005、ジントニックその4
カランッ。ドアが静かに開くと山内さんが入ってきた。
「こんばんは。」
「こんばんは、山内さん。どうしたんですか?ニヤニヤして、良いことでもありました?」
「ジジさん・・・そんなにニヤついてますか?」
山内さんは恥ずかしそうにしながらカウンターに座った。
「彼女でも出来たんじゃないの?」
「違いますよプロマネさん。プロマネさんがこの前教えてくれたみたいに、次を意識して資料作りというか、仕事をすると資料が出来るというか・・・うまく伝えられないですけど、ちゃんと意味のある資料作りになるようにしてみたら、上司から誉められました。」
「良かったじゃないの。改善の第一歩を踏み出した感じだね。」
山内さんをからかっていたプロマネさんは、意地悪そうにニヤついた。この人は他人に何か影響を与えるのが好きらしい。からかったり、助けたり、何かしら誰かの相手をしているのが幸せなんだと思う。
「会議のあとに議事録を作ったりすると思うけど、それも同じように改善できるから、考えてみて。他にもたくさん改善すべきポイントが見えてくるはずだよ。」
「えー、またヒントだけですか?」
「もちろん。それが僕の楽しみだからね。」
「まぁ、今回はそれで助かりましたし。ありがとうございました。」
「いえいえ、いいおもちゃを手に入れた気分ですよ。」
「ちょっと!・・・まぁ、いいです。あっジジさん、俺とプロマネさんにジントニックお願いします。」
「かしこまりました。」
「あれ。いいの?」
「プロマネさんにはお世話になりましたから。」
「悪いねぇ」
「それでしたら、今日は前回とはまた違ったジンを使ってみましょうか」
「いいですねぇ。お願いします。」
「今日使うのは・・・」
またこうしてお酒談義に花を咲かせ、幸せな時間が過ぎていく。ここはプロマネさんがいるBAR。悩める誰かが訪ねてくるのを一番奥の席でプロマネさんが待っているかもしれません。
カランッカランッ
「いらっしゃいませ。『BAR Q』へようこそ」