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第十話 記憶の断片(5/完)

 オレは今わかっている事を整理しようと試みた。


 今わかっている事はこうだーーー


・巫女の名前は『ミア・デュルーア』。これはジョセフのメモを元にしているので、どこまで信用出来るかは不明。

・オレ達と旅をしたのは自称『ミカ』。

・この二人が同じかどうかは、ーーー今となってはどこまで信用して良いかは分からないがーーー記憶喪失のため不明だが、少なくとも『ミカ/ミア』の魂が、一つの肉体を共有していたのは、確定と考えて良いと思われる。

・『ミカ』は『ミア』との分離を望んでいた。

・『ミカ』はジョセフと面識があり、『ミア』と分離するための技術(わざ)の開発をジョセフに依頼していた。

・『ミカ』は恐らくジョセフに分離先の肉体の材料として渡すつもりでトラップボックスを持っていた。


 ……このくらいだろうか。どれもこれも不確かな部分が残るが。特にトラップボックスの件については、そもそもその物自体を誰が作ったのか?という点については不明である。もしミカ或いはミアが作ったのだとすれば、それはこの為だけなのか。それとも他に目的があるのか。そこもはっきりしない。


「ああもう!!ややこしい!!」


 ストレアが記録を取りながら叫んだ。


「アタシは創造神であって探偵でも刑事でも無いのよ!?なんでこんなミステリーの謎解きみたいな事しなきゃならないのよ!!」


 オレは頭を抱えて答えた。


「仕方ねえだろ。オレだってこんな訳わかんない事に巻き込まれるとは思ってなかったよ。」


 元々世直しとバグのために旅に出たというのに。そちらも片っ端から何もかもぶん殴れば全部終わるくらいで考えていたのに、とんだ謎に付き合わされる羽目になったものである。


 いっそこんな巫女だのなんだのほったらかして他のバグを探すべきか?という考えが、一瞬脳裏をよぎった事を否定する事は出来ない。だがすぐに思い直した。かといってこれを捨ておくというのは、ーーーオレには到底良しとする事はできなかった。


 ドミネア教の巫女としての記憶を取り戻したのだとすれば、聞かなければならない事は山程ある。命の聖杯。トゥリニアにあったその亜種。トラップボックス。そもそもなんでドミネア教を興したのか。命をーーー人の命を、なんだと思っているのか。"あの"ミカが本当にそんな事をしたのか。或いはミアの方なのか。オレは、ただただモヤモヤするこの疑問だらけの状況をスッキリさせたいと思った。


 何よりーーー少しの間だが旅をした仲間であるミカを、彼女のために技術(わざ)を残したジョセフの意志を、オレには出来なかった。


 オレはジョセフが残した技術(わざ)の紙に改めて目を通した。理解出来た。オレにも使える。準備さえ整えば、だが。つまりコピーの肉体を作る為の材料ーーー魔物でも何でもいい、命あるものが必要となる。難易度としては低い。倫理的な難易度は高いが。


 それ以外に資料がないか探してみたが、無かった。


「……今ここで分かるのは、これくらいか。」


「次はどうしますぅ?」


 ランの質問にオレは答えた。


「セルドラールへ戻ろう。」


 トマ主教に話を聞いてみよう。マクア元主教の所にも何か手掛かりがあるかもしれない。彼女が巫女であるならば、巫女であったならば、何かしらの痕跡が残されている可能性もある。


「じゃあ行きましょー!!」


 ランが元気に手を上げた。


「いや、もう少し片付けてからだな。」


 オレは室内を眺めた。日記なり本なり食器なり、あらゆるものが転がっている。遺影も。


 これを片付けずに出掛けるのは、ジョセフに申し訳ない。


「そうですねぇ。パパパッとやりましょー。」


 ランはそう言いながらテキパキと手を動かし始めた。


「えー。めんどくさいわねぇ。神に雑用をやらせんじゃあないわよ。アタシはやら……仕方ないわねぇ。」


 ストレアがいつも通りやる気のなさそうな声を上げた。そう言いつつも手を動かしている。それはオレが手刀を構えたからでは無いと信じてやりたいところだが、まぁ絶対そのせいだろう。


 ……オレに同意してくれる、ミカの声は、無かった。


 急に少し寂しく感じた。一人減った、だけ、なんだが。

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