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「どうだ、明るくなったろう」成金おじさん、紙幣を使って燃やして、異世界でゴージャスに人助けしたり無双する  作者: エタメタノール


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第21話 どうだ、1vs100だろう

 月明かりのほとんどない夜だった。

 闇に紛れて何かをするにはうってつけの夜。襲撃などは特に向いているだろう。


 マルカの町を屈強な集団が歩いていた。たった一人の男を殺すためだけに。

 狙いは――ナリウス・キングマネー。通称“成金”。


 まもなく男たちは成金の邸宅にたどり着いた。


「家に明かりは……ついてねえな」


「眠ってるのか? だったら押し込んで殺っちまうか」


「いや、家に火をつけた方が……」


 ――その時だった。


 屋根の上に煌々とした明かりが灯る。


「な、なんだ……!?」


 悪党たちが見上げると、屋根の上に一人の男が立っていた。

 成金である。


「どうだ、明るくなったろう」


 成金が紙幣を燃やすことで、邸宅周辺は昼間のような明るさとなった。


 成金はそのまま屋根から地上に飛び降りる。着地時に「おっとっとだろう」となったのはご愛敬。


「君たちはヤミノフ……“闇金”の手の者だろう」


「ああ、そうさ! あの人はてめえに恨みがあるらしくて、俺らを雇ったのさ! てめえを殺れば、報酬はがっぽり! ついでにこの町での略奪も楽しめるって寸法よ!」


 下卑た笑い声を響かせるならず者集団。


 成金が敗北すれば、マルカの町にも被害が及ぶ。

 さらに、成金は近くにかつての友がいることも感じ取っていた。目の前の集団を倒せなければ話は始まらない。


「およそ100人といったところだろう。来るだろう」


 敵戦力を把握し、成金が構えた。右手には札束、左手にはよく研がれた紙幣。お金の二刀流。


「札束ビンタだろう」


 手首のスナップをきかせた強烈なビンタ。


「ぶげあっ!」悪党が吹き飛ぶ。


「紙幣スラッシュだろう」


 鋭い紙幣による斬撃。


「いぎゃあっ!」悪党が倒れる。


 瞬く間に5人、10人と倒してしまった。

 このままいけば数分で100人倒し切ってしまうが――


 成金の札束ビンタが防がれる。


「硬いだろう!?」


「ぐへへ……この超合金の甲冑にんなもん効かねえよぉ!」


 剣を振り下ろす甲冑男。成金もひらりとかわす。


 横合いから凄まじい速度で迫る男があった。


「むんっ!」


 常識外れの筋肉を身につけた男だった。筋肉男は速射砲のようにパンチを連打する。


「俺は闇金さんのおかげで、速筋と遅筋を兼ね備えた筋肉を手に入れたのさぁ!」


 さらには放火犯も使っていた火炎放射器を装備した男。

 投げやすいように改良されたナイフを持つナイフ男までいる。


「なるほど……ただのならず者たちではないだろう」


 ただのゴロツキ集団ならば、成金の敵ではない。

 しかし、この100人は闇金の手で最新装備を身につけ、ドーピングを施された者達である。

 一人一人が高い実力を誇る。もはや精鋭軍団といってもいい。


 それでも成金は紙幣を華麗に操り、100人相手に見事な攻防を見せる。


「ビンタだろうッ!」


「ぐえあっ!」


 何十人目かのならず者をノックダウン。


 だが――


「いてて……」

「くっ……!」

「この服すげえな……着てるだけで傷が癒えていく」


 一度成金にKOされた者達が立ち上がってくる。

 筋肉を強化したり、強い武器を持っているだけでなく、負傷を癒やす効果もある服も身につけていた。

 この事態は想定していなかった成金は眉をひそめる。


「まずいだろう……」


 ならず者たちが襲いかかってくる。

 強化された拳で殴ったり、剣で斬ったり、ナイフを投げたり、炎を噴射したり。

 成金が徐々に追い詰められていく。


「見通しが甘かったろう……!」


 次は闇金自ら来ることも、集団を雇うことも想定内だった。

 しかし、闇金がここまで入念に準備しているとは思わなかった。

 全力で戦えば100人を全滅させることもできる。

 ただしその場合成金にも体力は残っておらず、闇金と絶望的な戦いを強いられることになる。


 成金の中に生じた心の弱みを、敵は突いてくる。


「この靴すげえな! 俺の足がさらに速くなる!」


 俊足の男が成金の背後に回り込んでいた。強烈な蹴りをお見舞いされる。


「もらった!」


 筋肉男の拳。体勢が崩れていたのでまともに喰らってしまう。


「ぐああああっ……だろう!」成金が地面に転がる。


 ナイフ男と甲冑男が同時に迫ってきた。


「切り刻んでやるぜ、おっさん!」


「この鎧は無敵だぁ!」


 ――成金危うし!


 だが、二人の攻撃が成金を襲うことはなかった。


 なぜなら――ナイフ男の眉間にはコインが命中しており、甲冑男は大きく吹っ飛ばされた。


「ぐああああっ……!」悲鳴を上げてナイフ男が昏倒する。


「な、なぜだ……超合金の甲冑を着てるのに……!」甲冑男も苦しんでいる。


 成金の耳に馴染みのある声が聞こえてきた。


「だらしがない……こんなザコどもに何を手こずってるの、成金!」


「この声は……ソフィア君だろう……!」


 ナイフ男を倒したのはコイン飛ばしの名手、ソフィアだった。


 甲冑男を倒したのは――


「師匠に教わった掌底には、どんな防具も無意味だ」


 闘技場王者を務めていたギルダーだった。顔つきが成金と戦った頃とは別人のように清々しくなっている。


「ワシもおるぞ」


 老師ルドもいた。

 筋肉男がルドに襲い掛かるが、これまた掌底で撃退される。


「ぐはぁ! なんだ、このジジイ……!」


「成金殿、ワシとギルダーはあなたに返し切れないほどの恩がある! 力を貸そう!」


 老いてなお獅子。闘技大会で準決勝まで勝ち進んだ腕前は伊達ではない。


「俺もいますよ!」


「ダイム君!」


 共にテロ組織と戦ったダイムも槍を握り、懸命に戦っている。


「みんな、どうしてここに来たんだろう?」


 成金は当然の疑問を口にする。これにはやはり、馴染みのある声が答える。


「私です」


「ローザ君、君だったろう!」


「はい。私が皆様に呼びかけたのです。旦那様の力になって欲しい、と」


「そうだったのかだろう……」


 成金は誰にも頼らず、一人で闇金と戦い抜くつもりでいた。しかし、その考えが彼を窮地に追い込んでしまった。

 成金は仲間のありがたみを思い知らされた。


「そうだ、私は一人ではなかっただろう。みんな、ありがとうだろう」

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― 新着の感想 ―
[良い点] ううっいいお話(涙) [一言] >「ぐああああっ……だろう!」 どんな時にも変わらないものってあるだろう。
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