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第三章 明日のために 2.住環境の改善のために(その2)

 部屋を高床化した時点で気が付いた。



「底上げした床の下にオンドル用の煙道を通せば、冬の暖房にも使えるよね」



 ――という発想の(もと)、ユーリは(かまど)に煙突を追加し、その煙を床下に導くように煙道を形成していく。排煙は家の外側に、煙突を後付けして対応する。部屋は土間のままの台所を含めて三部屋あるが、一人暮らしには広すぎる――ざっと目算してみたら、一部屋あたり三十畳近い広さがあった――ので、奥の一部屋は物置代わりにするつもりでいる。なのでこちらの床下にはオンドルは通さず、煙突は真ん中の部屋の外側に付けておく。排煙孔を上に開けると雨が降り込むし、外国での例のようにコウノトリか何かが巣を作る可能性もあるので、排煙孔は横向きに開口しておく。



「冬はこれでいいとしても……夏はこれだと暑くなるから、オンドルに通さずに煙を出すルートも必要だよね。……煙道は切り替えできるようにしておくか……」



 と、(かまど)の裏にも、サクッと同じような煙突を追加する。つくづく土魔法はありがたいものだ。農業以前に土木や建築に大活躍である。

 ――(もっと)も、ユーリと同じレベルで手早く増改築できる魔術師は、この国でもごく僅かしかいないのだが、そんな些事(さじ)などユーリの知った事ではない。



 煙突を造った時点で再び気が付いた。



「……この家って、最初は煙突無かったよね。排煙とか、どうしてたのかな?」



 (いぶか)しく思ったユーリであったが、天井を見るとすぐに納得がいった。採光用に天井に開けられた天窓、あれが煙出しを兼ねていたらしい。雨の時には天窓を閉じるため、煙は屋内に充満したようだが。



「……まぁ、昔の日本の民家も、囲炉裏(いろり)の煙は部屋の中に立ち(のぼ)って、(かや)()き屋根から出て行ったみたいだし……そう珍しくもないのかな」



 とりあえず、この家では煙は煙突から出るようにしておく。



「あとは……やっぱり風呂は不可欠だよね」



 ――と、食堂の外側に新たに後付けで四畳半ほどの浴室を増築する。これまた土魔法で、もう本当に手早くさっくりと。

 給水は水魔法、加熱は火魔法を想定しているので、給水設備も風呂の焚き口も無しであり、気を(つか)ったのは排水のみである。それも排水溝の部分を土魔法で暗渠(あんきょ)化しただけであるが。



「残りは照明器具とか燃料か……」



 こちらの方は、今すぐにどうこうできるものではない。……いや、どちらかと言えば、燃料確保より先に増改築が終わってしまった方がおかしいのだが。



「灯りは……現状だと(じゅう)()蝋燭(ろうそく)が現実的かなぁ。さっきイノシシを一頭狩ったばかりだし……」



 生活魔法の【点灯(ライト)】はあるが、いつも魔法頼みというのにも不安がある。魔法に()らない照明手段は必要だろう。となると、光源として現実的なのは炎である。屋内で(かがり)()など、火の粉が怖くて()けないから、蝋燭(ろうそく)か灯油を使った灯台――岬の灯台ではなく、油皿に灯心を立てて火を(とも)したもの――という事になる。油料植物を今から探すよりも、既に手元にある獣脂を利用するのが現実的だろう。



「燃料は……木を伐り出したり炭を焼く手間が惜しいし、運搬を考えないなら枯れ草か(まき)で充分か」



 炭があれば採暖用に火鉢という選択肢が増えるのだが、炭焼きの手間を考えるとモチベーションも低下する。どうせ村内や畑に生えた灌木や雑草は引き抜く必要があるのだ。それを燃料用に廻すのは定石だろう。



「そう言えば……村の周りは草原になってたけど……ひょっとして、あれも燃料採取の結果なのかな……?」



 手近な場所から薪炭材や木材を伐り出した結果、草原が形成・維持されたというのはありそうな話である。ここは先人の知恵に学ぶとしよう。

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オンドルとか韓国人?
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