第七章 草の葉 2.香辛料とハーブなど
虫除けと薬草探しに走り回っていたユーリであったが、その副産物という形で、薬草以外のお役立ち品も幾つか見つけていた。毒草の類はさて措くとしても……
「ハーブとかが思った以上に見つかったな」
ラノベなどでは、主人公が胡椒で大儲けする話が定番である。言い換えると、香辛料が知られていないという事であり、ここフォア世界でも香辛料は手に入らないものと諦めていたのだが……
「胡椒は無いけど、香草の類は結構あるわけか……昔の人はこういうので食事の味付けをしていたんだろうな」
考えてみれば、伝統的な和食にも胡椒などは使われていない。代わりに山椒や生姜、紫蘇、山葵や蓼などが多く使われてきた。
同様にユーリの住まう廃村の近くでも、それらと全く同じではないものの、望外に多くの香草類を見つける事ができていた。無論、それらの幾つかは村へ持ち帰って栽培するようにしている。神が厚意でくれた木魔法が大活躍である。
肉類の臭み消しに使われるものや、ハーブティーに使われるものなどを幾つか見つける事ができ、ありがたく利用しているのだが……
「……けど、魔獣の肉って、あんまり臭くないんだよなぁ……」
意外な事に、これまでユーリが入手した――全てユーリを襲って返り討ちに遭った――魔獣の肉は、驚くほど癖が無い。寧ろ濃厚な旨味を持ち、軽く塩を振って焼いただけで充分なものがほとんどであった。これは昆虫・節足動物系の魔獣でも同じである。……まぁ、考えてみればエビやカニの親類筋なわけだが。
ともあれ、歯応えや食味は全く異なるものの、美味いという一点においては、魔獣の味はいずれも共通していた。
なので折角のハーブ類も、今一つ活躍の場を与えられていない現状ではあるが、
「ま、そのうち魔獣以外の肉を得る事もあるだろうし、その時ハーブが無ければ困るかもしれないしね」
乾燥させるなり何なりして、携帯用の調味料を作る事もできるだろう。実際にユーリは生前にハーブ塩なる商品を見た事がある。
「それよりも、これって……」
色々なハーブが入手できた中に、一つ毛色の変わった……と言うか、思いがけないものがあった。
「ステビア……だよね。どう考えても」
《カウヘ:日当たりの良い場所に生える多年草。草丈は五十センチ~一メートル。夏から秋にかけて白い花を咲かせる。全草に高甘味成分を含むが、花後十月下旬から十一月上旬に最も濃度が高くなるので、この時期に採集すると良い》
生前は園芸に関心を抱いていたので、ハーブに関する本も幾つか読んだ事があり、それに載っていたステビアに、外見も説明もほぼ一致している。こういうのも収斂進化というのだろうか。だが、今はそんな事より、これを確保する事が重要だ。生えている数は多くないので、即座に持ち帰って栽培する事を決める。カロリーが高かろうと低かろうと、甘味の乏しいこの世界では重要な甘味料だ。
「気候的にサトウキビは当てにできないし、サトウカエデかテンサイでも探すしか無いと思ってたけど……ラッキーだったなぁ♪」