弾のない銃
黒服の男に一本のボールペンを渡された。
「これは?」
「あなたが知る必要はありませんよ。ただあなたは私が言うタイミングで、そのペンの頭を押せばいい」
「本当に、それだけで借金を無かったことにしてくれるのか?」
「ええ、約束しましょう。ただし、注意点が二つあります」
「注意点?」
「ええ。一つ、私が合図するまでは絶対にペンを押さないこと」
黒服の男は二本の指を立てる。
「二つ、ペン先を自分のこめかみに押し付けてペンを押すこと。安心してください、芯は入っていないので」
俺には、黒服の男の指示に従う以外に道は無かった。