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シーナリーエッセイ集  作者: 由木 ひろ
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冬の大三角形

 私は夜空を見るのが好きだ!!

 子供の頃から、何か悩み事や、家に居たくない時はバイクを走らせ、人気の無い山に登り夜空をぼーっと眺めている事が多かった。


 しかし、社会人になってからは、空を見る事をしなくなった。会社の仲間との付き合いや、彼女との時間、家に帰ると食事の支度、食後の片づけ、風呂の支度に風呂掃除。とにかく自分の時間が無く忙しく生活しているうちに何時しか空の存在を忘れて行っていたのだ。


 ある日、仕事を終え、食事を済ませ家でくつろいでいると、理由は解らないが突然無性に星が見たくなった。時計を見ると夜の九時を回った所だ、カーテンを開けると街明かりのせいで薄っすらしか見えないが満天の星空だ、私は家を飛び出し、バイクにまたがり、お気に入りの場所に向かった。

 その場所は、家から一時間ほどバイクを走らせた山の上で、街明かりに邪魔されずに綺麗に星が見える所なのだ。


 山道の道路が終わる所までバイクで上がり、そこから数分歩いた所に、小さいが開けた公園が有る。

 公園に着くと先客がいた。若い夫婦と、ベビーカーに乗った赤ん坊の三人だ。私は邪魔にならない様に静かに公園のベンチに座った。


 私の気配に気づいたのか、さっきまで家族で話していたうちの若い男性は、2人の傍から少し離れた所まで歩いて行きタバコに火を付けた。


 私の傍には若い母親と男の子だろうか、赤ん坊がなにやら話をしている、と言っても母親が一方的に赤ん坊に語り掛け、赤ん坊は、

「あー、うー」

 と、声を上げているだけだった。


 私は、一人夜空を眺めていると、傍にいた若い母親が赤ん坊に星の説明を始めた。夜空を指さし、あれがシリウス、おおいぬ座よ。次はプロキオン、こいぬ座ね。

 私は夜空の星を見るのは好きだが星の知識はほとんどない。

 いつのまにか、私も彼女の説明に耳を傾け聞き入っていた。赤ん坊は意味は解らないがうれしそうにしていた。


 母親が次の星はベテルギウスよ!!と指をさした瞬間、赤ん坊は大きく反応を示し、右手を、母親が指示したベテルギウスに向け大きく伸ばした。


【星を掴もうと一生懸命腕を伸ばし、手を閉じたり開いたりしていた】


 私はその光景を、子供は無邪気で可愛いな。掴める訳ないのに、と。口元を緩め見ていた。

 しかし、次の瞬間、ある事が頭のなかによぎった。


 人類で始めて宇宙船の月面着陸を成し遂げたアームストロング船長、彼も子供の頃はこんな赤ん坊だったのかもしれない、もしそうであれば、目の前にいる赤ん坊は、将来偉大な宇宙飛行士、母親は、その子を宇宙に導いた優れた母親・・・・・・。


 突然、私の傍らにいる母と子が神々しく見えてきた、私の妄想なんだが・・・


 暫くすると一服していた若い父親が帰ってきて、3人は私の傍を離れて行った。一人残された私はタバコに火を付け、静寂な星空をいつまでも、飽きるまで眺めていた、私の前を一筋の尾を引いて、流れ星が通り過ぎて行った。




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