表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/312

第十四章 綿毛の案 2.迎撃

 小鳥たちからその存在を教えられて以来、空から攻撃してくる魔獣への対処法についても、【対魔獣戦術】の教範を参考に、一応の検討は済ませてある。

 ()()べて――空力的には飛行が困難なほどの――巨体であるそれらの魔獣は、飛行のためにほぼ例外無く風魔法を使用しており、攻撃や防御にも風魔法を使ってくる事が考えられた。従ってこの世界での対空戦とは、風魔法への対策から始まると言ってもよかった。



(風魔法で飛んでいる以上、その魔法を乱してやれば飛行は困難になる。不意を()いて風魔法で攪乱してやるつもりだったけど……一度に三羽というのはきついな。けど、一羽ずつやってると警戒されてしまうかもしれないし……同時に三羽やるしか無いのか……)



 三羽に連携されると面倒なので、仕掛けるなら早いうちだ。距離があるのが懸念材料だが、()(はや)そんな事を言ってられる状況ではない。連日の訓練で上がったMPだけを頼りに、今は力任せにやるしかない。

 (もっと)も、ここまで追い込まれた状況にあっても自分が平静でいられるのは、断固として生き残るという決意のせいだろう。


 ……そんな事を考えるともなく考えていたら、風魔法以外にもキャスティングボートを握る方法がある事に思い至る。今までにも何度か使った事のある手だが……



(……この距離で、しかも標的が複数というのは初めてだな……)



 しかし、(ちゅう)(ちょ)している(いとま)は無い――とばかりに、ユーリは先制の初手を放った。



「【集束光(ビーム)】!」



 光魔法によって生み出され指向性を与えられた強い光の束が、飛来する怪鳥(ルッカ)たちの眼を()いた。

 他のボール系、ランス系の攻撃魔法と違い、圧倒的に速いスピード――何しろ光速である――なので、俊敏快速を誇る怪鳥(ルッカ)といえども回避する事はできない。瞬時にして視界を奪われ混乱する怪鳥(ルッカ)たちに向けて、追い討ちの闇魔法が放たれる。



「【混乱(パターベイション)】」



 相手の心を掻き乱し、まともな判断力を奪う闇魔法。こちらの方は、どちらかと言えば大勢を相手に使うのが本来の使い方なので、怪鳥(ルッカ)三羽が対象でも問題無く発動した。駄目押しで風魔法を放ち飛行を妨害してやると、面白いように引っ掛かる。

 既に連携とか攻撃とかの段階ではなく、ただただ自分が墜落しないように必死の有様である。上下の定位すらまともにできていないようだ。



「さて……滅茶苦茶に動いている分だけ的には当てにくくなってるし……危害半径の大きな攻撃魔法しか使えないな。けど、下手に大規模な火魔法を撃って、羽毛が燃えると元も子も無いしなぁ……」



 寸刻思案していたが、やはり当初の予定どおりの方法しかあるまいと判断して、



「【水球(ウォーターボール)】」



 水魔法で三つの水球を生み出す。ただし、この水球は飛ばして衝撃を与えるためのものではない。それを(あら)わに示すように、この水球は……破格に大きかった。いずれも直径およそ二メートル。怪鳥(ルッカ)たちの頭部を覆って溺死させるには充分なサイズである。



「肺とか気嚢の中に直接水球を生み出せれば、もっと効率的なんだろうけど……今はそこまで狙いが定まらないからなぁ……大体、あの化け鳥の身体の構造も判ってないし、何よりああもジタバタ動き回られたんじゃ……」



 獲物――既に敵ではない――が三羽もいるのが大きいだろうが、水球を頭に被せておくだけでも一苦労である。


 しかしその苦労が功を奏して、間もなくユーリは大量のダウンを得る事に成功するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ