影響を受けた本って何ですか?
「うん、清々しい程に白紙だな……」
俺の名前は実。
一般的な高校二年生だ。
今、眼前には大量の夏休みの宿題が積まれてある。
しかも、真っさらで……
取り敢えず落ち着こうか。
宿題に優先順位をつけるところから始めよう。
先ずはこの膨大な量がある五教科のワーク。
これは三日間あれば答えを写せるはずだ。
全く問題ないな!
次に自由研究。
これは友達のものを丸写しにするかな。
その次に安全標語を五・七・五でだな。
まぁこれに関しては提出日に書けばいいだろう。
最後に読書感想文だな……
読書感想文は被ることがほとんどないから友達のものを書き写すにはリスクがある。
課題図書のものを書いている人のを写したいが知り合いにそんな奴はいないだろう……
自分でやるしかないのか……
そうだ!明日、あいつらにお薦めの本を聞こう!
次の日
「ゴメンな、ファミレスに急に集まってもらって」
本当に申し訳ないとは思わないがな!
形式上だけ謝ってみせた。
「本当だぜ、何か奢ってくれるんだろうな?」
この少し腹の立つ話し方をするのは祥太だ。
いつも一緒にいる仲間でリーダー的な人物だ。
責任感があり頼れる奴で馬鹿だ。
「奢ってくれるなら早く言ってよ!昼飯を食べてきちゃったじゃないか!」
少し怒っていて太っている男は拓海だ。
こいつはよく怒るが、この中でムードメーカーの役回りであり馬鹿だ。
っていうか、俺は奢るとか一言も言ってねぇよ!
しかも、昼飯を食ってきただと?
時計が読めないのか?
まだ、午前九時だ!
「もう帰ってもいいかな?面倒になってきた……」
この適当な男は光だ。
天然なのかわならないが、たまに爆弾発言をして場をかき乱すことがある。
そして馬鹿だ。
今、思ったが俺の友達はどうやら馬鹿しかいないようだ。
何故、俺はこいつらに相談しようと思ったのだろうか?
自分自身はどうなのかって?
勿論、優秀な人間さ!
当たり前じゃないか!
「読書感想文を書こうと思ったんだけど、影響を受けた本ってない?」
あまり期待せずに聞こう。
期待しすぎると後でショックを受けそうだ……
「先ずは俺からいこう!」
祥太は勢いよく答えた。
何でこんなに意気込んでるの?
今から死地にでも赴くのか?
「俺が一番影響を受けたのは銀行の預金通帳だな!」
ん?こいつ今、何を言った?
き、聞き間違えかな?
「何とおっしゃいましたか?」
気づかないうちに丁寧語になってしまっている。
どうやら俺の頭は処理が追いついていないらしい。
「銀行の預金通帳って言ったんだよ」
どうやら聞き間違えではなかったらしい……
どうしてこいつは自信満々に答えられるんだ!
訳がわからん!
「預金通帳は本じゃないと思うんだが……」
これは確実におかしいよね?
まだ引き返せる!まともな回答を!
「何を言ってるんだ?表紙もあるし、パラパラとめくれるじゃないか!」
駄目だ……こいつに話は通じない……
その理論でいけばプリントを入れていないクリアブックですら本ということになる。
ん?待てよ……ブックと名前がついているならこれも本と呼べるのでは?
これに気づいた俺ってもしかして天才……
「しかも、この本によって母親の機嫌が変わってくるんだ!」
こいつはもう預金通帳は本だって本当に思い込んでやがる。
確かに生活がかかってくるもんな……
「でも一つ悩みがあるんだ……」
急に畏まってどうしたんだ?
何か大変なことでもあったのか?
「何もしていないのに通帳の数字に変化がないんだ!俺が何かしたとでもいうのか!」
何もしてねぇからだよ!
お前は生粋の馬鹿だな!
はぁ……ツッコミすぎて疲れた……
「僕がお薦めするのは伝記かな」
拓海はなんて言ったのかな?
電気っていったのかな?
「ハハハハハ、電気は本じゃないよ。本当に困った子達だ」
「流れる電気じゃなくて、人の歴史を書いた伝記の方!」
何っ!何故、こいつはまともなんだ!
何か良くないものでも食べたのか……
「まともに生きた人の一生というものは、どんなに優れたストーリーよりもよほど価値のあるものなんだ!」
とてつもなく真面目だ!
あぁ……何故か周りに神々しい光が……
「そういう意味で伝記って学ぶことが多いと思うんだよね」
そうなのか、勉強になるな。
でも、成功した人たちのを読んだってあまり役に立たないって思うんだよな。
その点で言えば苦手かな……
「特に自分自身の伝記は影響力が大きいね!」
「はい?」
急に何を言い出しているんだ?
自分の伝記って本でも出してんのかよ!
こんなやつの人生なんて呼んでも面白くないだろ!
「自分でほ、本でも出してるのか?」
よく分からない質問をしてしまった……
「そんな訳ないじゃないか、相変わらずお前は頭が悪いな」
こいつ馬鹿にしやがったな!
笑いながらこのドヤ顔!
凄く人を苛立たせる顔をしてやがる!
「じゃあ何処にその伝記があるんだ?」
怒りを抑えながら言ったつもりだが大分声が震えていた。
今すぐにでも殴り飛ばしたい。
「それはここだよ」
そう言って頭をトントンと人差し指で触った。
「そこを動くな……今から出荷してやる!」
怒りが爆発してしまった。
い、いつもはこんな汚い言葉は使わない紳士なんだよ。
嘘じゃない、本当だよ?
「最後は俺か」
ダルそうにしているがやる気はあるようだ。
頼む……お前が最後の砦なんだ!
「話すよりも見てもらう方が早いな」
おっ!期待できそうだな。
よろしく頼むぜ、光!
「これだ!」
取り出したのはホッチキスで止められた複数枚のプリントだった。
これは本と呼べるのか?
「中は見ないのか?」
勝手に見て良かったのかよ!
まぁいいや。
「何で音符やねん!」
ついついツッコミを入れてしまった。
これは俺の常識がおかしいのか?
「何処を見ているんだ?しっかりと文字も書かれてるだろ?」
ん?しっかりと見てみると音符の下に確かに文字が書かれてあった。
ドレミファソラシの七文字で……
ここから何を読み取れっていうんだ!
常人では理解ができないとでもいうのか……
と、取り敢えず見てみるか……
「えっと、ソミソミレドレド……聞き覚えがあるような?これの題名って何だっけ?」
小学生くらいでやったきがするのだが……
思い出せないな。
「これはドが多いな。重たい曲だな」
そんなにドは多かったか?
良くわからないな。
「これは宇宙だな」
あれ?そんな題名だっけ?
俺が他のものと間違えてたかな?
「ん?」
そのプリントの右下隅に文字が書かれていた。
題名 カッコウ
「お前、題名間違ってんじゃねぇか!」
無意識の内に殴ってしまっていた。
っていうか本でもねぇよ!
はぁ……疲れたな。
何の参考にもならなかった……
仕方ない!読書感想文は白紙で出すか!
読んで下さりありがとうございました!
私は本を読むのは好きですが感想文を書くのは本当に苦手でした。
そんな私は漫画を読書感想文に書いたことがありました。
言い訳をすると部活が忙しく盆休みの三日間だけしか丸一日の休みがなかったからです。
勿論、担任の先生に怒られました。
高校一年生なのに……
読書感想文が宿題の皆様も忙しいからといって漫画を選ばないようにしましょう!
後々後悔します……
最後にもう一度、読んでいただきありがとうございました!