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シーナリーエッセイ集  作者: 由木 ひろ
9/23

優勝、おめでとう!

 ある日、私は、自転車に乗って隣街まで買い物に出かけた。おつまみとビールを買い込んで、帰路につく。


 自宅まで後1km位の所に、大きな川が有り、そこを渡るために大きなつり橋が掛かっている。つり橋と言っても長さは百メートル以上あるであろう、横幅は、車二車線と歩道部分は車1.5台分位の代物である。


 その橋に差し掛かった所で、私の前を、二人の男の子が自転車でレースをしていた、その子供たちは小学1年生か、それより下と見える位、幼い。又自転車も子供用なので、一生懸命こいでも、私の目から見たらさほどスピードは出ていない。彼らのなかではきっと猛スピードの激しい戦いなのであろう・・・。


 私の自転車は、大人用なので、タイヤの大きさも何倍もあり、普通にこいでも二人を追い抜いてしまった。

 子供たちを追い抜いた瞬間、2人の戦いを制して先頭を走っていた子供が、

「あ~っ!!」

 つかの間の勝利を味わっていた矢先に、見知らぬおじさんに抜かれたのが癇に障ったのだろう。私の後をすごいスピードで追いかけて来た。


 私は彼の声で、ちらっと後ろを振り返った、彼が”立ちこぎ”で私を抜こうと追いすがってきているのを確認した後、何事もなかった様に私は自転車の(ギヤ)を一つ上げた。傍から見たらペダルを漕ぐ速さは変化していないが、ペダルは重くなり、変化を悟られない様に素早くペダルの回転速度を戻す。


 気配で、私のすぐ近くまで、がんばって追いついて来たのを感じると、もう一つ(ギヤ)を上げ、後ろの子供に気づいてないていを装い、涼しい顔して引き離しにかかる、見た目とは違い、実際はかなり頑張ってペダルを漕いでいた、実際、立ち漕ぎしたい位である。


 いい年したおっさんが、何を子供相手にやっているんだろうか? 私もそう思いながら、子供に、大人の実力を甘く見ない様に、教育の為・・・

 ただ、子供相手でも負けたく無いだけの、大きな子供の言い訳であった。


 後ろを振り返ると、力尽きたのか、子供は速度をみるみる落として、距離は広がって行く、その時、私のポケットの中に有る携帯が鳴った。


 自転車を止め携帯に出ると、友人から、明日の釣りの打ち合わせであった。

 友人と話をしていると、見えなくなるほど距離が離れた子供の一人が、すごいスピードで私に向かってきていた。勝てないと思っていた相手が、なにかのトラブルで止まっている、今がチャンスとばかりに、勝利に向かい、思いっきりペダルを漕いで来る。


 私は携帯を耳にあてて話しながら、スピードを上げて向かって来る子供を眺めていた。

 子供は止まっている私を追い抜く瞬間、


【天に向かって大きく右手を突き上げ、後ろから来る友人に向かい満面の笑みを贈った】


 私は彼のあまりにも嬉しそうな姿を見て、(優勝おめでとう)心の中でつぶやいた・・・。







何にでも純粋に打ち込める子供から、教わる事が多い今日この頃です・・・。

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