流れ星と希望
セリーナ・ルミエールは冷たい地面の上で目を閉じていた。戦いの余韻と疲労が全身を蝕み、意識は朦朧としている。
――これで終わりなのかな?
彼女の胸に浮かんだのは、自分の未熟さへの悔しさだった。ブラック・タイラントを討伐できたものの、その代償として力を使い果たし、動くことすらままならない。
一緒に死闘を乗り切った『ルミナス・エッジ』の流れ星のマークが、わずかな光を反射していた。
それがかすかな希望のように彼女の視界に映る。
「……こんなところで終わりたくない……っ。」
彼女はかすれる声で呟いたが、その声に答える者はいない。
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ダンジョンから逃げ帰った冒険者の報告を受けて、冒険者ギルドは異様な雰囲気に包まれていた。
「デュランス・ベアじゃなくて、ブラック・タイラントだったなんて……。」
「ブラック・タイラント相手だと、いくらセリーナだとしても……。」
ギルド内のざわめきが大きくなる中、ギルドマスターのガレオン・ヴァルデリオがギルドの奥から颯爽と登場した。
「冒険者ギルドからの依頼だ。捜索隊を出す。目的は当然、セリーナ・ルミエールの救出だ。手伝ってくれる冒険者はすぐに支度をしてくれ!一刻を争う!5分後に出発だ!」
その声に応じて多くの冒険者たちが名乗りを上げた。その中には、セリーナに恩義を感じている者も多かった。
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捜索隊はダンジョンの入り口から慎重に進み始めた。足元を照らすランタンの光が、湿った岩壁を揺らめかせる。
「セリーナ!聞こえるか!」
「セリーナ!どこだ!」
冒険者たちは声を張り上げて呼びかけるが、返事はない。
道中には、ブラック・タイラントとの戦いの痕跡が点々と残されていた。引き裂かれた岩壁、巨大な爪痕、飛び散った黒い血。
「……ブラック・タイラント相手に、一人でどこまで戦ったんだ……。」
冒険者たちは緊張感を増しながら、さらに奥へと進む。
「さすがにブラック・タイラント相手に一人だと……もう……」
全員が諦めかけたときに、捜索隊の一人が突然足を止めた。
「おい、待て!あそこ……なんか光ってないか?!」
彼が指差した先には、暗闇の中で微かに輝くものがあった。
それは――『ルミナス・エッジ』の流れ星のマークだった。
「間違いない!セリーナだ!」
近くには息絶えたブラック・タイラントもいる。遠くからではブラック・タイラントの生死が確認できず、冒険者たちは警戒をしながらその光を頼りに駆け寄った。
セリーナは地面に横たわっていた。全身に傷を負い、息も弱々しいが、かすかに動く様子に冒険者たちは安堵した。
「セリーナ!しっかりしろ!助けに来たぞ!」
仲間たちが声をかけると、彼女の瞼がわずかに動いた。
「……来てくれたの……?」
弱々しい声だったが、その中には確かな生存の意志が感じられた。
「当たり前だろ!ギルドマスターが捜索隊を結成してみんなで来たんだ!」
仲間たちは彼女をそっと抱き起こし、傷を手当てしながら急いでギルドへと戻る準備を始めた。
「さあ、帰るぞ。」
安堵からか、セリーナの青い瞳からは涙が溢れていた。
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星屑の鍛冶屋では、ケントとメイがセリーナの無事を祈っていた。
ギルドからの連絡がないまま時間だけが過ぎ、二人の胸には不安が募っていた。
「セリーナ、大丈夫かな……。」
メイがぽつりと呟く。
「彼女ならきっと大丈夫さ。冒険者ギルドでの身のこなしを見ただろ?彼女がやられるはずがない。」
ケントはそう言いながらも、どこか落ち着かない様子で店内を歩き回っていた。カウンターの上を何度も指で叩いたり、陳列された武器を並び直したりしていた。ケント自信、こんなに落ち着かないのは初めてだった。
その時、ギルドから遣いが来た。
「セリーナが見つかったそうだ!無事だ!いまギルドに戻ってきているらしい!」
その知らせに、メイは「よかった」と泣き崩れてしまった。
ケントも大きく安堵の息を漏らして、泣いているメイの背中をさすった。
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ギルドでは、治療を終えたセリーナが『ルミナス・エッジ』をそっと握りしめていた。
「あなた、本当にすごいわね……。」
短剣に向かってそう語りかける彼女の目には、感謝と信頼が宿っていた。
その刃には、ブラック・タイラントの黒い血が微かに付着しており、戦いの激しさを物語っていた。
「星屑の鍛冶屋……ケントとメイにお礼を言いに行かないとね。」
その言葉は、新たな物語の幕開けを告げるものだった。
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