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第四十三章 甲骨の人 2.根付

 ざっと見たところ、かなりの骨がポーションなどの原料になるようであった。出汁(だし)(もと)にすると言った時、アドンが悲鳴を上げるわけである。



「……元の魔獣の属性によって、薬理効果も変わってくるのか……。さすが異世界だよね……」



 ともあれ、薬の原料になるというなら、作ってみるのに(いな)やは無い。不測の事態に備えて、ポーションの(たぐい)はできる限り充実させておきたい。



「他に作れそうなものは……何だろう? ……あ、ボーンチャイナっていうのがあったっけ……」



 骨粉を土に混ぜて作った焼き物で、半透明乳白色、透光性のある焼き上がりが特徴だった筈。白磁用の土が手に入らなかったイギリスで、一種の代替技術として開発されたのが始まりだったとか。



「……面倒に巻き込まれそうな気がするし……そもそも焼き物用の(かま)なんて無いから没」



 面倒事には極力関わらないのがユーリのスタンスである。……必ずしも成功しているとは言い難いが。



「あとは……彫刻の素材かな。()(つけ)とか……(はん)()って、この国にもあったっけ?」



 ()(つけ)というのは江戸時代の装身具の一種で、印籠(いんろう)や煙草入れを腰に提げる際、端にこれを付けた紐を帯にくぐらせ、帯から外れないように滑り止めとしたものである。木や象牙・角・金属などで作ったものが多いが、勿論骨で作ったものもある。小型の工芸品として盛んに作られ、前世の日本でもコレクターが多かった。

 木彫りの経験も無いわけではない――先日仏師や人形師の称号を得たばかり――し、【錬金術(怪)】の【素材変形】で軟化させれば、フィギュアと同じようにスパチュラとかで成形できそうな気もする。手すさび程度に作ってみるのもいいだろう。



「……うん。使いどころとか無くても、趣味っていうのは大事だよね」



 ――元々は趣味全開で農業生活などを神に頼んだ結果、現在のような境遇になっているのだが、それはすっぱりと忘れたらしい。

 ともあれものは試しだとばかりに、手近な骨片をナイフで削り始める。やがてナイフを彫刻刀に替え、細かな部分は【素材変形】で軟化させてからスパチュラで成形していく。石粉粘土でフィギュアを作る時と同じ要領である。あまり【素材変形】を多用すると素材の(ふう)()いを損ねるので、それは最低限にとどめておく。



「おぉ……結構憶えてるもんだね……力加減とか……」



 デフォルメされたデザインのイノシシが、ひょっこりとユーリの指先から姿を現す。研磨剤代わりの【素材変形】でざらつきを取ると出来上がりである。

 腕が鈍っていない事で機嫌を良くしたユーリが、次々と干支の動物シリーズを作っていく。十二支全てが揃ったところで、【鑑定】をかけると……



「……何か……変な効果が付いてるな……?」



 加工前はただの骨だった筈が、加工後の()(つけ)には護符のような効果が付いている。しかも、その効果が一定していないのは……



「……あ、ひょっとして、素材の属性に応じて効果も変わるのか?」



 ユーリは魔法を使えても魔術師ではない。なのでこの手の知識にはとんと(うと)いのだが、それでも何となく素材の属性が関与しているらしい事は見当が付いた。ただし、なぜそんな効果が付いたのかという点は不明なのだが。

 ひょっとして――と、思って自分のステータスを確認したが、別段【付与術】などのスキルは解放されていなかった。代わりに【細工師】が増えていたが、そっちはもう半ば諦めの境地に至っている。農業を希望していた筈なのに、何でこの手のスキルばかり解放されるのか。



「……当分はこれもお蔵入りだよな。いや……ローレンセンで付与術師を紹介してもらえれば、付与術について教わる事もできるかな?」


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