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シーナリーエッセイ集  作者: 由木 ひろ
8/23

凄腕営業マン

一人暮らしをしている僕は、満員電車に揺られ、会社で仕事をこなし、満員電車に揺られ、暗くなった頃に帰宅する平凡な日常を繰り返していた。


そんなある日、自分の住むアパートまで、後20メートル位の所で、どこからか、猫の鳴き声を聞いた。

その日は気にせず帰宅したが、次の日も同じ地点で同じように小さな声で鳴き声が聞こえた、僕は足を止めて声のする方を見つめた。

すると、暗がりから勢い良く子猫が走って来て私の足元に纏わりついた。僕は腰を落とし、しばらくじゃれていた。

気が済むまでじゃれた後、僕は立ち上がり自分のアパートに向け歩き出した。

すると子猫は私に付いてくる、しばらく歩いて足を止めると私の足にすり寄ってくる。

ペット不可のアパートなので付いてこられても、飼う事が出来ないので、その日は足早にアパートに向かった。

子猫は僕の歩幅に付いてこれずに途中で諦めてとぼとぼ戻って行った。ぼくはその光景を安堵と共に寂しさを持って見送った。


次の日は雨だった、仕事を終えてアパートに向かう途中、まさか、今日は雨だし、いないだろうな?

しかし、いつもの場所に来ると、雨音にかき消されて聞き取りにくいが、かすかに猫の声がした。

傘を差したままその場にしゃがみ込むと、いつものように子猫が走って来て足元にじゃれて来る。雨のせいで子猫はずぶ濡れだった。

その日は付いてくる子猫に歩幅を合わせてアパートの二階の僕の部屋まで帰った。二階への階段を登れるか心配だったが、短い手足を使ってぎこちなく僕の部屋の前までたどり着いた。


部屋の扉を開け部屋に入ると子猫はそこから動こうとしない、部屋に入るよう手招きしても警戒してるのか部屋にはけして入ってこない。

よく見ると首輪をしていない、警戒している様子から野良猫なのだろう・・・

無理に捕まえると怖がるだろうから部屋のドアを開けたままにして、僕は何か子猫が食べれる物が無いかごそごそ戸棚のなかを探した。

数日前に冷奴に使った鰹節のパックを発見した。これしか無いけど食べるかな?ぼくは部屋の外にちょこんと座っている子猫の前にぱらぱらと鰹節を撒いてみた。


子猫はぺろぺろと鰹節を食べ切った。もう他にあげる物が無いか部屋で探していると、さんまの缶詰めを見つけた。さっそく缶詰めを開け子猫にあげようと玄関に目をやると、子猫はそこにはいなかった・・・。


次の日は子猫の為に煮干しを買って来た、いつもの場所で声かけてくれないと無駄になるな、と、心配してたが、いらぬ心配だった。


やはり部屋の前まで付いて来るが部屋には一歩も入ってこない。この距離感が良いのだろうと割り切って買って来た煮干しの袋を開けた。


大き目な煮干し一匹を目の前に差し出した。


【子猫は煮干しを咥えると素早く去って行った】


残された僕は少し寂しかった・・・。

こんなやり取りが一か月続いたある日、皆勤賞な子猫が声をかけてこなくなった、数日間は気になってしょうがなく、いっもの場所で立ち止まり周囲を探したが、それきり姿を見る事は無くなった。


どこかで優しい誰かに拾われて楽しく過ごしていてくれたらいいんだけど・・・。




あの子のその後が今でも気がかりです。

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