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シーナリーエッセイ集  作者: 由木 ひろ
16/23

自然の力

 日も明けやらぬ早朝。

 昨日の夜に通り過ぎた近年稀にみる規模の大型台風が、所処に大きな傷跡を残していった。


 何時もの川沿いの散歩道、水位は下がり始めているものの、土手の下に有る公園なども飲み込み茶色い濁流が勢い良く流れていた。


 川の中州に出来ていたジャングルの様な緑も今は濁流に飲まれその姿は見えない。

 暫く歩くと、仮設の大きな橋が架かっている。建て替えの為に橋を支える柱は鋼鉄がむき出しの状態である。

 その橋を渡り始めると、

(しゃりしゃり、じょりじょり)

 何やら不思議な音が足元から上がってきている。何だろうか? 

 橋の中央から、下を覗き込む。


 何時もは、澄んだ水が橋の柱の基礎のコンクリートの真ん中位しかない水位が、橋の欄干の下数メートルまで迫ってきている状態だ。


 鋼鉄のむき出しの柱に濁流がぶつかり、大きな水飛沫をあげている。その濁流に押し流された小石が柱にぶつかり奇妙な音を発している様だ・・・


 背中からは朝日が昇ってきており、川の全体像を照らし出す。

 今まで見た事無い状況に、いつまでも、橋の上から荒れ狂う濁流を眺めていた。

 そんな事をしていると、だんだん不思議な錯覚に襲われる・・・

 橋の柱と濁流の境目を眺めていると、まるで船に乗って茶色い水面を走っている感じだ。まるで洗車機の中の車に乗って止まっているのに、走っている様に感じる、あれだ。実際動いているのは、洗車機の方なのだが。


 少し酔いそうな感覚に襲われ目を閉じると、今まで気づかなかったが、風に乗って微かに金木犀の優しい香りが漂って来た。


 目を開けて空を眺めると昨日の事が嘘の様に、雲一つない青空が広がっている。


【遠くに目をやると、朝日に照らし出された富士山が、いつもと変わらず雄大な姿を晒していた】


 自然を前にすると、人間の行いの偉大さと、無力さを感じるある日の早朝であった・・・・・・



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