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第四十三章 甲骨の人 1.骨さまざま

 自動小銃の試射で得たリグベアーを解体中、骨を見てふと思い出したのは、エンド村でのアドンや「幸運の足音」たちとの会話であった。ギャンビットグリズリーの骨に随分とご執心のようであったが……



「そう言えば……骨って結構貯まってたっけ」



 何しろユーリにとって、骨など出汁(だし)の原料という認識でしかなかった。出汁(だし)ガラは骨粉にして畑に撒いているが、使いどころは精々それくらいである。手の込んだ出汁(だし)を取る機会はそれほど多くないので、使わずにおいてある骨は結構な量が貯まっている――と言うか、溜まって(・・・・)いる。【収納】に仕舞っておけば品質は低下しないので、何も考えずに放り込んでいるせいもある。



「何しろ石器の方が優秀だったからなぁ。最初の頃少し試しただけで、その後は全然目もくれなかったんだよなぁ……」



 しかし、骨が素材として使えるというなら、これは認識を改めた方が良いかもしれない。とりあえずは貯まっている骨とかを【鑑定】してみるか……


 そう思って【収納】してある骨やら爪やらをチェックしてみたら、思っていた以上の量になっていた。……それはもう、軽くドン引きするくらいに。



「……もっとこまめにチェックしておくべきだったよなぁ……何だ、これ?」



 妙なものがあったので、取り出して【鑑定】してみたところ、


《スケイルボアの皮:鱗は体毛が変じたもので、防具などの素材として使われる》


 ……そう言えば――と、狩った時の事を思い出すユーリ。鱗の生えたイノシシみたいなのが突っ込んで来たので、イノシシ相手の(じょう)(せき)になりつつある落とし穴と溺殺(できさつ)のコンボで仕留めたんだった。鱗のせいで毛皮が剥ぎにくく、毛皮としても使えそうにないから放って置いたのだが……



「防具ねぇ……作った方が良いのかな……」



 【田舎暮らし指南】師匠に頼れば革細工くらいできるかもしれないが、この素材はどう見ても普通の毛皮ではない。初心者には敷居が高すぎるし、専門家に任せた方が良いような気がする。



「……まぁいいや。後で考えよう。他には……」



 取り出した骨を片っ端から鑑定していると、



「あ、これって、ティランボットの上腕骨だ。……え?」



《ティランボットの骨:脱灰して加工してやれば、弾力性に富んだ素材が得られる。脱灰の程度によって、素材としての性質も変化する》


 弾力性に富んだ素材とはどんなものか――と考えていたところで、骨を酢に漬けてカルシウムを抜くと、軟らかくなって曲げたり結んだりできるという実験の事を思い出す。それと同時に思い出したのは、骨ではなくて鯨のヒゲでゼンマイを作ったという話であった。ティランボットの骨にそういう性質があるのなら、今はともかく先々で利用する事もあるかもしれない。



「……とりあえず、出汁(だし)(もと)にはしないでおくか……」



 続いてユーリが取り出したのは、怪鳥ルッカの骨であった。



「……随分軽いな。一応鳥だから、空を飛べるように軽量化が進んでるのかな?」



 【鑑定】先生によると、ルッカの骨は軽くて丈夫な上に風属性を持つので、様々な用途に使われるらしい。ただし現在のユーリには、軽くて風属性を持つ骨の使いどころが思い付かない。しばし首を捻っていたが、これも当面は死蔵が決定する。アドンに頼めば引取先ぐらい見つけてくれるかもしれないが……



「羽毛をよこせなんて言われても面倒だしね」



 羽布団の材料となるルッカの羽毛。それを渡すつもりなど、ユーリには無かった。


 ルッカの骨を一纏(ひとまと)めにして仕舞い込もうとしたところで、ユーリはそれに気付く。



「あれ? これってルッカの足か? けど、この形って、まるで……」



 鉤爪が付いた指を広げた形のままで出てきたルッカの足を見ているうちに、ユーリは忍者の鉤縄や飛爪を思い出していた。ただし忍者の鉤縄に使うには、少々どころでなく大き過ぎる――何しろ人間など軽く運べる巨鳥の足である――のだが、試しに【鑑定】してみたところ、実際にそういう用途に使われる事もあるらしい。



「……一応、これは別に分けておこう。他は……」

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― 新着の感想 ―
[一言] 有吉佐和子先生の作品とは、かなり趣が異なりますね。。。
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