約束
冒険者ギルドの扉が勢いよく開かれた。
そこに立っていたのは セリーナ・ルミエール だった。
「みんなー!!!」
彼女の大声がギルド内に響き渡る。
「おお! セリーナじゃねぇか!」
「ブラック・タイラントを一人で仕留めたってマジかよ!」
ギルドの冒険者たちがざわめき、次々とセリーナのもとに集まってくる。
「ええ、私の腕前もあるけどね――ふふっ。でも正直、この短剣がなかったら危なかったわ。だからここで宣言するわ!
このルミナス・エッジは“私の命を救った最高の武器”よ!」
セリーナは 腰に下げた短剣――『ルミナス・エッジ』 を抜き放ち、掲げる。
刃に刻まれた流れ星のマークが、ギルドの灯りを反射して鈍く光った。
大声で言い切った瞬間、ロビーに居合わせた冒険者たちから感嘆の声が湧く。
声に釣られて、受付で仕事をしていたエミリーも様子を見にきた。
「セリーナ、ずいぶん熱烈ね。あの子がここまで盛り上げるなんて珍しいわ。」
「いい?これはただの短剣じゃないの!私の命を救ってくれた、奇跡の短剣 なのよ!!」
彼女はルミナス・エッジを高々と掲げ、ギルド内を見渡す。
「この短剣を作ったのは 星屑の鍛冶屋!!
そこにいる メイとケント が経営しているの!! 美男美女でしょ?
このお付き合いしている二人が織りなすハーモニーが――」
「「付き合ってない!!!!」」
ケントとメイが 完全にシンクロして 即座にツッコミを入れる。
「えっ、そうなの? 私てっきり……」
セリーナが怪訝そうに二人を見つめると、周りの冒険者たちが 「まあ、そう言われると……」 と妙な納得をしている。
「いや、違う違う!!」
「私はケントとは、まだそういう関係じゃないから!!……って、まだ……じゃなくて……!!」
メイは顔を赤くして、俯いた。
その様子を見て、何人かの冒険者が食い入るようにメイを見ている。
――『ルミナス・エッジ』の評判とは別で、来客数が増えそうだな。
ケントは嬉しい反面、少しモヤッとしている自分に驚いた。
「そ、そう……まあいいわ!」
セリーナは気を取り直し、ルミナス・エッジを掲げ直す。
「でもね、本当にすごい二人なのよ! 星屑の鍛冶屋、最強!エクセレント!エレガント!」
「お前、病み上がりなんだから落ち着けよ。」
ケントが苦笑しながら言うが、セリーナは ピシャリと指を立てて 遮る。
「何を言ってるの!約束したじゃない!それにね、良いものを広めるのは冒険者の義務よ!!」
そう言って、大きく息を吸い込むと、次の瞬間——
「星屑の鍛冶屋は最高ーーーー!!!!」
突然の 絶叫宣伝 に、ギルド内が一瞬ざわつく。
「うるせぇぇぇぇ!!!!!」
「お、おい、なんだこの騒ぎは!」
「またセリーナかよ……」
ギルド全体が一瞬騒然とするが、セリーナはお構いなしに続ける。
「ルミナス・エッジは 最高の切れ味!! そして とんでもない耐久性!!」
「普通の短剣なら何度も使ってたら刃こぼれするでしょう? でもね、この子は違うの!! ブラック・タイラントの牙をまともに受けても、びくともしなかったのよ!!」
「はぁ!? それマジかよ!」
「盾ならまだしも、そんな短剣、聞いたことねぇぞ……」
冒険者たちがざわつき始める。
「だから私は誓うわ!!これから武器を買うなら 絶対に星屑の鍛冶屋!!」
「熱量がすげぇな……」
「でも実際にブラック・タイラントを倒した奴が言うんだから、信用できるかもな」
周囲が次第に 本気で興味を持ち始める。
すると、奥から 威厳ある低音の声 が響いた。
「おいおい、騒がしいと思ったら……セリーナか。」
冒険者ギルドマスター、ガレオン・ヴァルデリオ が姿を見せる。
「まったく、お前がいるとギルドが賑やかになって仕方がないな。」
セリーナは満面の笑みを浮かべた。
「ガレオンさん!ちゃんと聞いてた?」
「ああ、嫌でも耳に入ったよ。」
ガレオンはケントとメイを一瞥し、満足げに頷く。
「なるほど。良い面構えだ。お前たちの武器がなければ、セリーナは今ここにいなかったかもしれない。私からも礼を言おう。」
「いえ、セリーナの力があってこそです。」
ケントが 少し照れくさそうに 言うと、ガレオンは満足げに笑った。
「どこかのタイミングで、俺も店に行こうと思っている。
ちょうど武器を新調したいと思っていたところだ。」
「え、え……ガレオンさんが、うちに……??」
メイが 目を丸くして驚く と、ケントが不思議そうに彼女を見た。
「そんなにすごいことなのか?」
「ケント、なに言ってるの!ガレオンさんはね――」
メイは少し息を整え、興奮気味に続ける。
「ただのギルドマスターじゃないの!
現役の頃は 『黒剣の戦神』 って呼ばれていたのよ!
数え切れないほどのS級魔獣を討伐して、エレメント・ドラゴンやプロメテウス・ゴーレムみたいな討伐不可能と言われていた魔獣まで仕留めた伝説の人なの!」
「え、そんなすごい人なの?」
ケントが 驚きとともにガレオンを見上げる と、本人は豪快に笑った。
「おいおい、そんな大層なもん……でもあるかな。
ただ確かに昔は剣を振るっていたが、今はただの管理職さ。
……今でも腕が鈍っていないか、時々試したくなることはあるがな。」
ガレオンは 静かに腰の剣の柄を叩く。
「それでな、ちょうど俺の次の相棒になりそうな武器を探していたんだ。星屑の鍛冶屋の実力、確かめさせてもらおうか。」
その一言に、ギルド内が ざわめく。
「マジかよ……!?ガレオンさんが武器を選ぶってことは、名匠たちがこぞって鍛えた剣と並ぶってことだぞ?」
「すげぇ……これは星屑の鍛冶屋、本当にすごいことになるぞ。」
周囲の冒険者たちの会話を聞いて、ケントは ドキドキしながらも自信を持って 頷いた。
「ありがとうございます。ご来店、お待ちしています。」
ケントは 心の中でドキドキしながらも、力強く頷いた。
セリーナは 得意げに腕を組む。
「これで、星屑の鍛冶屋は大繁盛ね!!」
メイが 感極まったように 言う。
「本当にありがとう、セリーナ。」
「ふふ、どういたしまして。さて……と、じゃあ続けるわね。」
「え、まだ続けるの?」
「だって……まだ喉枯れていないもの。」
セリーナは いたずらっぽく笑った。
―――――――――――――――――――――――――
それから 2時間、セリーナは 星屑の鍛冶屋の宣伝を続けた。
喉がガラガラになり、最後は 「もう無理……。」とカスカスの声で呟いた。
ギルド内に笑いが巻き起こる。
――こうして、星屑の鍛冶屋の名は マルクス中の冒険者に知れ渡ることとなった。
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