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運命の短剣が繋ぐ物語

ケントとメイは、ギルドのある城下町の中心部へ向かっていた。冒険者ギルドは、星屑の鍛冶屋から歩いて30分程度の距離に位置している。


冒険者ギルドの木製の大きな扉を開けた瞬間、ケントは目を見開いた。

広々とした空間には、冒険者たちの賑やかな声が響き渡っている。

依頼掲示板の前で真剣に見つめる者、酒場コーナーで杯を傾ける者――この世界の活気が詰まったような場所だ。


「すごい……本当に賑やかだな。」


ケントが周囲を見回しながら呟くと、隣のメイが微笑んで答えた。


「冒険者ギルドって、いつもこんな感じなのよ。冒険者たちの拠点だし、いろんな依頼が持ち込まれたり、情報交換の場にもなっているの。まぁ、初めての人には少し圧倒されるかもね。」


確かに巨大な依頼掲示板には所狭しと依頼書が貼られている。

その横にある受付カウンターには、鮮やかな制服を着た職員たちが笑顔で対応していた。


――思ったよりも近代的というか……しっかりしてるんだな。


ケントが一人で感心していると、奥から大柄な男が大声を上げた。


「おいおい!この報酬、もう少し上げられないのかよ!フレイム・リザードのの退治なんて命懸けなんだぞ!」


「申し訳ありません。私たちギルド職員に言われましても対応できかねます。依頼元におっしゃっていただかないと。」


受付嬢が冷静に返す。そのやり取りを見て、ケントはクスリと笑った。


――なんだか、会社のクレーム対応みたいだな。


「どこの世界でも、文句を言うポイントを間違えているやつはいるんだな。」


ケントは冗談めかして言ったが、メイが肘で軽く突いてきた。


「ちょっと、そんなこと冒険者たちに聞かれたら怒られるわよ!あの怒っている人なんてトロールみたいに大きくて顔も怖そうじゃない!」


――この世界のトロールの評価はわからないけど、たぶんメイのほうが怒られることを言っているよな。


ケントが思わず肩をすくめたその時、カウンターに立つ受付嬢エミリーが二人に気づいて声をかけた。


「メイ、いらっしゃい!今日はどうしたの?」


メイが軽く手を挙げて答える。


「おはよう、エミリー!紹介するわ、この人はケント。星屑の鍛冶屋で一緒に働いているの。今日は私たちが作った短剣を使ってくれる冒険者を探しにきたの。誰かいい人いないかな?」


「はじめまして。ケントです。」


エミリーがケントに視線を向けると、ニコリと微笑んだ。


「はじめまして、ケント。星屑の鍛冶屋で新しい人が働き始めたとは風の噂で聞いていたわ。これからよろしくね。で、短剣を使ってくれる冒険者ね。どういう人に使ってほしいとかあるの?」


「できたら他の冒険者からも一目置かれている存在で、なにかと目立つような人かな。あとは嘘が吐けないような、素直な子だと嬉しい。」


ケントが言うと、エミリーは少し考えたように答えた。


「なるほど。それでいて短剣使い、となるとちょうどいい人がいるかも。」


そう言い終えた瞬間、背後から元気な声が響いた。


「ねぇ、それって新しい武器の話?」


振り向いたケントの目に飛び込んできたのは、銀髪の少女。

鮮やかな水色の瞳が輝き、白と青を基調とした軽装に身を包んだ彼女の姿は、明るく可愛らしい雰囲気を醸し出している。


――綺麗と可愛いが同居しているような子だな。


ケントは思わず見惚れていた。

あまりにじっとセリーナを見つめるケントに、メイは思わず小さなため息をついた。


「セリーナ・ルミエールよ。よろしくね。」


彼女は軽やかに自己紹介をすると、ケントとメイを見比べた。

セリーナが二人に話しかけた様子を冒険者ギルドにいる多くの冒険者が様子を伺っていた。


――なるほど。有名人なのは間違いなさそうだ。


「それで、それってどんな短剣なの?見せてくれない?」


「え、ええ。これよ。」


メイがセリーナの勢いに圧倒されながら布に包んだ短剣を取り出し、そっと広げると、セリーナの目が輝いた。


「これが……すごく綺麗ね。それに、このマーク、流れ星をイメージしてるの?」


「そうだ。この短剣は星屑の鍛冶屋を代表する新作、『ルミナス・エッジ』だ。耐久性も切れ味も自信がある。試しに使ってみてほしい。」


メイの代わりにケントが真剣な眼差しで答えると、セリーナは少し考え込みながら短剣を手に取った。


「なるほどね……少し振ってみてもいい?」


どうぞ、とジェスチャーで伝えた。


セリーナは短剣を腰に装着し、動きを確かめるように身をひねった。

そして素早く、何回か短剣を振り抜いた。短剣を振るうセリーナの動きは、素早く正確だった。その姿には、長年の経験が刻み込まれているようだった。


「悪くないわ。軽いし、バランスもいい感じ。この流れ星のマークも可愛くて好みよ。でも、ちゃんと評価するには実戦で使わないとわからないわね。」


「当然の意見だ。そこでだ、この『ルミナス・エッジ』を君に無料で貸与させてくれ。」


「無料?!なんで無料なのよ。なにか裏があるんじゃ……!」


青い瞳が睨みつけてきた。


「いやいや、なにもないよ。君を有名な冒険者と見込んで頼んでいるんだ。『ルミナス・エッジ』を使ってもらって、感想を教えてほしいんだ。ただ、うちはその感想を他の冒険者に伝えさせてもらうけどね。」


ケントが話すと、セリーナはニヤリと笑った。


「ははーん。私の人気にあやかろうって寸法ね。いいわ、乗ってあげる!タイミングもちょうどいいわ。これから討伐クエストに行くところだったの。」


セリーナがカウンターで依頼書を受け取った。依頼書には『デュランス・ベアの討伐』と書かれている。その様子を見て周囲の冒険者たちがざわめき出した。


「おい、セリーナが新しい短剣を持って『デュランス・ベア』の討伐に行くぞ。」


「ランクCの依頼だろ。セリーナだったら大丈夫だろ。それよりあのセリーナが使うことを即決したあの短剣が気になるな。どこの鍛冶屋のだ?」


――早速効果が出始めている。やっぱり、口コミは現場の熱量が一番効くよな。


ケントは思わずニヤッとした。


周りのざわめきを気にすることなく、セリーナがいたずらっぽく話しかけてきた。


「無料で使わせてもらっているからって、私は本当のことしか言わないからね。微妙だったら大声で微妙って叫んでやるんだから。」


「もちろんさ。その代わり、良かったと感じたら、喉が枯れるほど良かったと叫んでくれよ。」


セリーナは笑いながら、軽やかにギルドを後にした。



―――――――――――――――――――――――――


「さて……勝手に進めてしまったけど、よかったか?セリーナに任せて大丈夫かな?」


ケントがギルドを出た後、ポツリと呟いた。

メイが「もちろん!」と興奮気味に話し始めた。


「あの子は実力も信頼もある人気冒険者なのよ!まさか、セリーナが引き受けてくれるなんて予想外だったわ。」


「それだけ『ルミナス・エッジ』が良い出来だったってことさ。いいスタートになりそうだな。」


ケントの胸には、大きな期待と少しの不安が混ざり合っていた。

セリーナが『デュランス・ベア』の討伐クエストに挑むことで、『ルミナス・エッジ』がどんな評価を受けるのかを心待ちにしていた――。



【読者の皆様へ】

数ある作品の中から、本作を読んでいただき、ありがとうございます!


皆様からの応援や評価が、執筆を続けるエネルギーとなっています!

これからも楽しんでいただけるよう頑張りますので、応援よろしくお願いいたします!


少しでも「まあまあ、面白い」「続きを読んであげてもいい」と思っていただけた方は、ぜひ『ブックマーク』や広告下の評価を設定していただけると、大変励みになります!

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