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第三十四章 ユーリ村改修計画 8.硝子戸の中~窓ガラス~

「さて……窓の形式は決まったから、今度は窓ガラスを作るとするか」



 現在の窓枠を少し木魔法で整形・補強した上で、新たに同サイズの窓枠を作ってみる。あとは、これに合うサイズの板ガラスを作ればいい訳だ。

 この世界での板ガラスをどうやって作っているのかは知らない――かつてのヨーロッパでなされていたように、吹いて作ったガラスの両端を切り取って筒状にし、それを切り開く事で長方形の板ガラスを作っているのか、鋳型に融かしたガラスを流し込んでいるのか、それとも……ユーリがやろうとしているように、錬金術や土魔法を使って作製しているのか。



「ガラス作り自体は、錬金術の教本とブンザ師匠――いつのまにかユーリの心の中では師匠扱いになっている――の遺したメモを参考にしてできたんだけど……師匠、板ガラスまでは作ってなかったみたいなんだよね……」



 この世界、ガラス器はそれなりに高価であるらしく、ブンザが作っていた小さなガラス(びん)も、高級な薬品を入れる器として薬店が引き取っていたらしい。紫外線による薬の変質を防ぐためか、透明度の低い色付きガラスの作り方は色々とメモに遺してあったが、逆に透明度の高いガラスの作り方は載っていなかった。



「鉛ガラスとか知られてないのかな。まぁ、僕も今回は、そこまで透明度の高いガラスは作らない……と言うか、作れないけどね」



 作り方自体は【田舎暮らし指南】に載っていたが、消色剤となる酸化鉛だのマンガンだのの入手の当てが無いのであった。

 そして、肝心の板ガラスの作製方法は……



「紙を()く時の要領で、無魔法とかを使えば大丈夫だろ」



 ――あっさりとそう決めてかかっていたが、実際に大丈夫だったので問題無い。



「あとは、この板ガラスを窓枠に()めて……」



 普通ならパテで隙間を埋めたりするのだろうが、何しろユーリには()(とく)したばかりの便利スキル【木材変形】がある。態々(わざわざ)パテなんぞ用意しなくても、木枠にピッタリと()める事ができるのだ。

 ……他人に見られた場合、言い逃れのできない羽目になる事など、気にしてはいけない。……ユーリ本人が気付いていないのだから。



「よしっと……おぉ、大分明るくなったね」



 これまでは窓を開放すると寒気も流れ込んでくるため、秋から冬にかけては窓を開ける機会があまり無かった。しかし、今年からはガラス窓があるため、寒気を遮断して陽射しだけを部屋に取り込む事ができるのだ。居住環境は格段に快適なものになるだろう。



「【木材変形】を使えば、隙間を塞ぐのも簡単だしね。これは良いスキルを覚えたなぁ♪」



 善はやれるだけやっちまえとばかりに、自宅の窓を全てガラス窓に作り替え、勢いに乗って工房――最近、空き家の一つを作業専用の小屋に変えた――の窓までガラス窓に作り替えるユーリ。新たに手にしたスキルを使うのが楽しいというのもあるが、手元が明るいのは作業場所として必須の条件なのも事実である。

 丁度工房の窓を交換した辺りで、作っておいた板ガラスが底をついた。



「終わっちゃったかぁ……まぁ、残り(・・)は後でやればいいか……」



 現状ほとんど使っていない空き家まで、ガラス窓に替える必要があるのか――という疑問に対しては、「備えあれば憂いなし」という答えが返ってくるだろう。万一何かが起きて自宅が損壊するような事があった時、代わりの家があるかどうかは大違いである。ユーリは万一への備えを怠るつもりは露ほども無かった。



「あぁ……それより先に、鉛ガラスを開発するべきだったかな?」



 どうせガラス窓に取り替えるのなら、より透明度の高いガラスの開発を待つべきだったか、と思ったが、その時はその時でまた取り替えればいいかと思い直す。何時になるか判らない鉛ガラスの開発を当てもなく待つより、今の生活水準を上げる方が重要だろう。



「あぁ……そう言えば、練習がてらガラス器も作ったんだっけ。……このままじゃ少し物足りないし、切り子細工かサンドブラスト加工ぐらいなら、そう不自然でもないかな?」



 魔法か錬金術でできる事なら不自然ではない筈。

 例によってユーリの判断は現実の斜め向こうをぶっ飛んでいるのだが、当の本人はそれに気付かないのであった。

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