006、ラムハイボールその1
ここは駅から徒歩5分ほど離れた場所にある『BAR Q』大通りから離れているため比較的静かで、人通りも多くはない。看板も名前だけ。BARであること以外何も情報はない。それでも何かに引き寄せられるように、ふらふらっと人が訪れる不思議な空間がそこにはある。
今日は常連の麻里子さんと出張で福岡を訪れたサラリーマンがお店に来ていた。
「ジジさん甘めのラムください。」
「麻里子さんが好きなはちみつのラム入ったからそれでいい?」
「入ったんだ。うん、それで」
「マスター、私にもラムいただけますか?」
「はい、どんな味がお好みですか?」
「ラムってあまり飲んだことがないんですけど、何かオススメありますか?」
「そうですね。普段ウイスキーとかは飲まれますか?」
「たまにハイボールとか水割りを飲むくらいです。」
「じゃあラムハイボールにしましょうか。」
「ラムでハイボールですか?」
「ウイスキーで作るのが有名ですけど、アルコールじゃないもので割って作るものをハイボールと呼んだりもするんですよ。焼酎ハイボールで、チューハイとか」
「へ~チューハイって焼酎ハイボールだったんですね。」
「ウォッカだったりもしますけどね」
話ながらもジジさんはてきぱきと準備を進めている。麻里子さんには小さめのグラスに甘いラムをストレートで。サラリーマンさんにはラムの炭酸割りを。
「お待たせしました。ラムハイボールです。これはストレートで飲んでも割って飲んでも美味しいラムなのでオススメです。」
「ロン・・・」
「ラムって意味です。英語だとRUM、スペイン語だとRON、フランス語だとRHUMになります。」
「そうだったんだ。私の好きなやつもRON・・・だからスペイン語ってことね。」
「そうですね。」
「へぇ~」
ゆっくり飲みながら誰かの話を聞けるのもBARの楽しみのひとつ。ジジさんさんがお酒の話をしたり、そのときいるお客さん同士が接点を見つけて盛り上がったり。その日限りの会話を楽しむ。
カランッ。また1人誰か来たようだ。
「こんばんはプロマネさん、奥どうぞ。」
「こんばんは。まだ外は寒いね。」
「あっプロマネさんこんばんはー。私来たときプロマネさんいないから珍しいこともあるなーって思ってたんですよ。」
「いやいや麻里子さん。僕だってたまには家にいたりするんですよ。」
入ってきたのはプロマネさんだった。いつものカウンターの奥の席に座る。
「ジジさん、最初何かソーダ割りでちょうだい。」
「かしこまりました。今日は皆さんラム飲まれてるのでプロマネさんもラムにしますか?」
「そうなの?じゃあソーダ割りに合うやつ」
「かしこまりました。」
プロマネさんも来たことだし、そろそろいつもの流れかな?
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