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優先席は誰のもの

作者: 長谷川亮太

ある日サラリーマンのエス氏はくたびれきっていて、悪いとは思いながらも通勤ラッシュで混雑する列車の優先席に腰かけた。

2、3駅ほど後にマタニティマークをつけた女が乗ってきて、エス氏の前に立ちこう言った。

「私は妊娠しているので席を譲ってください。」

エス氏が慌てて立とうとすると、女の後から乗ってきた老人が不満そうな顔で「私はもう高齢だ、席を譲ってほしい。」と言った。

エス氏がどちらに譲ればいいのか困惑していると、赤いヘルプマークを付けた男が「私は内臓に障害を抱えていて立っているのが辛い。」と言い出した。

3人がそれぞれ私が座るべきだと言って聞かないので、エス氏は自分が判断するのでなぜあなたが座るべきなのか1人ずつ話すよう言った。

女は言った。「私はもう1人分の命と一緒にいるのだし、この子はこれからこの国の役に立ちます。だから私が座るべきなんです。この2人はこれから何の役に立つんですか?」

「私は十分この国に貢献してきた、今の若いもんは老人に敬意をもっとはらうべきだ。誰のおかげで今の生活が出来ていると思っているのか。」と老人。

男は怪訝そうに「私はこの人達のように自分が偉いとは思っていません、でもみんな思いやりの心を持つべきじゃないでしょうか。この爺さんと女には人の心があるとは思えない。」と呟いた。

3人はお互いを罵りながら自分が座るべきだと長時間にわたって言い張りあっていた。

最後にエス氏は「やはり私には判断しかねることのようですね、降りる駅に着いたので失礼します。」と言って立ち上がった。

列車は終点に到着していた。

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