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私――近衛真琴




 ――『女の子』って、なに?


 それは生物学上、女性と区分されるヒトの幼少期を指す。

 さらに言ってしまえば、そのような精神構造を持つ人物のことをそのように表現する場合もあるだろう。だとするならば、私は前者の意味合いでは『女の子』であると、そういうことになる。


 だが、少し待ってほしい。

 本当にそれだけか? なにか、重要な見落としはないか?

 私は考えるのである。この二つの要素が上手に噛み合い、重なり合った時に初めて『女の子』であると言えるのではないか、と。すなわち、私はまだ精神構造上の問題から『女の子』ではない、ということになるのではないだろうか。


 何故、自分で自分が『女の子』でないと主張するのか。

 私のここまでの自問自答にお付き合いいただいた皆さんなら、きっとそう思ってくれるだろう。いや、そう思ってくれ。思ってくれないと、話が前に進まない。


 さてさて。

 それでは、説明しよう――と言いたいところではある、が。

 残念ながら意識の覚醒が近いらしい。つまるところ、目覚めが近づいているのだ。残念ながら、この話はまた今度、ということになりそうだな。


 あぁ、いや――待てよ? 考えようによっては手っ取り早いのかもしれない。

 アレだ。つまりは、百聞は一見に如かず、というやつだ。そんなわけだから、もし良ければ私の一日に、まずはお付き合いいただきたい。それを見ていただければ、私がこのように言っている理由が分かってもらえるだろう。


 そして、それと共に。

 私が真剣に、このように悩む原因のこともまた、ご理解いただけるだろう――。



◆◇◆



「オラァ! 真琴まこと!! いい加減に起きやがれ!!!」


 目覚めは、そんな怒号から。

 私こと近衛このえ真琴の一日は、決まってこのように始まる。

 口うるさい親父の大声が目覚まし時計の代わり。いや、スマホのアラームも設定してはあるのだが、その程度の音量では目が覚めないので諦めてしまった。


「ったく。うるせぇな……今何時だよ」


 そんなわけで、だ。

 私はそこに至ってようやく、布団から顔を出す。

 そして、充電器に接続しっぱなしのスマホを手に取った。時間を確認する。午前6時半を少し回ったところだ。まだまだ、家を出るには余裕がある。


「……はぁ。しゃーねぇな、起きるか」


 それでも、あの頑固親父が黙っていない。

 さっさと起きないと、朝っぱらから拳骨が飛んでくるのは確実だ。

 だったらその前に起きておかなければ。そう思った私は重たい布団を跳ね除けた。すると、まだ寒さの残る春の空気が肌を撫でる。室内とはいえ、まだ朝は冷えるな。というか、そもそも下着姿で寝たのが間違いだったのかもしれない。


 一応、白いシャツを着てはいたが――これでは、先に言ったのと大差ない。


「よいしょ、っと。とりあえず、何か着るモノ……」


 私はそう誰に言うでもなく漏らしつつ、立ち上がった。

 そしてふと、部屋の隅にある姿見に目をやる。畳の上に置かれたそれに、普段ならば意識を持っていかれる私ではないが、今日に限ってはなんとなく気を引かれた。落ちていた黒のハーフパンツを拾い上げつつ、私はその鏡の前に立つ。

 すると、そこに映るのは――。


「…………はぁ」


 思わずため息が出るほどに。何とも、愛嬌のない女だった。

 寝起きだということを差し引いても眼つきは悪く、への字に曲がった口からも分かる。この人物は態度も悪いのだと。下着だけは女物であるが、肩にハーフパンツをかけて斜に構える姿は男のそれだった。くの字に曲げた腕には、幼少期から続けている格闘技の副産物が隆起している。

 顔立ち『だけ』は平均以上――というのは、自己評価でなく友人のそれ。


 とにもかくにも、である。

 生物学上は女であるだけの人物。それが私、近衛真琴だった。

 女らしい身体つきもしてない。その上で、名前の音だけを聞いたら男と勘違いされても仕方なかった。というか、最近では少なくなったものの、昔は頻繁に男子と間違えれらていた。


「相変わらず、私は私、か……」


 そして、ついついそんな意味のない呟きをしてしまう。別に変身願望なんてないし、女の子らしくなりたいとも思っていなかった。


 そう。先日までは・・・・・――。


「おいコラ、いい加減に降りてきて手伝いやがれってんだ! 聞いてんのか、真琴ォ!! まだ寝てんなら、今から殴り起こしに行ってやるからな!!」

「あぁ――ったく! うるせぇ! 起きてっからちったぁ待ってろ、馬鹿!」


 と、そんなどうでもいいコトを考えている間に、時間が経っていたらしい。

 隣近所に迷惑な程の大声で叫ぶ親父。そろそろ下に行かないと、本気で殴られてしまうだろう。そうとなれば、せっかく起きたのに意味がない。

 というわけで、私は雑にハーフパンツを履いて部屋を出た。


 これが、私の毎日。

 これが、私の毎朝。

 変わらない日常の一幕であった。


 しかし、それに違和感を抱くようになったのは、いつからだろう。

 あぁ。それはきっと、アイツ・・・に会った時からだ。





 しかし、今はそのことを思い返す暇もない。

 私は私の日常の中に、再び身を投じていくのであった――。




初の青春恋愛小説に挑戦!

ゆっくり更新ですが、よろしくお願い致します!

続きが気になったらブクマしてもらえると嬉しいです!!

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