表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

原風景





 ――幼い頃。私は、弱かった。

 いつもいじめられて、隅っこで泣いていた。

 それはその日も同じだった。私はイジメっ子たちに囲まれて、膝を抱えて小さくなる。あまり反抗しては、余計に面白がって手を出してくる。それが分かってるから、私はただ耐えていた。こうしていれば、いつかは終わってくれるから。


 でも、その日は違った。

 イジメっ子たちは、調子に乗っていたのである。

 考えてもみなかった。抵抗しないことが、その行いを受け入れているように見えるなんて。つまり私は下手を打っていたのだった。


 相手は三人。

 そのうちの一人が、私の顔を目がけて足の裏を押し付けてきた。

 あぁ、痛い。痛くて、苦しくて、辛かった。悔しくて、悔しくて仕方ない。肉体的な痛みよりも、精神的な痛みの方が強かった。どうして自分は弱いのか、と。


 でも、それは仕方のないことだった。

 こうなってしまえば、もうどうにもできないから。

 私はずっと、きっとこのまま、弱いままで生きていくんだろう。


『うっ……』


 そう思ったら、涙が出てきた。

 そして、ついに声を上げてしまいそうになった。その時だった。



『やっ、やめろぉぉぉぉぉぉぉお―――――――――っ!』



 そんな声が、響いたのは。

 声の主は一人の女の子。可憐な、たんぽぽみたいな髪の色をした彼女は、イジメっ子のうちの一人に体当たりをした。突然のことに、三人は散り散りになる。

 その隙にその子は、私の守るように間に立っていた。


 小さな背中に、細い腕。加えて、可愛らしい声。

 顔は分からなかったけれど、その子はきっと私と同じ側なのだと思った。


『この子のことをいじめるな!』


 それなのに、その子はそう声を張り上げる。

 イジメっ子たちは少しだけ困惑したような表情を浮かべたが、すぐにお腹を抱えて笑い始めた。どうやら自分たちの方が強いと、そう分かったらしい。

 すぐに、その子のコトを取り囲むのであった。そして――。




 ――結果は、分かりきっていたことだった。

 それでもイジメっ子たちは驚いていた。何度倒れても、何度倒れても、その子は必ず立ち上がったのだから。足が震えていても、肩がゆれていても。その子は最後まで立っていたのだから。


 そんな彼女の後ろ姿を見て、私は思ったんだ。

 いつか自分も、こんな風に強くなりたい、と。

 そしていつの日か、この子のコトも守れるような、そんな人になりたい――と。






 それが私の原風景。

 絶対に強くなろうと、そう誓った出来事であった。



 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ