こいつの話も聞いてやってくれ。」


そう言って、ガレオンが手をかざすと、ケントが姿を現した。


「……ケント!!」


ガイルの顔が、わずかにこわばる。


「ようやく表情が変わったな、ガイル。もう終わりだよ。」


「……なるほど。これは、あなたが最初から仕組んでいたことですか。」


ガイルは冷静さを保とうとしていたが、その声には焦りが滲んでいた。


「ただ、私には何のことだかさっぱりです。」


「あんたがそんなに簡単に認めるわけないよな。ただな。さっきも言った通り、あんたはもう終わっているんだよ。」


その言葉に、ガイルは明らかに苛立ちながら言った。

「だから……なにが終わっていると言うんですか?! あなたたちの言い分では、私たちが巷で話題の粗悪品を作っているということですが!! あれは星屑の鍛冶屋が作っているものでしょう!!」


「いや、あれはグランス鍛冶店が作ったものだ。俺が証明できる。」


「ケントさん、あなたの証言なんて証拠にならないですよ。星屑の鍛冶屋を守るための嘘かもしれない。いや、普通に考えればその可能性のほうが高い。」


「その通りだ。俺の証言なんて、証拠にはならない。ただ、あんたが言い逃れができない証拠がある。」


そう言って、ケントが鍛冶場の方に目線を向けると、

双子の鍛冶師のライルとルークが姿を現した。


そして、彼らの手には――


「星屑の鍛冶屋の新刻印の型」が握られていた。


「これが証拠だ。なんでグランス鍛冶店に星屑の鍛冶屋の刻印用の型があるのか。」


「……!!」


ガイルの顔が青ざめた。


「……どうして、それをお前たちが……。」


ライルが一歩前に出て、はっきりとした声で言った。


「ガイルさん。この型があるのは、グランス鍛冶店だけです。

つまり、ここで偽造品を作っていた証拠になります。」


ルークも続ける。


「僕たちが作ったものが、違法取引に使われていたなんて……もう耐えられません。」


「いや……違う……!!」


ガイルは狼狽えながらも、何とか弁明しようとする。


「待て!違うんだ、これはケントが仕組んだことだ!

この型は、元々彼が持ち込んだものだ!!」


しかし、ケントは静かに微笑んだ。


「そうだな。俺が持ち込んだよ。

でもな、ガイル――星屑の鍛冶屋は、刻印を変えてなんかいないんだよ。」


「……は?」


ガイルの顔から血の気が引いていく。


「つまり、この『新しい刻印』なんてものは、最初から存在しなかった。

お前を罠にかけるために作った、ニセの刻印だったんだよ。」


「バ……バカな……!そんなことって……!!」


ガイルはようやく全てを理解し、膝から崩れ落ちた。


「つまりだ――この『新刻印』を持つ偽造品が市場に出回り、

その唯一の刻印の型がグランス鍛冶店にある。」


「これ以上の証拠はない。ゲームオーバーだ、ガイル。」


ガイルはその場に崩れ落ちた。

その様子を一瞥し、ガレオンが続けた。


「さて、ガイル。もう言い逃れは無理だな。お前には、相応の罰を受けてもらう。

ああそうだ。当然だが、商人ギルド、鍛冶屋ギルドにもこのことは伝わるからそのつもりでな。」



―――――――――――――――――――――――――


その後、商人ギルドと鍛冶屋ギルドが即座に動き、グランス鍛冶店は閉鎖された。


ガイルは違法取引と詐欺の罪で裁かれ、もはや二度とこの業界に戻ることはできない。

ライルとルークは、ガイルに強制されていたこと、メイとケントからの嘆願もあり、罪に問われることはなかった。


そして――

メイの強い希望もあり、正式に星屑の鍛冶屋の仲間となった。


「あの二人の技術は相当なものよ。それにうちは人でも全く足りないし。ライルの『本物の武器を作りたい。』という言葉に、私たちが応えてあげるべきよ。どうかしら、ケント。」


メイは優しく微笑みながら言った。


「メイが決めたのなら良いさ。」


その言葉に応えられる場所は、今や星屑の鍛冶屋しかなかった。


ケントとメイはライルとルークに向かって、笑顔で伝えた。

「ようこそ、星屑の鍛冶屋へ。」



―――――――――――――――――――――――――


星屑の鍛冶屋の名誉が回復し始めた頃――

公爵家のセシリア・キアーノは星屑の鍛冶屋の武器を携えて、魔物討伐に向かっていた。


これから起こる事件を、ケントとメイはまだ知らない。

【読者の皆様へ】


数ある作品の中から、本作を読んでいただき、ありがとうございます!


皆様からの応援や評価が、執筆を続けるエネルギーとなっています!


これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!



少しでも「面白い」「続きを読んであげてもいい」と思っていただけた方は、ぜひ『ブックマーク』や広告下の評価を設定していただけると、大変励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ