表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
177/312

第五十一章 殿様と私 1.準備

 ハンの宿場を出た翌日、ユーリたち一行はダレンセン、すなわちダーレン男爵領の領都に到着していた。ローレンセンに行くのなら寄り道になるが、今回は領主ダーレン男爵がユーリとの面会を希望しているのである。寄らないわけにはいかなかった。



「さすがに立派なお城ですね」



 ユーリはいたく感心の(てい)であるが、確かに田舎の男爵領には不釣り合いなほど重厚な城館であった。それというのもここダーレン男爵領は、魔獣の(ばっ)()する大山塊に接していると同時に、その大山塊の間を抜けて隣国ゴーラへ至る間道の抑えとして設けられた要衝なのだ。魔獣の氾濫や隣国の侵攻を阻み、()(こた)えるだけの防御力が要求される。

 なので優美だの豪華だのといった形容詞とはとことん無縁で、質実剛健にして武骨一辺倒な造りとなっている。正直、今の流行(はやり)にはそぐわないのであるが、前世が日本人であるユーリの認識では、城とは本来そういうものだ。なので無骨なダーレン城を見て、素直に深く感心していた。


 すっかり感心しているユーリにどうコメントすべきか判らなかったので、アドンたちは何も言わずに馬車を進めた。

 門衛の前に進み出て名を名告(なの)り、領主に呼び出されて来た旨を告げる。ややあって城から迎えの者が出て来て、一行を城内へと迎え入れた。



・・・・・・・・・・・・・・・・



「えぇ……? 皆さんは一緒じゃないんですか?」



 領主に会うのは自分とオーデル老人の二人だけ、他の者は控え室でお留守番と聞かされたユーリは、平生(へいぜい)に似ず気弱な声で抗議する。しかし、残念な事に……



「それはそうじゃよ、ユーリ君。領主様が会いたがっているのはユーリ君なのじゃからして。(わし)は未成年であるユーリ君の付き添いじゃろう」

「えぇと……アドンさんは……?」

「私はそもそもここの領民ではないよ。ローレンセンの住人だからね」

「あれ……そうでしたっけ……?」



 転生以来引き籠もり街道まっしぐらのユーリに、この国の地理など解る筈が無い。そもそも、昨年になって初めて塩辛山を下りたのだ。ユーリが知っている地名など、合わせても十指に足りぬだろう。

 ――という事を再認識して、領主との対面に不安を覚え始めるオーデル。ユーリの事情は手紙で報せておいたから、多少は大目に見てくれるだろうが……

 そこはかとない不安に(さいな)まれ始めたオーデルを尻目に、ユーリは救いを求めていく。



「だったらクドルさんたちは……」

「おぃおぃユーリ、しがない冒険者風情が領主様にお目通り願うなんて、無理に決まってるだろう」

「それ以前に、あたしたちはアドンさんの護衛だもの。雇い主の傍を離れるわけにはいかないわよ」



 ならばとドナに視線を巡らせるが、彼女は逃げる気満々で、



「頑張ってね、ユーリ君」



 ――という激励の言葉を笑みとともに送って寄越した。


 恨めしそうにドナを見ていると、部屋の扉が音もなく開き、



「ユーリ様、オーデル様、主人ダーレン男爵が会いたいと申しております」



 執事らしい老人が運命を告げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
この作者の作品は、阿呆なやつはでて来にくいからw
[一言] もう何から何まで搾取される未来しか見えない。
[一言] タイトルどおりならば、男爵が魔物素材を寄越せとか無理な要求を言ってきたら、主人公が実力(武力)で諦めさせるくらいな世間知らずぶりを発揮してもらいたいと期待しています。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ