ある男の話
人間は、いろんな感情がある。
喜怒哀楽という言葉のとおり、どこかで笑い、どこかで泣き、また笑顔になる。人生はそのサイクルで成っている。しかし、いつどこで感情が変わるか何てものは誰も知らない。というより知る気にもならないだろう。なぜなら、人というものは幸せに暮らせればそれで十分なのだから…………。
「………………私はもうだめだ」
マンションの屋上に住むひとりの男は昼ドラの俳優かのように目にクマが出来ており、やせ細って、酒で荒れていた。
「何故だろう、ある日から境に私は不幸しか起こらなくなった気がする…………」
「まさか、あの『カード』か……?」
「言われてみれば確かにあの『カード』を持った瞬間から私の人生は大きく変わった……会社を立ちあげるも成功し、株で億万長者になってモデルの妻を手に入れ、愛する娘まで…………」
「あれは、まさか『幸福のクレジットカード』だったのか…...?」
「そうか……今までの幸せの分のツケが返ってきたというわけか」
男は外のベランダに出て、街の景色を眺めた。そして男はゆっくりと上へ上がっていき、大きく叫んだ。
「さらばだ!景子!チサ!2人だけでも、幸せになってくれ…………!」
あたかも敵に殺される前かのように涙ぐんで叫んだ後屋上から飛び降りた。そして体はグチャグチャに砕け、そのまま死んだ……はずだったが、奇怪なことに彼は死ななかった。
翌日に意識は回復し、長期の入院となった。だが死んだほうが彼にとっては幸せだったのかもしれない。何故なら彼は酒で暴れ、薬物をキメてた事もあって麻酔が効かなくなっていた。
そう、彼は死ぬまで永遠に『痛み続けなければならない』運命だった。その後男は苦しみ悶え続け10日後にショック死した。この事は彼が元大富豪だったこともあり、奇怪な死を遂げたことから全国ニュースで知れ渡った。
葬儀の後に遺産は全て妻と娘に分配され、その時妻は父が持っていた『あるカード』を見かけないことを知ったが半日過ぎるとそのことはもう忘れていた……。