story01 "代理"お願いします。 前編01
「先生。お世話になりました」
「いえ。どうかお体を大切に」
「ありがとう。担当が、貴方で本当に良かった」
そう涙声の女性に、男は穏やかに微笑み、伸ばされた手と柔らかく握手を交わした。
「館野。ただいま戻りました」
「お!初仕事お手柄だったな!」
オフィスに戻ってきた館野に、所長を始め、スタッフの皆が駆け寄ってきた。
「少々ごねられましたが、なんとか折れて下さいました」
「はは!どうせまた痛いとこ突付いてきたんだろ」
「わ!萩野!!」
館野より一回り大きい萩野に、いきなり後ろから腕で首を締め付けられ、その拍子にずれたメガネを慌てて手で押し上げた。
「萩野クンが館野クンと同い年で同期とは思えないわぁ」
「どういう意味ですかレイコさん」
まだ館野にしがみ付いている萩野が、彼らを見上げる黒髪美人のレイコにふくれっつらを向ける。
そんな彼の腕を振りほどきながら、
「閉鎖的な世界の中で、冒険心溢れる独創性が豊かな萩野は必要です」
館野が笑って擁護するも、
「要約すんならアホっちゅうことやな」
「アケミちゃん。しばいたろか?」
「ほな冬のボーナス楽しみにしとるんやな」
目を細めて不敵に微笑む、独特なナマリのアケミに萩野は「堪忍してやぁ!!」と、俺から離れて彼女に跪いて縋った。
そんな様子を眺める所長が豪快に笑いながら、
「セイジは相変わらず恐妻家だなぁ!」
「誰がこんな女と!!」
オヤジギャグよりサムいっすから!!と、所長に言い返した萩野はアケミにゲンコツで殴られた。