運命は1回巡る
これは、運命の歯車が狂ったが故に、出会うことが出来た縁の物語
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「うわぁぁぁあぁぁぁぁッ!!」
叫び声をあげる青少年。そして、その後ろには
「待てやゴラァアァァァァァァァァッ!!」
「その生き胆寄越さんか人間がぁぁぁあぁあぁぁぁぁあッ!!」
普通の人間には視えない存在【妖怪】に襲われている真っ最中だった
「阿比王ぉーーーッ!!絶対に許さないからなぁッ!!」
「泣いて叫ぶ程の体力があるなら、とっとと調伏しろ」
「退魔調伏出来ないから逃げてんだろッ!!」
「まぁ、精々死なねぇー程度に逃げ、そして殺れ」
「無理だぁぁぁあぁぁぁあぁッ!!」
叫びと共に、一人の青少年【陽炎】が妖怪を連れて逃げている最中であった
そして、それと同時刻。とある駅にて
「悠!この先にある期間限定スイーツがあるんだよ!」
「そうか」
笑いながら六駅先の町に着いた青年と子供がいた
「楽しみだな!悠とこんな遠出って最近なかったから嬉しいなぁ!」
「ほらほら、はしゃいでないで行くぞ」
「はーい!っと、その前に。悠!トイレ!」
「わかったよ」
青年【悠】には、人よりも血液量が多いという病気をもっていた。そして、その隣の子供【ユリスクリムシェン】は、通り吸血魔だった
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ぜーはー、ぜーはー
「こ、ここまで来れば・・・・」
陽炎が来たのは駅の公衆トイレだった。妖怪たちも、まさかトイレに逃げ込んでるなどとは思わないだろう。と思っての行動だった
しかし、タイミングが悪かった
「・お・・・・誰・・・」
声がしたのだ
ビックリはしたものの、公衆トイレなのだから、人がいてもおかしくはない
「(よかった。人か・・・・)」
そう安心した時だった
辺りに血の匂いがしたのだ
「(え・・・・まさか・・・・・・・・)」
コレまでにも何度かあったことだが、まさかこのトイレで、人が妖怪に襲われているのかもしれない。そう思った陽炎は、トイレの奥の鍵が閉まっている場所の戸を叩いた
「だ、大丈夫ですか!?なにかありましたか!?」
ドンドンと叩くと、子供の声が聞こえた
「大丈夫でーす!」
「ほ、本当ですか?!?」
「うん!今からそっちに行きましょうか?」
子供。それはユリスクリムシェンだった。悠との吸血はある意味、悠自身の為でもある行為だ
その最中に人が来てしまったとしても、ユリスクリムシェンにとっては、記憶を書き換えればすむ話だった。だから、トイレの戸越にいる陽炎の問いに応えたのだ
ガチャ・・・・
その戸を開けると、ユリスクリムシェンをみた陽炎が驚いていた
「え?二人・・・・?」
「ゆりす!」
陽炎からすれば、大人が子供と二人同じトイレに入っているとは思っていなかった。なぜなら
「(妖怪じゃなかったのか・・・・)」
妖怪ではないと安堵したからだった。が、その次に冷静に考えた。この二人が似ていないからだ
誘拐をしているのか、それとも似ていないだけの親子なのか。しかし、悠はユリスクリムシェンを【ゆりす】と呼んでいたこともあるので、更に謎が深まった
「えっと。どうして二人でトイレに?」
「いろいろあって」
「お二人の関係は?」
「従兄だよ!」
従兄。それなら似ていなくても不思議ではないな。しかも、ユリスクリムシェンが言ったのだから、少なくとも子供は正直だと思っている陽炎は、その言葉で納得してしまった
「よかった。もしかしたら、襲われているんじゃないかと思って・・・・」
その言葉で、一瞬悠が固まった。それを陽炎は見逃さなかった
「(え?)」
「悠!はやく行こ」
「あ、そうだな・・・・。手を洗ってから行くぞ」
そそくさと、慌てて出ていこうとする悠を不信に思い、彼らが出ていった後に陽炎は電話をかけた
「もしもし、広野江です。亜矢椿先輩。少しいいですか?・・・・・・・・気になる二人を見かけたので・・・・」