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メイドの日



 挿絵(By みてみん)

「部長!! 五月十日はメイドの日らしいですね!!」



 ッターン!! と、勢いよく部室のドアを叩き開けた僕の第一声に、いつもの様に椅子に腰かけていた部長が、いつもの様に笑みを浮かべて口を開いた。 



 挿絵(By みてみん)

「うん、毎度のことながら唐突だね少年君、と言うか五月どころか七月なんだけどもね今?」


 挿絵(By みてみん)

「あれ? そうでしたっけ? 今年の春は夏と冬を交互にやってるなぁとか、そんな事を数日前に思ってた記憶あるんですけど?」


 挿絵(By みてみん)

「深く考えると土曜の夜六時時空になるからその辺にしとけー?」


 挿絵(By みてみん)

「ああ、毎年春になるとビルや巨大建築物が爆破されるあれだね、もはや劇場版の予告で華美な建物が出て来たらほぼ破壊されるけど、逆に何も起きないとそれはそれで物足りない感じがするのが不思議だよね」


 挿絵(By みてみん)

「まあルーチンっつーかお約束ってのは強いからな……」


 挿絵(By みてみん)

「お約束と言えばノア先生、今日は珍しく初手から部室に居るんですね! いつもなら三十分くらいトイレに籠ってからやって来ますけども」


 挿絵(By みてみん)

「便所籠りが私のルーチンみたく言うなっつーの!! 事実だけどよ!!」


 挿絵(By みてみん)

「自覚あるようで何よりだけど、どうせ担当授業無くて暇だったから此処でサボって居たんじゃないかね? 私より先に来ていたし」


 挿絵(By みてみん)

「……いや、実は午後に寮の食堂で届いた荷物の仕分けしてたんだけどよ、ちょっとシアの尻にムラっと来ておっぱじめたら、冷食融かしかけて超怒られてな、絶賛逃亡中」


 挿絵(By みてみん)

「ちょっと最低過ぎませんかねこの教育者!?」


 挿絵(By みてみん)

「と言うか怒られるのは食堂でエロ行為に走った事じゃ無くて冷食融かしたことなのかね?」


 挿絵(By みてみん)

「あー、まあほら、刺激が欲しい時ってあんだろ?」


 挿絵(By みてみん)

「高校生に何言ってんですかねこの倫理観皆無教師は?」


 

 と、不意に部室の扉がノックされ、少しの間を置いてから声が響いた。



 挿絵(By みてみん)

「ちょっとごめんなさいね、――うちの馬鹿ネコ来てないかしら?」

 


 聞こえた声に、僕と部長が視線を向けると、その先ではボトルコーヒーを胸に挟んだ女教師が窓枠に手を掛けて身を乗り出していたので、その襟首をつかんで引きずりながら、



 挿絵(By みてみん)

「――じゃあ部長、僕ちょっとノア先生をシアさんに引き渡してきますね!!」


 挿絵(By みてみん)

「あー、ならそのまま寮まで連行するのを手伝って上げるといい、多分面白い物がみれるから」


 挿絵(By みてみん)

「おい待てお前等!! 顧問に対してもうちょっと慈悲をだな!?」


 挿絵(By みてみん)

「残念ですけどそんなものはサイバーパンク忍者小説の主人公バリに無いですね」


 挿絵(By みてみん)

「ザッケンナコラー!!」


 

 意外とノリがいい下手人の戯言は当然無視するとして、片手にノア先生を引きずったまま扉を開ける、と、



 挿絵(By みてみん)

「あら出雲君ありがとう、ふふ、さあて、そっちのネコにはどんな躾をしてあげようかしら……ね?」


 挿絵(By みてみん)

「ひぁぁ……!!」


 

 何かこの時点で大分面白いんですけど、え、まだこの先があるんですかね?




  ●



 挿絵(By みてみん)

「いやー面白かった。まさかノア先生を炎天下の室外に縛り付けた上で、冷房効いた室内でアイス食べてる姿を見せ続けるとは」



 しかもパーティー用のデカイやつを器に盛りつけて、チョコスプレーやフルーツやらをトッピングした豪華仕様だ。僕は部長が居ないのに自分だけアイス食べるのは気が引けたから横で麦茶啜ってたけど、こっちを恨めしそうに見つめるノア先生を見ながら一気飲みするのは超気分良かったですよね!!


 

 とまあ、まだノア先生のお仕置きタイムは続いてるんだけど、それよりも部長と過ごす時間が大切な訳で、軽くダッシュで戻って来た自分は、一度そこのトイレで顔を洗ってリフレッシュ、汗が引くのを待ってから部室の扉に手を掛けて、



 挿絵(By みてみん)

「戻りました――――!!」



 ――――と、



 挿絵(By みてみん)

「おかえりなさいませ、ご主人様」


 挿絵(By みてみん)



 天使が居た。


 いや天使じゃない、メイドだ。だけど部長のメイド服姿とか、もう天使を超えて女神だろう。なんだか女神って呼び方に凄いしっくりくるけど理由は不明、でもまあそんな事は関係ないわけで、



 挿絵(By みてみん)

「最高―――――――――!!」



 部室の中へと飛びこみながら、僕はスライディング土下座で部長の前へと滑り込んだ。



 挿絵(By みてみん)

「ありがとうございます! ありがとうございます!! クラシカルな黒ロングスメイド服が作り出すシックな雰囲気に、肩から胸を包んで腰で絞られた白のエプロンが作り出すボディラインの美しさ!! スカートの下から覗くパニエは全体のシルエットをふわりとボリューミーに演出し、髪を束ねるのは昨今流行りのカチューシャでは無くメイドキャップ!! どちらが良いかと言う訳ではなく、ただ今部長が来ている物こそが僕にとっての最新の最高です!!」


 挿絵(By みてみん)

「ふふふ、ご好評なようで何よりだよ少年君。さっき君がメイドの日とか話してただろう? それでふと去年演劇部の手伝いをした時にメイド服が合ったのを思い出してね、少し借りて来たのだよ」


 挿絵(By みてみん)

「ええ!? と言う事は僕は部長のメイド服姿を見逃していたと言う事ですか!? く、くそ! なんで僕はもう一年早く部長に出会って居なかったんだ!!」


 挿絵(By みてみん)

「ふふ、安心したまえよ少年君。その時は文芸部として脚本の添削を頼まれただけだからね、こうして着るのも、見せるのも、君が初めてだとも」



 つまり、と、衣擦れの音と共に部長の声が近づいて、土下座姿勢で額を床へと擦り付けて居る僕の頬へと手が触れる。


 サテン生地の滑らかな感触の向こう、微かに感じる部長の手の温もりは、夏の暑さか、それとも僅かな恥ずかしさか、何時もより少し熱く感じながら、促されるままに僕は顔を上げ、



 挿絵(By みてみん)

「君が、私が初めて仕える主だと言う事だよ、ご主人様?」



 恥ずかしそうに微笑みながらのその台詞は破壊力が高すぎると言うか、背後に射し込む夏の日差しも相まって、さっきも思ったその感情を、僕は言の葉にして声に出す。


 

 挿絵(By みてみん)

「部長、綺麗です。――まるで女神様みたいだと、そう思うくらいに」


 挿絵(By みてみん)

「――――もう、お上手だね、私のご主人様は」


 

 そのまま部長の顔が近づいて、その唇が僕の唇にそっと重なり、離れて、



 挿絵(By みてみん)

「……うん、体勢的に凄く不思議な光景になってるよね、これ」


 挿絵(By みてみん)

「状況としてはペットの犬と飼い主みたいですよね!!」


 挿絵(By みてみん)

「主従関係逆転してるけど、まあつまりは私と少年君は【恋人】として対等だと、そういう事だね?」


 

 いやまあ、僕にとっては部長は先輩で、常に上の存在ではあるのだけど、



 挿絵(By みてみん)

「対等な部分も、そうじゃない部分も、色々さがして、楽しんでいけたら、素敵ですよね!!」



 取り合えずその後は部長の提案で、ちょっと従者的な感じで膝枕とか耳掃除とかご奉仕(健全)されたんだけど、脳味噌溶けるかと思いました。幸せ過ぎて

 


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