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第七十一章 マガムとの会見 4.談論風発(その2)

 魔石についての疑問が一応解消されたユーリが、次に質問したのは何かと言うと、



日保(ひも)ち? 土魔法で造った建造物のかね?」



 土魔法で造った建物や壁がどれだけ()つのか――という事であった。

 ユーリ自身が住んでいるのは木造家屋であるが、村を取り囲む壁はユーリが土魔法で造ったものである。耐久性については平素から注意してチェックしているが、何か情報があるなら知りたいではないか。しかし、マガムの返事はユーリが望んでいたものではなく……



「さぁて……恒久的な建築物を土魔法で造るなど、普通はしないからねぇ……」



 マガムも首を(ひね)っていたが、とりあえず〝しっかりと造ったものであれば、相応に(なが)()ちするのでは?〟と言う事しかできなかった。

 ユーリは少し失望したようだが、



「しかしユーリ君、何だってそんな事を訊くのかね?」



 マガムの関心は、ユーリが何故(なぜ)その事を知りたがったのか――という点に向いていた。

 その質問への回答として、〝村を囲む壁を土魔法で造っているから〟という返事を聞いたマガム、最初はふーんと聞き流しかけたが……



「……ちょっと待ってくれたまえ。……村全体を囲む壁を、君が独りで作ったのかね? 魔獣が侵入しないように? 土魔法で?」

「はい? そうですけど?」



 強力な魔獣の産地として名を馳せている塩辛山で、魔獣に突破されないような強固な壁を土魔法で、しかも村全体を囲むように造る……どれだけの労力・魔力と日数がかかるというのか。しかし……それをやり遂げていなければ、今のユーリはいなかったであろう。

 マガムは塩辛山の苛酷な環境を生き延びたユーリに感嘆したが、それと同時に、ユーリの魔力が莫大である事……否応無くそうならざるを得なかった事を確信した。



(……それだけ大きな魔力を持っていると、普通なら魔力の扱い方も力任せになり易いのだが……魔製石器のような生活必需品を作ったり、身近な事に魔法を使っていたせいで、細かな操作を憶えたのだろうか?)



 魔製石器の製作などで魔力の精密操作を身に着ける一方で、魔獣を相手に生き延びるために高威力の魔法が不可欠。そんな塩辛山の環境は……



「……これは案外と……魔術師にとっては理想的な訓練環境かもしれん……」



 ――などという事をボソリと(つぶや)いたものだから、傍で聞いていたファレンが(あお)()める事になった。「魔術師のための塩辛山ブートキャンプ」など、誰が参加したいものか。



「いや……さすがにそこまでの無茶をさせるつもりは無いぞ?」



 マガムの言葉を聞いてファレンの顔色は元に戻ったが、〝無茶〟という形容を聞いて、今度はユーリが憮然とした表情になる。

 大変なのは自覚しているが、〝無茶〟呼ばわりされる程の環境だろうか?


 〝気付いとらんのかい!〟――と突っ込みたげなファレンの様子はスルーである。



・・・・・・・・



 結果だけを見れば、ユーリとマガム、二人の魔法マニアの初会見は万事この調子で、案外と盛り上がったまま終わったのであった。



 ちなみに、魔法の基礎や常識というものに(うと)いユーリのために、後日マガムが魔術の参考書を譲渡する事を約束して、ユーリを喜ばせていた。

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