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02. 既読スルー常習犯

 

【ところで今日はどうだった?】


帰宅して少し経ってから、そういえば聞くの忘れてたなと思いだし、メッセージを打ちだして送った。

そのまましばらく待ってみようと暇つぶし用のアプリを起動させていると……


【なにが?】


バックグランドでアラートが点滅して、案の定な短い返信を映し出す。

レスポンスに1分かからなかったことをかんがみるに、このままやりとりを続けられる状況なのだろう。

なので今度はもう少し具体的に、会話を楽しむ要素も含めて返答した。


【うちの学校。実際に見てみてどう思った?】

【わりと新しい校舎だったろ? 冷暖房完備だし、良くない?】


七瀬の頭がどのくらい良いのか、中2の時の成績でだいたい見当がついているので、うちの高校も狙えるだろうってことは予測済みだ。

俺は彼女の進路についてあまり具体的なことは知らないが、候補の一つに“俺と同じ高校”というのも入っていたら嬉しいんだけど……実際はどうだろう。もう候補のいくつかくらいは決まってるのかな。


 思い返せば俺自身、中3のこの頃には志望校をほとんど決めていた。区外とはいえ自宅から割と近い所にあるうちの高校のことは以前から見聞きしていて、文化祭を見に行ったこともあった。

推薦で狙えるレベルだということもあり、自分的にはほぼ決定事項だった。七瀬はどうなんだろう?


 一般的に、まずはどのレベルの都立高校に照準を定めるのかを決めるのが先決で、その範囲で候補を絞ってから希望する高校を決める。で、都立の入試前後に併願で私立をいくつか受ける。あるいは最初から志望高が私立の場合は都立を滑り止め代わりにすることもあるが。

普段の倹約家っぷりを思うに、彼女の場合は前者だろう。

まさか今の時代に中卒で就職希望ということはあるまい——そこまで生活が困窮しているとも思えない——七瀬は将来なにになりたいとか、どこに進みたいとか、決まっているのだろうか。


間違っても「俺の嫁」とかって考えは持って無いだろうなと想像して、ちょっぴり淋しくなった。


【まぁまぁ良いんじゃない?】

【正門前の花壇キレイだったし】

【あれ庭師がやってる?】


「…………」


返された答えに、ガクッときたのは言うまでもない。


うん。でもまぁ、今日は校内を見て回ったわけでもないしな。ただ正門前で待っててもらっただけだし……こんなもんだよな。七瀬だし。

むしろ花壇とはいえ興味を持ってもらえたなんて、けっこう望みがあるんじゃないかコレ。


 俺としては高校も同じになったら良いなと思うが、彼氏と同じ高校に行きたいとかそんな理由で志望校を決める七瀬じゃないと思う——むしろ俺が誘ったら逆に嫌厭けんえんされそうな予感がする——ので、うちに来れば?とか高校も同じになったら嬉しい…とかいう類の台詞は口が裂けても言わない予定。

だけど軽〜く自分の通う高校の自慢をするくらいなら構わないだろう。多方面からアピールした結果、七瀬がその気になって決めてくれたら儲け物だ。


【庭師が来てるかどうかは知らない。でも普通、用務員とかがやるんじゃない?】

【あ、もしかしたら園芸部がやってるのかも】


一応、知らないなりに考えて返答をする。部活動説明会の事前資料で渡された一覧表に“園芸部”があったはずだから、関わっている可能性は十分あり得る。学校の正面玄関を飾る花壇だ——プランニングとか専門的な事はともかく——水やりとか草取りとか、日常の手入れくらいはしてるんじゃないか? 知らないけど。


いかん。どうでもいいことについて考えるのに時間を無駄にしてしまった。

そろそろ本題に入りたい。


【ところで七瀬はもう志望校きまった?】

【第一志望は都立なんだろ?】


そういえば七瀬は中学で花壇の水やりを日課にしていた。本人はそうでもないようなことを言っていたが、意外と花を愛でたり世話をしたりするのが好きらしい。花壇のことを気にしていたくらいだし……もしかしたら花屋とかフラワーコーディネーター?とかって職業に興味があるのかも。あるいは菜園とか果樹園の栽培方面……とか?

七瀬の性格的に、手に職をつけるっていう考えはありそうだけど、どうもこれらの職業はピンとこない。俺の知る七瀬は、もっと夢の無いことを言いそうな気がする——なんてことを考え巡らせていたくらいには、彼女の将来の夢とか進路とかを気にしていた俺だったのだが。




翌日になって届いた七瀬からの返信は……


【おはよう。今日はそっちには寄れません。悪しからず】


という、身も蓋もない挨拶と連絡事項だった。




昨日の質問、めっちゃスルーされてるし!!


(俺の心配を返せこのやろう…!)


しかも理由もなく約束を反故にされた。別にいいけどさ。



でも今日は何でダメになったんだ?

七瀬がドタキャンなんて珍しいから、すげー気になるんですけど。


 

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