表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「どうだ、明るくなったろう」成金おじさん、紙幣を使って燃やして、異世界でゴージャスに人助けしたり無双する  作者: エタメタノール


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

第23話 どうだ、最後の戦いだろう

 成金の持つ燃える紙幣――

 闇金の持つ凍てついた紙幣――


 成金と闇金の大富豪対決はついに最終局面を迎えた。


 成金の手にある紙幣は大きく燃え上がり、巨大な火炎となった。


「どうだ、燃え上がるだろう!」


 その火炎を闇金めがけ叩き込む。

 だが、闇金は凍てつく紙幣一枚でなんなくガードする。


「そんな紙幣、私の火力ですぐに溶けるだろう」


「そうかな?」


 いくら燃やしても、闇金の紙幣は凍てついたままだ。


「な、なんでだろう……?」


「しょせん金で世の中を明るくすることなどできないということだ!」


 闇金の紙幣による一閃。

 成金の肩に大きな傷ができた。


「ぐあああああっ! ……だろう!」


 さらに連続斬り。成金の体に傷が増えていく。


「なんて切れ味だろう……!」


「当然だ。紙幣は凍らせると強度が大幅に増す。すなわち切れ味もなァ!」


 横に薙ぐ一閃。成金の額に一文字の傷ができる。


「あぐぅ……! ……だ、だろう」


 闇金は邪悪に笑うと、


「もちろん斬撃だけではない。打撃もこの通り!」


 紙幣による殴打を喰らわす。

 成金の太った体が大きく吹っ飛んだ。


「が、がはっ! ……だろう」


 闇金が迫る。

 成金も紙幣を次々に取り出し、札束ビンタ、札束スラッシュ、さらに吹き矢もお見舞いするが、凍てつく紙幣のガードを貫通することはできない。

 凍てつく紙幣は攻守ともに完璧だった。寒さが苦手な成金との相性も最悪である。


 同時に繰り広げられているソフィアらとならず者たちの戦いはソフィアらが優勢だった。

 だが彼女らも成金の劣勢に焦る。


「信じられませんわ、成金が……!」とソフィア。


「あの男、なんという強さじゃ……」


「我々の掌底も、あの凍った紙幣には通用しないかもしれませんね」


 ルド・ギルダー師弟も闇金の強さに戦慄している。


「成金さん……!」


 ダイムは不安そうにつぶやく。


 闇金の札束張り手が炸裂する。


「ぶはぁっ! だろう!」


 大の字に横たわる成金。


「ククク、まるで相手にならんな。金で人を幸せにするなどとほざく奴の力などこの程度のものだ。これで証明された! やはり金ってのは明るくするためじゃなく、この世を闇に閉ざすためのものだってことが!」


 闇金は凍てつく紙幣を闇夜に向けて、天高く掲げる。


「闇に閉ざしてやるよォ、成金!」


 その時だった。


「成金さん!」


「こ、この声は……なんだろう」


 町の人々の声だった。

 町長を始め、ウェイトレスのシンシア、パン屋のメイリ、今やすっかり歩けるようになったトーマス、成金の銭湯仲間たち。他にも大勢の町民がいる。

 ローザが呼んだわけではない。成金宅で何か起きていると皆が自発的に駆けつけていた。


「成金さん、しっかり!」

「成金さーん!」

「負けないでくれ、成金さん!」


 声援を受けると成金の体に力が戻る。


「み、みんな……」


 ソフィアが高笑いする。


「オーッホッホ! ここにいる皆さんは成金のお金で救われた人達ですわ! この私も含めてね!」


 この言葉に闇金が顔をしかめる。


「金で救われた……だと? 下らん! そんなものは……戯言だ!」


 町民は口々に成金への感謝を口にする。


「泥棒を退治してくれてありがとうございます!」とシンシア。


「おかげでパン屋はとっても繁盛してます!」とメイリ。


「成金さんの紙幣で、僕は立てるようになったんだ!」足を動かすトーマス。


「銭湯を温めてくれてありがとうよ!」銭湯仲間も感謝を述べる。


 成金は立ち上がった。


「そうだろう……お金は人々を明るくできるだろう」


 全身を切り刻まれているのに力強く立ち上がった成金に、闇金は驚愕する。


「なぜ立てる!? なぜ……!?」


 闇金は成金の目つきを見てハッとする。その瞳に宿る熱気に気づいた。


「こいつ……心が燃えている!?」


「どうだ、熱くなったろう」


 成金が紙幣を取り出し、火をつける。

 これまでとは比べ物にならない大きさの炎が出来上がった。


「ほざけ! 俺の凍てついた紙幣は無敵……!」


 闇金が手にある紙幣を見ると、なんと氷が溶け始めていた。


「と、溶けている……!?」


「今こそ決着をつけるだろう」


 成金は自分の全身に紙幣を張りつけ、燃え上がった。


「熱くないのか……!?」


「熱くないだろう。なぜなら私自身が炎より燃えているからだろう!」


 成金は走り出した。

 太った体が丸ごと炎の塊となる。これこそが成金最大の奥義。


「おのれええええ!!!」


 闇金も紙幣を構える。多少溶けたとはいえ、凍てついた紙幣はまだ健在だ。


 成金は闇金に叫んだ。


「どうだ、明るくなれッ!!!」


 成金と闇金――二人の大富豪が激突する。


 明と暗。

 光と闇。

 炎と氷。

 幸と不幸。

 

 共に金を稼ぐ才に恵まれ、あまりにも似ていて、あまりにも対照的な二人の最後の激突。


 マルカの町中に轟音が響く。

 成金と闇金の姿は激しい砂埃に覆われた。


「どっちが勝ったんですの!?」ソフィアが叫ぶ。


「あ、あれは……!」ダイムが煙の中に人影を発見する。


「旦那様……!」ローザが嬉しそうに微笑む。


 立っていたのは成金だった。

 闇金は彼の足元であちこちに焦げができた姿で倒れている。凍てつく紙幣も完全に燃え尽きていた。


 町民たちの称賛を浴びながら、成金はいつも通りの笑顔でこう宣言した。


「どうだ、私の勝ちだろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 成金さんが寒さに弱いとか、今まで助けたメンバーとかが伏線なのはアツイ!!
[良い点] か、勝ったーーッ\(^o^)/ [一言] 成金さんがピンチの時に「頑張って!」って叫んじゃいましたよ。 お姉ちゃんが。 「何を?」 だって。 「い、いや成金が、闇金がね、えっと...その」…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ