プロローグ
3年ほど前に執筆した作品を発掘したので試しに投稿してみます(笑)
基本的に1話完結のエピソードばかりです!
とあるダンジョンの奥底で美しい少女と剣と杖を構えた物々しい一団が相対していた。
白い肌、美しい金髪、年の頃はまだ十二歳ほどだろうか、そんなうら若き乙女が凶悪そうな顔をした数人の男達に囲まれている。しかも武器を持って。
第三者に見られた場合通報されること間違い無しの光景ではあるが、よく見ると様子が少しおかしい。男達は体に細かい傷をいくつも負い額には汗がにじみ息も絶え絶えといった様子だ。
対して囲まれている少女は怯えた様子は微塵も無く堂々とした佇まいをし、その顔には嘲笑ともとれる笑みが浮かんでいる。
「ハッハッハ!この程度か人間どもめ、もっと足掻いてみせろ!私を楽しませてみろ!」
高笑いをした拍子に少女の口元から異常に鋭い犬歯がちらりと見える。よく見ると瞳も赤く、肌も白を通り越して死人の青に近い。
少女の言葉に男達は武器を握りしめじりじりと間合いを詰めようとする。
「ジャン、呪文で支援してくれ俺とアルで突っ込む、サムはサポートに回れ!」
リーダーらしき剣士が杖をもった魔法使いと他の剣士と盗賊風の男に指示を出す。言語を理解しないような魔物が相手ならそれでもいいのだろうが彼らの目の前にいる少女は言葉を理解し、数多の戦士達と戦ってきた猛者でもある。
「馬鹿どもめ、敵の前で作戦を立てるとはな」
「いくぞ!!」
少女と剣士が同時に駆け出し、次の瞬間、剣士の視界から少女の姿が一瞬で消えた。それと同時に床からカエルが潰れたような声があがる。
「ふぎゅッ!!?」
こけた、それはもう盛大に少女はこけた。纏っていた長い黒のマントの裾を踏みつけてしまったのだろう。
「い、今だーッ!やれぇ!!」
「はにゃッ、ちょ、待っ」
地面にぶつけて赤くなった鼻を押さえながら慌てる少女だが、男達は止まらずあっという間に少女は剣で串刺しにされ、だめ押しとばかりに魔法使いの放った火の玉でこんがりと焼かれてしまった。
男達は少女が完全に死んだのを確認すると歓声をあげ、意気揚々と洞窟の奥に設置されている宝箱から財宝を取り出しその場から去っていった。
ここは辺境の辺境に位置するダンジョンの一つ、先程なんとも情けない負け方をした少女吸血鬼がボスを務めるアンデッドダンジョンなのである。