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第一章 始まりの場所 2.手紙

 ――初めて使う【収納】の中に、未開封の手紙が一通。


 状況からすれば、神様からの手紙としか思われない。

 一体何が書いてあるのかと怖々(こわごわ)手紙を読んでみたが、案に相違して内容は、(ゆう)()が置かれた状況の補足説明。気配りのできる神様らしく、(ゆう)()がこの世界で生きるに当たって知っておくべき内容を、事細かに記してあった。



(アフターケアが行き届いてるなぁ……)



 (ゆう)()は名も知らぬ神様に感謝した。うっかりとお名前を()くのを失念したが、宗派が判れば喜捨の一つもするべきだろう。

 さて、そのありがたい神様からのアドバイスは多々あったものの、重要な点を列挙すると以下のようになる。


・この世界はフォアという。これは国とか大陸の名称ではなく、いわば「地球」のように、この世界全体をさしていう名前である。


・転生者の利便を考えて、自分のステータスを閲覧できるユニークスキル【ステータスボード】を与えておいた。これは自分のステータスを表示させ、必要な場合には表示を偽装できるスキルである。フォア世界においては、たとえ自分のものであろうとステータス値を確認する場合は、鑑定スキルか鑑定の魔道具によるしかない。ギルドが発行するギルドカードにはこの機能が備わっているため、それだけを目当てにギルドに登録する者も多く、ギルドの収入源となっている。

 言い換えると、自力でステータスを――表示の偽装は無論――確認できるというのは極めて異例な能力なので、このスキルは表に出さず秘匿しておく事を勧める。


・一人でスローライフという(ゆう)()の望みに(かんが)みて、田舎暮らしに関する様々な経験を集約した、【田舎暮らし指南】という便利スキルを与えてある。一応これもユニークスキル扱いなので、秘匿しておく事を勧める。


・希望どおり【鑑定】のスキルを与えておいたが、これは対象物のステータス情報を読み取る、フォア世界では比較的(まれ)なスキルである。レベルが上がるにつれて読み取れる情報が多くなる。

 なお、(ゆう)()のような転生者の場合、【鑑定】で表示される情報に地球の知識が反映されるため、表示内容がこの世界の住人のそれより詳しくなる傾向がある。なので、これについても注意しておく事。

 また、【鑑定】のレベルを上げると、相手に気付かれずに鑑定できるようになるので、【鑑定】される危険を避けるためにも、平素からスキルを使ってレベルを上げておく事を勧める。


・希望どおりの場所に送っておいたが、農業できるだけの条件が揃っているのに(ひと)()が無いという背反条件を両立させるため、魔獣(モンスター)や野獣の跳梁(ちょうりょう)によって入植者が撤退した場所を選ばざるを得なかった。そこで、その場所で生きていくために最低限必要な能力を、追加で与えておいた。具体的には、(ゆう)()の身体機能を若干強化し最適化した上で、【火魔法】【風魔法】【木魔法】を追加で与えておいた。


・【生活魔法】というのがスキルにある筈だが、これはこのフォア世界の住人の多くが先天的に保有している魔法なので、心配する必要は無い。一般人の持つ程度の魔力でも行使できる、生活に便利な魔法群であり、着火(イグニッション)浄化(クリーン)点灯(ライト)施錠(ロック)解錠(アンロック)などからなる。簡単な魔法なので、他の魔法と違って習熟によるレベルアップは無い。


・【言語】スキルは、出会った相手の言語能力を解析し、意思疎通を可能にするスキルで、より多くの相手と出会うほど言語能力は高まっていく。このスキルに関しては、転生者の利便を(おもんぱか)って最初からスキルレベル最大(【言語(究)】)で与えてある。これは他の転生者にも共通な仕様なので、気にする必要は無い。

 だが、逆に言えば転生者以外では珍しいスキルなので、これも秘匿しておく事を勧める。


・【収納】は対象物を異空間に収納するスキルで、このスキルを持つ者はフォア世界では(まれ)である。収納空間の容積は、レベルの上昇につれて拡大する。収納された物品は、時間経過の影響を受けない。また、生物を生きたまま収納する事はできないが、オプションの「チルド設定」をオンにすると、生物の組織を仮死状態に保ったまま……要するに組織を死なない状態で収納する事ができる。これは、(ゆう)()が作物の種子や球根を【収納】内に保管する場合を考慮して、新たに追加したオプションである。


・【察知】は術者の周囲にいる生物などの動き、あるいは熱・生命力・魔力の流れなどを、周辺環境の変化として察知するパッシブスキルである。察知が有効な範囲および察知できる対象の大きさは、術者のレベルに依存する。これに関しては単に物理的なサイズだけではなく、保有する運動エネルギーの大きさも関わっており、小石程度の大きさであっても高速で飛来するものは察知できる。



 自分のスキルについての説明に目を通した(ゆう)()は、改めて自分のステータスを表示させてみようと試みた。心中で「ステータスボード」と念じたところ、眼前に半透明なウィンドウが出現する。説明によれば、このウィンドウは自分に見えるだけで、余人には見えていないというが……



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名前:ユーリ・サライ [去来笑(いさらい) 有理(ゆうり)

種族:人間(異世界人)

性別:男

年齢:七


魔 力:100

生命力: 80

筋力値: 30

防御値: 20

敏捷値: 15

器用値: 15

知力値: 30


スキル:【生活魔法】【言語(究)】【鑑定 (Lv5)】【収納 (Lv3)】【察知 (Lv5)】【隠身 (Lv5)】【水魔法 (Lv3)】【土魔法 (Lv3)】【光魔法 (Lv3)】【闇魔法 (Lv3)】【火魔法 (Lv1)】【風魔法 (Lv1)】【木魔法 (Lv1)】 


固有(ユニーク)スキル:【ステータスボード】【田舎暮らし指南】


加護:神々の期待


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「へぇ……本当に表示されるんだ……あ、七歳になってる」



 一気に三十年も若返った事に呆れ、そして(いささ)かのショックを受ける。



「若返り……って言うか、もう幼児退行だな、七歳まで遡ると」


(……体格とか体力とか、色々な感覚を修正する必要があるよね。(もっと)も、どうせステータスが変更になっているらしいから、一緒と言えば一緒か……)



 この時、(ゆう)()……いやユーリは、小さいが決定的なミスを犯した。


 行き届いた神の配慮が(かえ)って(あだ)となり、自分でスキルやステータスの事を調べる事をつい(おこた)ったのである。【ステータスボード】の画面の端に表示される「ヘルプ」さえ開いておけば済んだのだが……。

 それが後々面倒を引き起こす事など、この時の(ゆう)()は無論、神にすら予見できてはいなかったのである。


次話は約一時間後に公開の予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] まだ4話程度しか読んでないがもう既に他人におすすめ出来るぐらい面白さがある。 設定というか作り込みというか、主人公が神様から貰った能力が適当にこれを持っとけば強いだろ感がなく、必要に迫って…
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