表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/312

第二章 来た、見た、食った 6.解体と調理

 村へ戻ったユーリは、家の前に土魔法で作業台を生み出す。獲物を【収納】から取り出すと、深呼吸を一つしてから(おもむろ)に解体に取りかかる。生前に解体などの経験は無論、作業を見学した事すら無い。ラノベには解体の場面も何度か登場していたが、一々仔細に憶えているわけでもない。【田舎暮らし指南】師匠だけが頼みの綱である。



「え~と……まず、腹の部分の皮を……」



 おっかなびっくりといった(てい)で解体に取りかかったユーリであるが、ユニークスキルの【田舎暮らし指南】からの補正が入るのか、思ったより良い手際で作業が進んでいく。

 しかし、いくらステータスが強化されているとは言っても、所詮(しょせん)は未経験者、()して七歳児の体格でしかない。そうそう簡単に作業が終わるわけもなく、解体を終えたのは辺りがそろそろ暗くなる頃であった。終盤には生活魔法の【点灯(ライト)】や、光魔法まで使っての作業になっていた。



「ふぅ……何とか終わったよ……」



 枝肉や毛皮、その他の素材、という具合に(まと)めて【収納】していく。

 内臓は捨てようかと思ったが、後で何かに使えるかもしれないと思い直して、これらも部位ごとに【収納】しておく。何しろ神様から直々に貰った【収納】だ。容量もきっと大きい筈だと楽観して、片端から詰め込んでいった。

 幸い容量は本当に大きかったらしく、百キロ超のイノシシ(マッダーボア)の肉や素材を詰め込んでも、まだまだ余裕があるようだった。



・・・・・・・・



 血で汚れた作業台を水で洗い流すと、ユーリはようやく家の中に入る。山菜採りからイノシシ狩り、血抜きと運搬などの大仕事をしていながら、昼は携帯食料――そろそろ底を尽きかけている――で軽く済ませただけである。村に戻って来てからは来てからで、今まで一人でイノシシを解体していたのだ。空腹を覚えるのも当然だろう。

 ちなみに、正確にはイノシシではなくマッダーボアという魔獣なのだが、ユーリの脳内では「イノシシ」である。何しろ最低レベルの自分――と、思い込んでいる――に狩られる程度の残念魔獣なのだ。見てくれは少々大きくても、普通のイノシシと同じようなものだろう。


 ――大違いなのだが。



 そんな些事(さじ)は気にも留めないユーリ。さて、調理に取りかかって……と思ったところで、食器どころか包丁すら無い事に気付く。いや、それ以前に(かまど)なんかは使えるのか? 昨日はざっと見ただけで、仔細な検分などしていない……。



「……初めての事ばかりとは言え……抜けが多いなぁ……」



 がっくりと肩を落としたユーリが改めて台所の様子をチェックした結果、判明したのは……


(かまど)は一応使えそうだ。少なくとも、壊れてはいない様子。


・ただし、本来ならあった筈の、鍋釜を吊すための鎖や鉄鉤、あるいは鍋釜を据え付けるための五徳のようなものは、綺麗さっぱり持ち去られている。焼く時に肉を刺すための鉄串も無い。


・排煙用の煙突は無い。どうやら採光用に天井に(しつら)えてある穴が排煙孔を兼ねているようだが、現在それは閉じられている。棒か何かで支えて開けるらしいが、肝心のその棒が見当たらない。


・煮炊きのための燃料が無い。



「はぁ……」



 結局その日は、切り分けるための包丁、肉を焼くための串、食器、などを土魔法で作成し、火魔法で肉を焼く事になった。泥縄もいいところである。


 肉を上手に焼くのに適切な火力を維持するのは大変であり、これだけで火魔法が上達したのはここだけの話である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ