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シーナリーエッセイ集  作者: 由木 ひろ
10/23

ビジター

本日は会社が休み、目覚ましをかけずに思いっきり朝寝坊をした。

目が覚めると、AM10:35分だった。カーテンを開け窓を開け放つと、真夏ではあったが心地良い風が室内に流れ込んできた、付けっぱなしの扇風機を止め、自然の風を楽しむことにした。


シャワーを浴びて、遅めの朝食をとった。天気は良いがどこか出かけるには、出遅れ感が強い。

風は心地良いが、外に出ると、真夏の直射日光を浴びて汗だくになるのもシャワーを浴びたばかりの爽快感が台無しになってしまう。そんなこんなで家にいる事に決めた。


冷蔵庫からビールを取り出し栓を開けた。テレビの前に座りチャンネルを変えていると、国内のサッカーの試合を放送していた。今日はのんびりサッカー観戦でいいや、と試合を見ていると、全開に空いた窓から何かが室内に飛び込んできた。


テレビの1メートル上の壁に激突した何かがそのまま天井に張り付いた。セミである。

サッカーの試合は、一点を追う白熱した場面、ビールを飲んでいるせいもあって動きたくない。

天井に張り付いてるセミは、かなり大きめなアブラゼミであった、そこから動こうとせずじっとしていた。


子供の頃の経験上、このセミを驚かせたら、おしっこを引っかけられて部屋中を逃げ回る事も想像できた。

このまま放置してたら入って来た窓から勝手に出て行くだろうと高を括ってサッカー観戦を続けた。


サッカーの試合は一点差のまま、ロスタイムに突入しており益々目が離せない。そんな中突然、セミが大音量で鳴き始めた。試合の解説すら聞き取れない・・・


もはやこれまで。私は立ち上がりセミに手を伸ばした。手を伸ばしても天井までは30cmは届かない為、捕まえれるわけも無くセミは部屋の中であちこちぶつかりながら飛び回る。窓の方に行ってくれたら良いものを、部屋の奥に逃げてしまう。


数分間に渡る大捕り物である、私の額から汗が零れ落ちる。

部屋の奥に逃げ込んだセミは又しても天井に張り付き、手が届かない。息が上がって来た私はその下に座り込んでセミを睨みつける。


呼吸を整え第二ラウンドを始めようと立ち上がった瞬間、セミは飛び立った。


【青い空に吸い込まれる様に、一直線に入って来た窓から出て行った】


大捕り物のあっけない幕切れに、しばらく立ち尽くしていたが、我に返り額の汗を拭った。

喉が渇いた。冷蔵庫を開け今日二本目のビールに手を伸ばす。

栓を開け、一気に飲み干す。全開に空いた窓から気持ち良い風が吹き込んでくる、どこからか、心地良い風鈴の音色が聞こえてくる。


夏だな~・・・。





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