交渉
つまり俺とアリシアの手柄を横取りしようというわけだ。というか、ある程度の冒険者はもちろん市民だって俺らがオークキングを倒した事を知ってる。
いくら金で実績を買った所で市民には響かないというか、嘘だって分かるだろう。
あぁ、ただ見栄を張りたいだけなのか?別に平民の評価なんてどうでも良くて、同じ貴族と張り合うために功績が欲しいとかか?
「なるほど、もう1つの提案と言うのは?」
「うむ、そこの女。私の妾になるが良い!どうだ、嬉しくて涙が出そうだろ!この私!スクワー伯爵の妾になれるのだから!」
なるほど、アリシアの美しさに目が眩んだわけか。さっきから、ずっとやらしい目線を向けてるもんな。
まぁ、アリシアの美しさに目が眩んだのは俺も同じだけど。
「つまり、オークキングを倒した功績とアリシアが欲しいというわけですね」
「うむ!」
っていうか、さっきから自信満々に話すたびに首が揺れて贅肉が凄い事になってるな。
それにしても、何でその要求が通ると思うんだ。領主という立場を利用して今までも好き勝手にして来たんだろうな。
「一応聞くけどアリシアはどうしたい?」
「この人の妾なんて嫌よ、お断りさせて貰うわ」
「なに!この私の妾を断るだって!!」
いや、何でそんな自信満々なんだよ。あれか、今まで権利を笠に押し通してきたし行けると思ったのか。
「あと、ついでに功績の話もお断りで!」
「何!そんな事が許されると思っているのか!ここにきた時点でお前たちは私に逆らう事が出来ないのだ」
おー、典型的な悪徳貴族って感じのセリフだな。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいよ。実は人間じゃ無くてブタなのがバレちゃいますよ」
なるべく優しく言って上げたが伯爵は余計に顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。
「貴様!平民風情がこの私スクワー伯爵を馬鹿にすると言うのか!この無礼者が!!」
ハァー、何をそんなに怒ってるのか、もしかして更年期なのかな?この見た目で30歳って聞いてたけど。それとも明らかな太り過ぎが原因とか。
「うるせいな!少し黙れブタ!」
「な……」
五月蝿い伯爵に少しドスの効いた声で喋ったら黙ってくれた。
「俺からも伯爵に提案があるんですよ?聞いてもらえますか?」
「何だね?」
「俺と決闘をしませんか?貴方がオークキングを倒した俺を民衆の前で殺せば強い事が証明出来て、さらにアリシアも手に入るかも知れませんよ」
まぁ、かもっだけでアリシアは断るだろうし。そもそも、俺は負けるつもりは微塵も無いけど。
「もちろん、貴方だけじゃ無くて自慢の騎士達を使っても良いですよ?貴方が騎士達の指揮を執ればより力を示せますし」
「うむ……」
奴は悩んでるな。まぁ、急に話を振られて頭が追いついてないのだろう。脳みそでは無くてお腹に栄養が言ってそうだもんね。
そんな悩める伯爵を後押しして上げよう。
「もしかして、貴族なのに平民に負けるのが怖くビビってるんですか?所詮はブタですね!」
そうやってちょっと煽ってやれば、直ぐにあの馬鹿は反応してきた。
「何だと!この平民風情が!この私を馬鹿にする事は絶対に許さないぞ!良いだろう貴様と決闘してやる!大勢の群衆の前で貴様を殺してやる!!」




