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恋愛遊戯

小舟

作者: ソラヒト

小舟でどこまで行けるのか、流れに逆らって。


ふたりは流れに逆らう方向へ

旅に出ることを決意した

用意できた小さな舟と一組の櫂で

目の前は激流だったが、

その時はそこから出発するしかないと考えた

お互いに

ふたりなら絶対大丈夫と信じていた


ふたりは漕ぎだした

お互いの手を強く握りあい、

お互いひとつずつの櫂を持って

激流を激流とも思わず

ふたりの旅は始まった

ふたりならどこまでも行けると信じていた


激流を抜けても、急流が続いた

ふたりは負けなかった

負けることなど想像できなかった

幾多の障壁を乗り越え、嵐にも負けなかった

ふたりの自信は更に強くなった

ふたりならどんなことにも負けないと信じていた


ときどき流れが穏やかなところがあった

ふたりは休みもせずにどんどん進んでいった

疲れを知らなかったし、勢いがあったし、

エネルギーは無尽蔵だと思っていた

お互いに

ふたりなら絶対大丈夫と信じていた


しかし

実際は疲れが溜まっていった

気がつかないだけだった


また激流にさしかかった

ふたりは懸命に漕いでいたが

徐々に力がなくなっていった

ふたりに不安がよぎった

諦めはしない

大丈夫なんだと励ましあった


激流はまだ続いた

遂に

櫂を持つ手の力は失われ、同時に、

握っていた手と手が離れた

櫂は見る間に激流にのまれ、

もう決して取り戻せなかった

櫂だと思っていたのは、お互いの手でもあった

小舟は流され転覆した

ふたりの旅は終わった


ふたりは別々の場所に流れついた

あの時、しっかり休んでいたなら

もっと頑丈な船が用意できたら

出発の時期を待ったなら、場所をかえたなら・・・

打てた手がいくつもあった

でも

気づいたのは旅が終わってからだった


ふたりはもう会うことがなかった


16/9/22 Thu. ~ 16/9/23 Fri.

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