ミズキの家
さてさて。
そんなこんなで、私たちは様々な部活に顔を出したのであった。
だがしかし、そのことごとくにおいてミズキの運動音痴が炸裂。対して私がプレーをすると決まって、性別を疑われると同時に、
『お前なら、うちの部の救世主になれる!』
とか。
『大丈夫だ。キミなら、男子に混ざってもバレないから!』
とか。
そんな、私のコトを馬鹿にしているとしか思えない発言が飛んできた。
無論、そんなことを言ってきた奴らは片っ端からぶっ飛ばしてやったが。その度に担当顧問と言い合いになるので、途中からはずっと校内を逃げ回っていた。
結論を述べるとしよう。
この作戦は、失敗に終わった。
理由は先ほども述べた通り、ミズキがあまりにも女子的だったため。女子ソフト部の中に放り込んでも、同じだった。それどころか、膝を少し擦りむいただけで周囲の女子生徒は、この世の終わりかの如く騒ぐのである。
ミズキに至っては、そのお礼とか言って懐から手作りのクッキー――どこに隠し持っていたのか――を取り出し、気付けばその場は優雅なお茶会と化すのであった。顧問の教員までもが朗らかとしてしまって、異世界にきてしまったのでは、と思わされるほど。正直、見ていて寒気がした……。
「あの、ごめんなさい。師匠……」
「あー、謝るな。何だかもう、諦めの境地に入りかけてるから」
さて。そんなわけで、すっかりと日も落ちた頃合い。
私たち三人は家路に着いていた。カナとは通学は別だが、帰りは基本的に一緒である。何故かというと、私に合わせていたら遅刻常習犯になりかねないから、であった。そんなワケで、朝は別々に、帰りは一緒に。自然とそういう形になった。
「でも、マコちゃん凄くかっこよかったよ! 自信もって!」
「いや、さ。それに自信持つのは、仮にも女としてどうなのさ?」
そんなカナも自転車を引きながら、見当違いなフォローを入れてるし。
私はぐったりとしながら、そんな返答をするのであった。
「ところで、ミズキの家はどの辺りなんだ。自転車通学じゃない、ってことは意外と近くなのか?」
「あ、ボクの家ですか?」
しかしとりあえず、気持ちは切り替えなくてはいけない。
と、そこで不意に気になったことを私はミズキに訊ねることにした。何の気なしに、自然と自分たちについてきているが、方向は一緒なのだろうか。
「そろそろ見えてきますよ!」
「え? マジか。でも、ここって……」
私はキョロキョロと辺りを見回す。
ここは閑静な住宅街だ。どちらかというと富裕層が住んでいる地域であり、学生が一人暮らしをするようなアパートはない。で、あるのにも関わらず、だ。彼はもうすぐ見えると言った。
私はカナに視線を投げる。すると彼女も同意見だったのか、小首を傾げていた。
――と。そんな時だ。
「あ、アレですよ! ボクの家は!」
ミズキが、楽しげな口調である建物を指差したのは。
私はその指先を追って、
「え? あれって、どれ――――って、はぁ!?」
思わず声を上げてしまった。
横からは「うわぁ、すごーい」というカナの声。
私たちの目の前に現われたのは、アパートなんかではない。それは――。
「ここですよ、ここ。少し狭いですけど、休んでいって下さい!」
――紛れもない一戸建て、であった。
しかも、並のそれではない。ミズキは狭いとか言いやがったが、そんなことは決してなかった。ぶっちゃけ、私の家の倍くらいの広さはある。
端的に言って、豪邸であった。ここに一人暮らし、って――嘘だろ?
「……? どうしたのです? どうぞ、休んでいって下さいっ」
「あ、あぁ……」
唖然としているこちらに、そんな声をかけるミズキ。
つい反射的に、私はそんな返事をしてしまうのであった。
そんなこんなで。
何やら分からない間に、私はミズキの家へとお招きされることになったのである――。
短いですが、キリどころ分からないので!
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<(_ _)>