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第十六話 我らの神に祈りを捧げよ(3/完)

『見覚えはあるだろう?思い出したかい?君達が信仰していた神。それは僕さ。ああ安心してくれ。他にドミネアという神は居ない。君達が信仰していた神が偽りだと言えばその通りだが、ドミネアという存在は間違いなく僕の事を指しているのさ。』


 魔王の嫌味たらしいねたつくような声が大地に轟き、それを聞いた騎士達が剣を落として愕然としている。


 無理もない。


 信じていた神自身が、自分達を苦しめる魔王だったのだ。


 魔王に剣を向けるのは、神に剣を向けるのと同じ、という事になってしまう。


 オレにゃそーいう感情はあまり分からない。元々神なんて信じてないし、知ってる神と言えばここにいる屑だ。これを見た後だとどうにも剣を向けても別に気にするもんじゃないだろうと言いたくなる。


「何その目は。」


 ストレアが嫌そうに言った。


「別に。」


 適当にあしらった。


 ともかく。神がなんだというのだ。今皆の生命を蹂躙しているのはその神様なのだ。自分達の命を、自分達の生活を守るためには、神だろうがなんだろうが捻じ伏せていかないとならないだろう。


 ……なんか乱暴な発想になっている気がする。ストレアに感化されたのか、それともオレの本質がそういうもんなのか。どうなんだろうな。


 分からないが、とにかく今は次の行動を考えなければならない。


 が、それを邪魔する言葉が魔王から放たれた。


『ヒ、ヒヒヒ。キミ達の顔、本当に見てみたいものだねぇ。今ここに居る連中は絶望に満ち溢れているけれどさ。さてさて。それではドミネア教の神としてキミ達に命じよう。安心したまえ。私は慈悲深い神だ。キミ達の信仰の厚さは知っている。それに背く事を言うつもりはないよ。』


 実に白々しい言葉である。


『ーーキミ達の命が惜しいのであれば、僕に祈りを捧げ続けたまえ。そして手向かう事はしない事。僕に従う事だ。そうすれば悪いようにはしない。キミ達の命は保証しよう。簡単だろう?今までのキミ達と大して変わらない。ヒヒ、ヒヒヒヒヒ。』


 そう言って魔王は人質の一人を連れてきた。騎士の一人だ。最後まで抵抗していたのか、鎧はボロボロに砕け、全身傷だらけだ。


『あー、もし手向かうようなら当然こうなる。』


 その言葉と同時に魔王は手を払った。人質の首がポトリと落ちた。血が吹き出し、神の像の顔が真っ赤に染まる。騎士達から悲鳴が上がった。


『それとこれを聞いているキミ達の中に勇者と、あとレイ?だっけか。ミアを追っている連中が居たら、忠告しておこう。キミ達が無理に行動を起こそうとするなら、僕は遠慮なく人々への攻撃を開始する。意味は分かるね?じっとしていたまえ。何もしない事もたまには重要だよ?ヒヒヒヒヒ、ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。』


 不気味な高笑いと共に魔王は通信を切った。空に浮かんだ神の像が消え、再び青空が戻ってきた。


 だが人々の顔は晴れないままである。


「あー、まぁそうなるわよねぇ。」


「オレ達を差し出せ!!みたいな話にならなかっただけマシか。」


「向こうだってわかってるのよ。そんな事をして、差し出されたところでロクな事にならないって。だって何したってアンタを拘束なんて出来ないでしょ。下手に動かれるよりは……」


「釘刺して動きを止めた方がマシ、と。そういう事か。」


 ストレアの言葉を遮りオレが続けると、彼女は首を縦に振った。


「向こうにはミアが居たのはアタシが確認した。という事は、アンタのバカステータスもバレてるってことよ。」


「お前が、モノホンの神が付いてるって事もな。だからこっちの行動を抑止するくらいがちょうどいい、と。」


「むー、よく分からないですぅ。」


「難しい話してますぅ。」


 ランとゴウが首を傾げた。


「要するに、お前らは何もするなって言われたのよ。さて、これからどうする?」


 ストレアが手を上げながら言った。


「言われたからはい何もしません、なんてわけにはいかねえだろ。放っておいたら何をするか分からん。」


「それには同感。でも、下手に動けば人質が殺されるのよ?」


「……そうだな。オレは嫌だ。お前は別にいいだろうけど。」


 ストレアがねちっこい笑みを浮かべた。


「勿論。アタシにとっちゃまぁどうでもいい命だから。どーしても必要なら生き返らせればいい。」


 すぐに彼女の顔が真顔になった。


「でもアンタはそれは望まない。でしょ?」


「当然。でも出来る事はあるはずだ。」


「出来る事、ねぇ。」


 ストレアは顎に手を当ててうーんと唸った。


「思いつかない。」


「まぁ、な。」


 それはオレもだ。


 今打てる手は少なく、動ける人間は更に限られる。



 インティとマルアスは元々村のしきたりに縛られていた分、ドミネア教を信じていたわけではない。そのため特に応えた様子は無い。どこ吹く風といったところだ。


 問題は彼らの指示に従う騎士達の側である。


「うーん、士気の低下が酷すぎる。ねーちゃん、これはマズいよ。」


「いくら引っ叩いても皆動きませんッ!!このまま攻められたら負けますッ!!」


 マルアスがその力で思い切り騎士の背中をドンドコ叩いているが、騎士は倒れるだけで立ち上がろうともしない。


「叩くな叩くな。」


 今はそっとしておくしか無い。


「……動けるのはオレ達くらいか。」



 考えながら周りを見渡すと、窓の外に壁の壊れた教会の隙間から、その中に置かれた銅像が視界に入った。


 銅像の顔は確かに魔王のそれと同じだった。


 同じように嫌味たらしい、気持ちの悪い笑みを浮かべているように見えた。

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