第1話その3 危険を越した好奇心
ここからは2日〜3日のペースで書いていきますので、ご了承ください。
『次は〜麹が丘2丁目〜、麹が丘2丁目〜お降りの方はバスが停車してから席をお立ちください』
「ありがとうございました」
私は音楽をイヤホンで聴きながらバスから降り、そのまま家に向かって歩いていた。そこで目にしたのがあの封筒があった公園であった。そういえば、元主がもう拾っていったかなと思いつつ、もしかしたらと思い家の先にある公園に行ってみる事にした。
マンションのすぐ側にあり、野球するほどの大きさはないが、サッカー等をするには十分な大きさだ。昔はよく外で遊ぶ子供はいた。(もちろん私も例外ではない)しかし、スマホとタブレットの普及もあってか昔より圧倒的に遊ぶ子は減っていた。
「あ、あった」
まだ黒い封筒はまだあった。ベンチからそのまま置いてあった。カードももろだしである。しかし、なんのカードだろうか。なんかの会員証か?気になる……。
そして、私の脳内で天使と悪魔の囁きが聞こえてきた。
『誰も見てないんだし、ちょっと開けるぐらいいいいじゃん、ねえ?』
『これでサツに見つかったら面倒臭いよー』
『馬鹿か?手袋すれば問題ねえよ!』
『モラルを守れ!』『やかましいわ!』
「よし、持って帰ろう。何かしらの細工すれば問題ないっしょ」
何ともクズな私だろうか。自覚できていても危険を越した好奇心が私を襲うのだ。中身を見ればそのまま警察に持っていけばいい話だし問題ない、問題ない……はずだよね。
こうして、封筒とカードをカバンの中に入れてそのままこの公園を去った。余談ではあるがその夜公園を見渡したが、探しに来るような人は誰もいなかった。ぼけているのかと思ったが私はまあいいかと外も冷え込んできたので家の中に戻った。
「…………よし」
封筒を開ける準備はできた。手袋、カッターナイフ、ノリ……。色々な精密検査を受けるとなれば面倒だが多分ごまかせるとは思う。
手袋をはめてカッターナイフを閉じたところにある赤い星のシールを剥がしていった。よく招待状にあるような赤いアレだったので、何とかごまかせるなと安堵した。
二分かけてやっと剥がし終わり、ゆっくりと封筒を開いた。中には一つの薄い紙が入っていた。その内容は
『契約書と利用規約』であった……。
【私はラックカード『スターライト』を規約を読んだ上で契約することを誓います。】
「ゲ、かなりやばい重要なカードだったんじゃ……
聞いたこともない会社だけど、なんかクレジットカードぽい……ね」
冷や汗がどばっと溢れてきた。クレジットカードだと警察もかなり重要視するしまずいと思い始めた。早め見て戻そう。警察に渡そうと思ったが割と危ないので元に戻すことにした。
「それにしても『利用規約』ってずらずらーとあるなー重要なカード(?)だし、そんなものなのかな〜?」
『契約書にサインしろ』
「いやいやいや、他人のですしいかんでしょ」
『それはお前のものだ』
「何いって…………あれ?」
何?さっきの声誰!?幻聴ってやつなのか分からないが確かに私の耳元に女性のささやく声が聞こえていた。契約書にサイン……?なんか怖くなってきた!
『スターライトはお前のものだ。そこにサインを』
「私のもの……なの?」
心の感情だったらどれほど狂ったものか!私はここまで危険を越してまで好奇心の虜になってしまったのか?と葛藤して、最終的に決めたことはただひとつ。
「いいよ、やってあげるよ……」
ボールペンで、馬が走るかのような勢いで契約書に『宮守知咲』と達筆なサインをして、判子を押した。そうして、息を荒らしながら紙をじっと見つめた。これが本当に幻聴なら完全にアウトだ。もう何かしらの方法で処分するしかない。
「さあ、どうなるの!【スターライト】さんよォ!」
そう叫んだ瞬間一瞬私の部屋は真っ白な光に包まれ、私は思わず目を腕で隠した。しかしその光は私を包み込むような優しさが感じた。